ゲームから軍用訓練までOK、回転可能なVRモーションプラットフォーム「NOVA」がスゴすぎる

SHARE:

ピックアップ:Are Human-Sized Hamster Balls The Future Of VR?

ニュースサマリ:ニュージーランドを拠点とする「Eight360」が、NOVAと呼ばれる巨大なVRモーションプラットフォームを開発した。NOVAは3点のオムニホイールによって駆動し、単純なコントローラーハプティックスを超える物理的な没入感を提供する。完全なテクニカルサポート、アップグレード、メンテナンスが含まれて年間15万ドルでリースする予定だ。

※こちらの記事の内容はPodcastで聞くことも可能です。
※Podcastの最後に『教えてリスナーさん!』のコーナーを作りました!
私からの質問に、こうなんじゃない??教えてやるよ!という方は、是非「#BRIDGEさんに教えてあげる」でTwitterに呟いていただけると嬉しいです!まとめて何らかの形で発信させていただきます!よろしくお願いします!

話題のポイント:VRにとって「没入感」は唯一無二の強みです。むしろ強みにしなければならない、というのが正確かもしれません。ユースケースが分かりやすいため、VRの映像・音声に関係するニュースはよく話題になります。もちろん「没入感」と呼ぶにはこれだけでは不十分です。

想像してみてほしいのですが、VRで勇者としてゲームしているときに、伝説の剣が軽かったり、降った時に重みを感じなかったら一瞬で覚めてしまうと思いませんか?脳が正しかろうと認識させるためには五感+前庭感覚以外にも、皮膚感覚、温度感覚、痛覚といった体性感覚、内臓感覚も欠かせない要素となってきます。

今回取り上げたEight360の作るNOVAは物理的没入感、特に乗物から得られる身体への力を再現するのに特化しているモーションプラットフォームです。

RPReplay_Final1589370694
Video Credit:Eight360

NOVAの大きさは約2m、重量は500kg。球体は3つのオムニホイールの上に置かれ、滑らかにボールを1つの方向に動かすことができます。使用されているモータによるロールは1秒あたり180度が可能で、戦闘機F-4ファントムよりも早い挙動を実現しています。

さらに、球体の傾斜角をシミュレートするだけではなく、加速、減速、力の回転、衝突をシミュレートして反映させていることで再現性が向上し、toB領域へのビジネス展開を可能にした点が特筆すべき点として挙げられます。

NOVAの想定されるユースケースは3つです。

まずはエンターテイメント。ゲームとの相性が良いのは言うまでもありません。大型可動筐体はSEGAが先行して1980年代からゲームセンターに設置しており『ハングオン』を懐かしく思う人もいるでしょう。現在はポッド型で没入感が強いゲーム体験が味わえる筐体まで登場していることを考慮すると、NOVAが生み出す体験はゲーム好きを虜にするはず。

特にEight360の創業者兼CEOのTerry Miller氏は発展途上といえるe-Racingに興味を示しており、十分な参入余地があると語っています。たしかに、トリプルディスプレイにステアリング操作することが多いe-Racingでは、ドライバーへのリアルな環境を提供することに価値があると言えます。

e-racing
Image Credit:iRacing

次にアウトリーチツールです。同じ経験をしたからこそプロの凄さがわかり応援できるということはスポーツではよくあることです。簡単に体験できる、ということは市場を盛り上げるのには欠かせません。これまで体験が難しかったレーシングカーや競馬でファンを作るという大きな役割を担っていくことができます。

最後にtoB向け訓練です。ここがEight360が狙うインパクトが大きい領域で、航空学校から防衛関係までカバーすることを想定しています。

以下の国土交通省が出しているパイロット養成に関する資料によると、一人当たりのパイロット訓練にかかる費用は4,000万~5,000万円。航空会社の場合、自社で全額を負担する必要があり、年間およそ6億円もの費用となっています。また、航空学校の費用を国が大きく負担していることもあり、国はパイロット養成に年間20億円を超える経費を負担している状況です。

kunnrenn
Image Credit:国土交通省

現在、訓練用に数億円のフルフライトシミュレータを導入してる航空会社がありますが、訓練としての役割が限定的です。それに比べるとVR×NOVAでカバーできる範囲は、一機で旅客機から戦闘機、戦車にまでおよび広範囲を補うことが可能です。

Eight360はすでにニュージーランド国防軍を顧客としており、年間15万ドルで利用できるNOVAが正式に訓練に導入されることがあれば大きなインパクトとなることは間違いありません。細かい点ではありますが、モデルごとの運動特性に細かく対応することは大変めんどくさいポイントです。今後、高再現度多用途を戦略として事業を進める場合、モデルの運動特性に人的コストをかけずに対応できればハードウェア販売のスケール拡大を推し進められると考えられます。

公表されていることではありませんが、NOVAはすでにiRacing、Project Cars、X-Planeなどの既製のゲームで動作することを発表しており、3Dモデルから運動特性をある程度自動で算出して適応する技術を持っている可能性はあります。

見た目にも特徴あるNOVAがエンターテイメントしても軍用としても認められた時、VRの可能性がまた一つ形になります。「没入感」という強みが、あらゆる産業の取る必要がなくなったリスクをたくさん生み出していく過程は今しか味わえない感動なのかもしれません。

※こちらは記事のまとめです。Podcastを聞きながら見ていただけると嬉しいです。1

BRIDGE Members

BRIDGEでは会員制度の「Members」を運営しています。登録いただくと会員限定の記事が毎月3本まで読めるほか、Discordの招待リンクをお送りしています。登録は無料で、有料会員の方は会員限定記事が全て読めるようになります(初回登録時1週間無料)。
  • 会員限定記事・毎月3本
  • コミュニティDiscord招待
無料メンバー登録