ケップル、スタートアップの株主総会開催を効率化する「株主総会クラウド」をβローンチ——招集通知、委任状回収のオンライン完結が可能に

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<3日16時更新> 「召集」を「招集」に訂正。

ケップルは1日、スタートアップをはじめとする非上場企業の株主総会開催において、招集通知、委任状回収、開催履歴をオンライン完結できる SaaS「株主総会クラウド」をβローンチした。これまで郵送方式や紙ベースで行われてきた株主総会まわりのバックオフィス業務の効率運用を支援する。

スタートアップを含む非上場企業の株主総会では、株主の多くの出席を伴った総会が開かれることは稀で、実際には創業者を中心とする持分を多く持つ株主に、創業期を支援した初期投資家が決議を委任して運営されていることが多い。2002年の商法改正により事前の個別承諾による電子提供制度が導入されているが、実際には「電磁的方法による招集通知の発出」は数%程度にとどまっている

株主総会がオンライン完結できない背景には、株主総会そのものは Zoom などでオンラインすることができても、招集通知の印刷、製本、発送をはじめとする株主総会前後の準備や管理がオンライン化されていない実情があると考えたケップルは、株主総会クラウドを開発するに至った。スタートアップを含む非上場企業の間接コストの膨張、業務遅延、煩雑な履歴管理の問題の解決を目指す。

神先孝裕氏
Image credit: Sekiko Suzuki

ケップルは、公認会計士で税理士の神先孝裕氏が2015年に創業。神先氏がスタートアップの会計や税務アドバイス、資金調達支援を行ってきた知見を元に、これまでに勉強会&コミュニティの「KEPPLE ACADEMY」、非上場企業の株式管理ツール「FUNDBOARD」を提供している。FUNDBOARD は独立系 VC や CVC を多く顧客に抱えるが、彼らからの悩みの声が今回の新 SaaS 開発の追い風となった。

FUNDBOARD のユーザの中には、数百社以上投資先のある VC もいて、彼らの手元には毎月のように、数十社以上のスタートアップから招集通知が送られてくる。

しかし、非上場企業では、株主から委任状を回収して終わりというところが多い。会社法を遵守するためにこの手続を踏んでいるわけだが、小規模な企業にとっては、その事務作業に要する労力が大きかった。(神先氏)

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株主総会クラウドはサブスクモデルでの提供を想定している。企業の事業年度にもよるが、株主総会が開かれるのはせいぜい年に1〜2回程度のため、株主総会が開かれる時期以外の利用頻度は低くなる。ケップルでは恒常的にユーザエンゲージメントを高めるため、過去の株主総会の開催履歴管理機能など IR 的要素も株主総会クラウドに実装しており、今後、事前検討事項の支援機能など追加機能の実装も検討する。

ケップルはこれまでに、2018年4月に個人投資家4人から3,000万円、2018年12月に日本経済新聞社などから2.7億円、2019年3月には傘下に野村インベスター・リレーションズなどを擁する野村総合研究所(東証:4307)から8,000万円を調達している。

株主総会効率化の分野では、金融大手 Citi からスピンオフした、ロンドン拠点の投資家向け議決権代理行使プラットフォーム「Proxymity」が先月、金融各社から2,050万米ドルを調達している。日本では、バックオフィス業務を効率化する Bizer(パーソルプロセス&テクノロジーが昨年買収)が株主関連業務をオンライン上で実施できる「BizerIR」を2017年に発表していた。

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