東大IPC、カーブアウトやベンチャー共同設立を推進する「AOIファンド」を組成——初号案件として、創薬や中国向け育児動画事業に出資

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28日に開催されたオンライン記者会見から。

東京大学協創プラットフォーム開発(東大 IPC)は28日、オープンイノベーションに特化したファンド「AOI ファンド(AOI は、Accelerating Open Innovation の略)」を組成したと発表した。本日発表時点で規模は27.5億円。最終的な規模は不明だが、今後政府組織や民間企業から出資を募り、最終的には数十億円〜数百億円程度を目指すとみられる。チケットサイズは数億円規模で、東大のリソースを活用可能な、ベンチャー共同設立やカーブアウト案件を支援する。

AOI ファンドの民間 LP は、現時点で三菱 UFJ 銀行や三井住友銀行。運営面では、ドリームインキュベータ(東証:4310)やアスタミューゼが協力する。

Image credit: UTokyo IPC

東大 IPCは2016年の設立後、他の VC とのコインベスト(協調出資)や FOF(Fund of Funds)を活動の中心とする「協創ファンド」を組成。スマートウェアのゼノマ、宇宙ゴミ除去のアストロスケール、ロボアドバイザーのウェルスナビをはじめ、医療・宇宙・ものづくりなど広範なスタートアップに投資を行ってきた。昨年には、プレシードスタートアップの支援に主眼をおいたプログラム「1st Round」を開始している(これまでに22社を支援)。

スタートアップ育成にはさまざまな方法があるが、スタートアップとして箱(法人格、組織、market-ready など)が完成しているところに出資を受ける資金調達に比べると、ベンチャー共同設立(大学と企業の研究成果事業化)、カーブアウト(既存企業からの法人独立)、プレシード育成などは、一般的な VC が支援するのは難しい側面がある。東大 IPC では、東大という中立的な立場をフル活用し、さまざまな企業や組織からリソースの拠出や協力を募り、オープンイノベーションを加速する。

Image credit: UTokyo IPC

1st Round、AOI ファンド、協創ファンドと3つが揃ったことで、プレシードからポストシードまでの成長ステージに応じた支援体制が整った形だ。

AOI ファンドからはすでに2社に投資が実行されている。1号案件としては、武田薬品工業(東証:4502)からカーブアウトした治療薬創出スタートアップのファイメクス(総額5.5億円調達。共同出資は、京都大学イノベーションキャピタル、ANRI)、2号案件としてはユニ・チャーム(東証:8113)と BCG Digital Ventures からカーブアウトした中国向け育児動画メディアを展開する Onedot/万粒(総額10.5億円調達。共同出資は日本生命、住友商事、みずほキャピタルなど7社)がある。

東大 IPC では今後、年あたり数件のカーブアウト案件への投資を見込んでいる。

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