マイナンバーカードの未来?米国「SSN」の課題解決を狙うStilt、シード資金獲得

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ピックアップ:Stilt, which provides financial services for immigrants, raises $7.5 million seed round

ニュースサマリー:FinTechスタートアップ「Stilt」は9日、シードラウンドにて750万ドルの資金調達を実施したと発表した。投資家にはSteamlined Ventures、Bragiel Brothers、並びに個人投資家としてFundbox CEOのEyal Shinar氏やY CombinatorよりDalton Caldwell氏、Kevin Hale氏などが同ラウンドに参加している。

同社は米国におけるSSN(Social Security Number)を保有しない移民、留学生やワーキングホリデーなどのVISA保有者向けに低金利ファイナンスサービスを提供している。2015年に創業した同社は、翌年にY Combinatorのインキュベーションプログラムを卒業している。

また、海外からでも開設可能なデビットカード付きデジタルバンクサービスも開始している。

話題のポイント:「SSNがないとサービスを受けられない」、こうした問題をテクノロジーを介して解決しようとするスタートアップは近年増えつつある印象です。日本におけるSSNはマイナンバーカードですが、その普及率の低さもあってか、個人認証において重要視されるケースは少ない状況です。

しかし米国では、SSNこそ全ての個人に対する信頼度が詰まっているものとして、あらゆるサービスのバックグラウンドチェック的役割として機能しています。

例えばSSNがない限り、クレジットカードの発行や高額な商品のローン購入といったことは全くできません。また、賃貸の契約ですらSSNを持っていることが前提となるため、たとえ外国において安定した収入があろうとも規約上受け付けてくれないケースも数多くあります。

そのため、外国人(移民・留学生)の信頼度を図るうえでSSNのみが唯一無二と契約規約上定められているケースでは、どれだけ銀行の残高証明書を見せようが信頼度はゼロと等しいとされます。

StiltはこうしたSSNを保有していなくても、信頼度の高い外国人は存在することを前提とした事業デザインとなっています。そもそも、わざわざ米国にやってきてくる留学生やワーキングホリデーといった層はそもそもVISA取得時点でそれなりの残高を保有していなければなりません。

つまり、各国である程度の信用がある方は、SSNのクレジットがなくても政府が発行するVISAという「信頼証明書」は少なくとも持ち合わせているわけです。それらと、例えば留学生であれば学校の成績などと組み合わせ、独自のクレジットスコアを算出する仕組みとなっています。

全く同じ仕組みでSSNを持ち合わせない層へクレジットカードの発行を実現させているのが「Deserve」です。必要な情報は学校名や基本的な情報のみで、逆になぜSSNが一般的な決済企業で絶対必要とされているのか不思議になるほどスムーズに応募することができます。

アメリカで生まれた場合、自動的にSSNが振り分けられます。そのため、アメリカでは「SSNを持っていない」という存在の実態すら気が付くことのできない環境にあるのが実情でしょう。

Stiltの創業者は、インド出身でコロンビア大学へ進学を果たした経歴を持っています。進学当初、多くの留学生と同じようにSSNを持っていなかったため銀行口座ですら開設するのに相当な時間を要し、「SSNがない」ということだけで何故信頼がゼロになるのかことに憤りを感じたと創業の経緯が述べられています

DeserveやStiltの登場で、アメリカ在住者にとって10年前と比較すればSSNを持ち合わせていないことによる不便を感じるケースは減少しています。これからも、Stilt創業者のように実際にこの「不便」を感じたアメリカ留学生やワーキングホリデーの方が課題解決のために創業に至るケースは増えるのかもしれません。

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