フィンランドの連続起業家が仕掛けるのは、WebサイトUX分析・改善提案ボット——本田圭佑氏や元コネヒト島田達朗氏らから資金調達、本格始動

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日本語化された Attractive.ai(準備中)
Image credit: Attractive.ai

フィンランドの首都ヘルシンキと言えば、Startup Genome が毎年発表する「Global Startup Ecosystem Report」で「世界で最も起業しやすい都市」として常々上位にランク入りを果たし、SLUSH に代表されるスタートアップイベントが開催されるなど、起業と結びつきの強い街である。日本でも、フィンランドのインキュベータ/アクセラレータ「Startup Sauna」が過去に何度かピッチイベントを東京で開催したことがある。

そんなフィンランドで、Kristoffer Lawson 氏は有名な連続起業家だ。2008年には仲間同士でプールした資金の管理サービス「Scred」をローンチ。N26 や Revolut が事業を始める数年以上前にチャレンジャーバンク「Holvi」を創業し、2016年にスペインの金融大手 BBVA(Banco Bilbao Vizcaya Argentaria)に売却・イグジットした。それ以外にも、友達と繋がれる小型コンピュータ「Solu」で注目を集めている

Lawson 氏は日本やフィンランドの投資家から資金を調達、新サービスを本格稼働する。彼が次に仕掛けるのは、Web サイトの UI/UX だ。Attractive.ai は URL を入力するだけで、人工知能がヒューリスティックモデルを活用、コンピュータビジョン(画像解析)や言語解析などにより、Web サイトの UI/UX を評価してくれるプラットフォームだ。4日、同社はシードラウンドで100万米ドルを資金調達したことを明らかにした。

共同創業者兼 CEO Kristoffer Lawson 氏

Lawson 氏は合気道を習うなど日本文化にも造詣が深く、日本の投資家や起業家にも友人が多い。今回のラウンドはフィンランドのアーリーステージ VC である Superhero Capital がリードインベスターを務め、プロサッカー選手で複数のファンドを通じて日本内外のスタートアップに出資する本田圭佑氏、コネヒト(2016年に Supership、2019年に Supership の親会社 KDDI が買収)の共同創業者で元 CTO の島田達朗氏、デンマークのギャンプル業界情報サイト BetXpert(2017年に Raketech が買収)の創業者 Tue Lumbye 氏、フィンランド・トゥルク大学教授の Jaakko Salminen 氏 が参加した。

今回資金調達とあわせて、Attractive.ai はサービスをリニューアルし、まもなく英語以外の初の外国語として日本語のサポートを開始する予定。Lawson 氏(CEO)に加え、Attractive.ai の共同創業者には、自らも複数の起業支援活動に携わる Marc Salas Martínez 氏(COO)、毎冬極寒のバルト海の中でピッチする「Polar Bear Pitching(北極熊ピッチ)」で北極熊 MC を務める Jason Brower 氏(CTO)らが名を連ねる。

フリーミアムで提供される Web サイトの UI/UX 改善提案サービス

Web サイトの訪問数ランキングを見られる Amazon 傘下の Alexa Traffic Rank やイスラエルの SimilarWeb よろしく、Attractive.ai は URL を入力するだけで、当該の Web サイトについて UI/UX 観点からの評価スコアを得られるフリーミアムサービス。最低限の改善すべき点も提示され、希望すれば、さらに詳細な改善点が記された PDF のレポートも送られてくる。Web サイトのレスポンススピード、埋め込まれたコードの良し悪し、SEO 評価など見栄えや操作性など全てを網羅できるのが特徴だ。

ユーザが Web サイトを登録しておくと、Poe と名付けられた AI は定期的に巡回して UI/UX が劣化したときにその改善点を適宜指摘してくれる。モニタリング頻度や解析の度合い、モバイルサイトのレイアウトチェックやウォークスルーでの改善点コンサルティングなど、サポート内容に応じてサービスは有料で提供される

テスラの Web サイトを Attractive.ai が評価したレポート。
モバイル参照時、「ORDER NOW」のボタンのクリック可能領域が小さ過ぎるとコメント。
このレポートも日本語で提供されるようになる予定だ。

フィンテックやハードウェアスタートアップを手掛けた Lawson 氏が今回 Web サイトの UI/UX をテーマに選んだことについて、BRIDGE のインタビューに次のように語ってくれた。

私の家族のバックグラウンドに、アーティストが多いことも影響しているかもしれない。アート、デザイン、テクノロジーを(一つずつではなく)総合的に改善できるものを作りたかった。(Holvi など今までのプロダクトと同じく)このサービスも、自分が使いたいものを世界に届けたいと思い作った。

日本のデザインは歴史的に素晴らしいものが多い。でも、オンラインのデザインはそうでもない。ノルディックデザインの良い部分を Web サイトに適用し、日本のおもてなし文化を Web サイトに届けられたらよいと思っている。日本市場への進出にあたっては、さまざまなパートナーと協業する。

Attractive.AI で、UI/UX デザイナーの仕事はどう変わるのか?

Web サイトを運営していると「おたくの Web サイトを評価しました。スコアが××点だったので改善しませんか?」というメールが送られてくることが時々ある。送り主は概ね、どこかの Web インテグレーション会社だ。「あなたの家の前を通ったら、たまたま外壁が汚れていたので、これを機にリフォームしませんか?」と工務店に飛び込み営業されている感覚に近い。いずれも少し荒手な営業手法だと思うが、令和の時代でもこういうプッシュは一部で機能するようだが、それと対照的に Attractive.ai はオプトインなアプローチで受け入れやすい。

さて、オックスフォード大学教授の Michael Osborne 氏らが2013年に発表した論文「あと10年で消える職業・なくなる仕事(The Future of Employment: How Susceptible are Jobs to Computerisation?)」には、消える職業の中に UI/UX デザイナーは含まれていない。Attractive.AI が提供する機能も評価と改善点の指摘までで、その改善点の実装は人がやることになる。Attarctive.AI の登場で UI/UX デザイナーの仕事はどう変わるのだろう?

もちろん、影響を受ける UI/UX デザイナーや Web インテグレータもいるだろう。でも、彼らも Attractive.AI のユーザになるかもしれない。我々のサービスを活用することで、顧客により良い提案を効率よく届けられれば、顧客はさらに満足してくれる。

また Attractive.AI の主要なターゲットは Web サイトを持つスタートアップや中小企業だ。従来なら、良質な UI/UX を維持するためには、安くない給料を払って社内に UI/UX デザイナーを抱える必要があった。 Attractive.AI を使えば、そんなにコストをかけられない企業でも、良質の UI/UX を顧客に届けられるようになる。(Lawson 氏)

以前の Holvi の時もそうであったように、Lawson 氏が手がけるビジネスは、その業界を変えるべく誰よりも先んじて世に出されることが多い。これがビジネス的に吉とで出るか凶と出るかは神のみぞ知るわけだが、働き方改革が叫ばれる日本市場においても健闘を祈りたいところだ。

テック大手やスタートアップ各社からは、スケッチやハンドライティングした図から Web サイト用にコーディングしてくれる AI ツールも複数提供されている。Attractive.AI やこれらのツールが、UI/UX のデザイナーの仕事の進め方をどのように変えていくのか興味深い。

<参考文献>

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