半導体内製を迫られる中国、AIチップメーカーEswin(奕斯偉)が約300億円を調達——サムスン出身の副社長は、韓国の業界懸念受け4ヶ月で退任

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Image credit: Eswin(奕斯偉)

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ニュースサマリー:AI チップメーカー Eswin(奕斯偉)は6月8日、シリーズ B ラウンドで2億8,300万米ドル(約305億円)を調達したことを発表している。一方、今年2月、同社経営陣に Samsung China の元 CEO が参画したが、韓国産業界から中国への技術流出に対する懸念が鳴り止まず、6月中旬、就任から4ヶ月を待たずに退任を余儀なくされた。

重要視すべき理由:中国ではAI 開発におけるチップは欧米等に依存していたが、近年、国内の半導体メーカーおよび AI チップ市場が急成長している。今回の資金調達で中国国内での半導体成長に拍車をかけるとみられる。

詳細情報:Eswin は2016年3月に北京で設立され、テレビ、スマートフォン、スマートウォッチ、タブレット等、様々な製品の主要部品である駆動有機 EL チップセットを生産し、急成長している中国企業。

  • この資金調達は Lenovo(連想集団)の投資部門であるLegend Capital(君連資本)とIDG Capitalがリードし、Riverhead Capital Investment Management(陽光融匯資本)、Lighthouse Capital(光源資本)、海寧市、浙江省などが参加しており、Eswin ではさらに広範囲の半導体デバイス開発を行っていくとしている。
  • 今年2月、Samsung China の元社長 Chang Won-ki(張元基)氏が副総経理(副社長)に起用されたことも業界で話題となった。Chang 氏は1981年に Samsung に入社。その後はディスプレイ関連分野を担当し、2002年には半導体総括 LCD 事業部の天安工場長、2009年には LCD 事業部長、2011年には中国本社社長を歴任し、2017年に退社していた。
  • Chang 氏は Eswin に参画する際、「30年近く研究開発の現場から離れていて、もはや Samsung のコア技術に関わるエキスパートではない」と述べていた。それにもかかわらず、彼の Eswin への参画は、韓国が持つコア技術の中国への技術流出につながるとして、韓国産業界で論争を巻き起こし、今回、退任を余儀なくされた。
  • Chang 氏は Eswin 会長 Wang Dongsheng(王東昇)氏との友好関係もあって参画したと答えていた。Wang 氏は2019年に中国のディスプレイ大手 BOE(京東方)の会長職から離れ、2020年2月から会長として Eswin をリードしている。

背景:中国はアメリカとの経済対立で Huawei(華為)や ZTE(中興)等の米国ブラックリスト化により、AI チップの内製化を迫られている。中国 IT 大手 Alibaba Group(阿里巴巴集団)傘下の半導体メーカー Pingtouge Semiconductor(平頭哥半導体、英名:T-HEAD)も2019年9月に、同社初の AI チップ「HanGuang 800(含光800)」を発表している。

via Eswin

執筆:國本知里/編集:平野武士・岩切絹代

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