究極のネイティブ広告「生活広告」は実現するか

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Image Credit: Ryff

※本記事は.HUMANS社が運営するメディア「THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載

先頃発表された新型iPad Pro。

ARを強く押し出した機能満載で、すぐにでも店頭で触ってみたかったのですが、残念ながら現在は閉鎖中。そこで、オンラインストアの「ARで見る」ボタンを押し、自宅で手軽に製品の大まかな雰囲気を味わいました。同じ体験をした人も少なくないのではないでしょうか?

まさにSF映画のような話ですが、.HUMANSが信じるのはこうした近未来が実現され、そこに普及するサービスを作ること。そして最近、Spatial(空間的コンピューティング)時代を前提として見る中、現実解としてどのようなサービスが誕生しているのかを探っており、1つのサービスに出会いました。LA拠点の「Ryff」です。

CMをなくす新業態

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Image Credit: Ryff

Ryffは米国ロサンゼルス・ハリウッドに拠点を持つAI技術を持つスタートアップです。2019年12月、500万ドルの資金調達に成功しています。Ryffが参入する市場は「Product Placement」という、映画やテレビ番組のシーンに商品を配置して広告する業態です。

同社はAIを駆使して映像内の空間にまるで存在するかのような3Dオブジェクトを設置し、自然に見える形で商品を広告するサービスを展開しています。バーチャルオブジェクトであることから、複数の商材パターンを展開することが、いつでも可能となります。たとえば予定通りの放送時には商材A、再放送時には商材B、DVD用には商材Cのようにいくつかの商材を配置できます。

Statistaの市場データによると、米国市場規模は2019年で約100億ドル規模。2012年の47.5億ドル規模からほぼ倍増していることから、YoYは10%ほどと言ったところでしょう。別データによると、市場内訳として70%がTVコンテンツが占めており、そのほかデジタルコンテンツはたった3%。YouTubeやNetflixの市場のりしろを考えれば、まだまだ伸びる可能性を秘めます。

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Image Credit: Ryff

さて、Ryffが挑むのは「映像/動画内に配置された商材は一度撮影してしまうと変更できない」という業界の常識です。この常識を逆手に取って「撮影後であっても何度でも変更可能、時代や投稿場所を超えて様々な形で配信できる」形式へと変えました。

たとえばNetflixで放送される番組内に配置される商材を、個々の視聴者や居住地域、日付などの様々な変数に基づいて調整することができます。コストはかかりますが、映画も上映地域によって商材を変えることができますし、TV番組も放映地域に最適化させた展開ができるはずでしょう。

広告出稿者がしばしば求める「パーソナライズ」のニーズに応えたのがRyffなのです。

技術面に軽く触れておくと、Ryffは3Dオブジェクトを配置するために映像内に商材を認識させるためのマーカー(QRコードのように読み取れるもの)を置き、空間の役割をAIパターン認識で特定させています。仕組みはARKitやARCoreで作成するARアプリと似ていますが、空間に合わせた質感や角度、光の反射などを加えるテクスチャマッピングを、かなりの高精度で行なっている点が差別化になっているようです。

創業者兼CEOのRoy Taylor氏はNvidia出身、CTOのSusan Hewitt氏はARM出身であることから、レンダリングを最小電力・最効率で行うためのAIチップの利用方法を知っていると考えられます。IP(知的財産)を多く持っているRyffの肩書きはダテではありませんね。

Spatial時代のパーソナライズ空間

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ここから話をSpatial時代へと飛躍させます。Spatial時代ではARグラスが普及した世界を前提とします。

現在のRyffの技術では、大容量メモリーを搭載したパソコンを使ったレンダリングを必要としますが、5〜10年のスパンで見れば小型化したARグラスでも同様のタスクをこなせるようになるはず、と考えます。言い換えれば、現在Ryffが展開する本物そっくりの3Dオブジェクトをほぼリアルタイムに目の前に登場させる技術が確立するかもしれません。

たとえば街を歩いていたり、店舗に立ち寄った際、各ユーザーによって置かれている商品が違ったように見える世界が想像されます。家に帰れば、生活必需品以外のインテリアや高級な家具は、全て自分好みの3Dオブジェクトとして配置されています。

開発が噂されているFacebookやAppleのARグラスが爆発的に普及したり、実際に開発が進められているARコンタクトレンズのように、四六時中装着していられる端末が誕生すれば、デジタル世界と「常時接続」する生活が待っています。そこではRyffの技術が映像コンテンツ市場から私たちの日常生活へと進出するのではないかと考えています。

「生活広告」 : 究極のネイティブ広告

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Photo by Skitterphoto on Pexels.com

.HUMANSの考えるRyffをベースとしたSpatial時代では、ほぼリアルタイムに自分が欲しいと思っていた商品に囲まれる世界が展開されます。これを仮に「生活広告」と呼んでいます。

生活広告は、ロケーションベースで本物そっくりの3Dオブジェクト商材を配置するSpatial時代の新広告業態です。肝となるのは「生活充実度」と「広告収益」の両立です。

家具やインテリアのように置いておくだけで生活満足度を上げる3Dオブジェクトがユーザーの元へ届けられます。同時に、グラス端末上で計測されるImpressionに応じた広告収益を広告出稿者から徴収するモデルです。

つまり、ユーザーは3Dオブジェクトのある日常生活を送るだけで充実度を高められ、かつ企業も様々なアプローチから高い転換率を保ちつつ広告でき、プラットフォームは広告収益を上げられるWin-Win-Winな、究極のネイティブ広告業態が想像できるわけです。

最初にiPadの事例を出したように、私たちはすでに自室で3Dオブジェクトの商品を呼び出し、眺めることに抵抗がなくなり始めています。こうした慣れの延長線上でRyffの技術がぶつかれば、常時広告商材を楽しむ生活が待っていると思います。これが生活広告の概念です。

私たちの私生活と広告領域が自然な形で融合することで、何がフェイクなのかわからない倫理的な問題も議論されるかもしれません。ただ、都市開発に十分活かせるでしょうし、Pockemon Goのような周回型コンテンツを得意とする企業にとっては新たなAR広告収益源となるはずです。

本稿は次世代コンピューティング時代のコミュニケーションデザイン・カンパニー「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏が手掛ける「 THE .HUMANS MAGAZINE」からの要約転載。Twitterアカウントは@takashifuke。同氏はBRIDGEにて長年コラムニストとして活動し、2020年に.HUMANS社を創業した

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