2020年・エコシステムはどう変わる(2)激変するオフィスと働き方

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私たちはどうやら簡単には元のオフィスには戻れないらしい。

We have often been in large open spaces at technology companies filled with people using laptops at standing desks while wearing headphones to tune out background noise… is there a better win-win arrangement?(テクノロジー企業の多くはオープンスペースで、スタンディングデスクを使って、ノートパソコンにずっと目を向け、周りの雑音を取り除くためヘッドフォンを取り付け黙々と作業する人で埋め尽くされるだけです…なぜそうした状況が生まれてしまったのでしょう?)。

元Kleiner Perkinsのパートナーであり、毎年発行される「Internet Trend」でお馴染みの著名投資家、メアリー・ミーカー女史が発行した「Coronavirus Trends Report」にある一節だ。

感染症拡大による最も大きな変化は「人との接触を極力減らす」生活スタイルにある。特に日本の首都圏で働いているテック系スタートアップであれば、ここの満員電車だったり、足の踏み場のないオフィス環境を経験したことがあるかもしれない。緊急事態宣言が解除された今もまだ、無自覚のまま他人を感染させてしまうという恐怖もある。

元に戻れない、というのはあながち大袈裟でもないのだ。

この状況を比較的リモートワークに対応しやすい国内テック大手はどう見ているのか。感染症拡大を前に、いち早く動いたのがGMOグループだ。1月末で早々に全社リモートワークへの切り替えを実行に移し、週の1〜3日を目安に在宅勤務とする指針を公表している。

またサイバーエージェントのように、会って仕事をすることのカルチャーを重要視している企業もあるが、それでも社内会議についてはZoomを使ったミーティングを推奨するなど、接触と同時に時間の無駄を排除する動きを進めている。生産に装置を必要とする業務や、セキュリティの関係で場所に縛られるケースなど、全てが「Work From Home」に移行できるわけではないが、それでもこれを機に効率化を見直す動きはさらに進むだろう。

これだけ大きな変化だ。ビジネスチャンスがないわけがない。

変わる働き方を投資サイドはどう見る

では、投資サイドはこの状況をどう見ているのだろうか。

まだしばらくソーシャルディスタンスが必要とされることで加速しそうなのがxRと5G技術だ。KDDIの中馬和彦氏は今回の件で、仮想と現実の境界線を「融合する」ソリューションに注目するとコメントしてくれている。

「コロナ以前の注力領域は『バーチャル世界のリアル化を加速するもの』(xR等)と『リアル社会のインターネット化に寄与するもの』(AI&IoT等)でしたが、コロナ後はこれに加えて『バーチャルとリアルの融合(パラレルワールド化)を実現するソリューション』に注目していきたい」(KDDI経営戦略本部 ビジネスインキュベーション推進部長/中馬和彦氏)。

また、ソニーフィナンシャルベンチャーズで投資を担当する中村順司氏もまた、ソーシャルディスタンシングの継続で変化が訪れるとした一人だ。リモートワークが加速する中で徐々に視点はできることから品質へと移り関連する技術に注目が集まると指摘した。

「多くの分野で自宅でも仕事はできるということが確認される中、リモートコミュニケーションの品質が問われ始めていて、ここに高い品質と付加価値を実感できるソリューションの登場には注目しています。また『非接触』に対するニーズは多様化し、コスト効率の観点とともに評価の対象軸になると考えています。具体的にはセンシング技術、画像認識技術、セキュリティ、オンライン営業・業務支援ツール、エッジコンピューティング、デジタルヘルスなどがそれです」(ソニーフィナンシャルベンチャーズ取締役 投資業務部長/中村順司氏)。

ここでひとつ実例を挙げよう。米Microsoft Researchが発表しているソリューションにVROOMというものがある。職場に等身大のロボットを配置し、リモート環境からヘッドマウントディスプレイを付けたユーザーが「アバター」として遠隔のオフィスに参加する、という代物だ(詳しくはこのビデオを見て欲しい)。

まだ研究段階のものでとても実用には程遠い体験のように感じられるが、これこそ現時点で想像できるリアルとバーチャルの融合パターンと言えるだろう。使われている技術もソフトウェアのみならず、ハード、センシング、通信と幅広い。

仮想空間についてはこれまでもスタートアップによる開発が進んできた。国内で言えば、エンターテインメント文脈でのVirtural YouTuber(VTuber)開発企業の資金調達が相次いでいたし、VR空間についても、例えばClusterのようなプレーヤーがイベント空間の提供で先行しつつある。

確かにZoomやMicrosoft Teamsのような「オンライン・ミーティング」は便利で、現時点でのベストソリューションかもしれないが、「実際に会ったような体験」とまでは言いづらい。ソーシャルディスタンシングの制約が解除されるのがもう少し先であることを考えると、時間と空間の制約も飛び越える、xR空間での体験、特に中馬氏が指摘する「リアルとバーチャルが融合した」ソリューションはこれからも出てくるはずだ。

どうなる「地方での起業」

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THE SEEDは京都にインキュベーション施設をオープンさせている

ここ数年、スタートアップの現場で語られてきたテーマのひとつに「地方起業」というものがある。東京以外にも関西や福岡などが活動を活発化させており、それぞれ投資ファンドや独立系ベンチャーキャピタル、学生起業家といったローカルプレーヤーが根付き始めているのが今だ。

その代表的な一社である福岡拠点のF Ventures、両角将太氏は今回の件を地方起業拡大の契機と考えている。

「東京のビジネス上のメリットである人の密集が、今回ばかりは逆効果となってしまいました。コロナは容易に根絶できるわけではなく、共存していかなければならなくなる可能性は高いと思います。withコロナ時代では、地方で起業する人たちにとってチャンスが拡がるのではないでしょうか。

地方であれば家賃も安価に抑えられる分、コストを採用に回すことができます。また、オンラインで完結できるようになり、地方ではこれまでできなかった人材獲得ができるようになるのではと考えています。また、そのほかリモートで完結できる業務も増えると予想できるため、地方でのチャンスがより広がってくると思っています」(F Ventures代表パートナーの両角将太氏 )。

彼が指摘するように、地方の分かりやすいメリットは首都圏に比較して圧倒的なコストの安さにある。そもそもテック系スタートアップの多くは「持たざる経営」で競争力を高めてきた。首都圏に集まる理由は主要な投資家や事業会社、そして何より優秀な開発者たちが多く集結していたからに他ならない。しかし、今回の件で距離という制約がゼロにはならないにしても、大きく緩和されれば可能性が出てくる。

例えば海外では国境を超えたチームワークという概念がある。

37Signals(現在のBasecamp)は2010年台半ばにオフィスを持たない、新しい働き方について提唱をしていた。ここ最近のスタートアップでもAndreessen Horowitzが出資した「Deel」のように国境を超えたチームのバックオフィスを効率化する、そんなスタートアップまで出現してきている。

オフィスはオンラインにあり、働く人たちは同じ国ですらないというパターンだ。日本でも今回の件を契機に、本社機能は福岡、働く人たちは東京、アジア、欧米と分散するようなケースが出てきてもおかしくない。

次回は大きな注目が集まる企業のデジタルシフト、デジタル化する経済「DX」大航海時代についてケーススタディを掘り起こしてみたいと思う。

参考記事:2020年・エコシステムはどう変わる(1)スタートアップの投資判断