3600社利用、オフィスとリモートを融合させるACALLが5億円調達ーーその手法を聞いた

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Image Credit : ACALL

ュースサマリ:ワークスペース管理サービスを提供するACALLは6月29日、第三者割当増資の実施を公表する。ラウンドはシリーズAで、引き受けたのはジャフコとDBJキャピタル。増資した資金は5億円で、これまでにジェネシア・ベンチャーズとみずほキャピタルが出資した2018年4月のラウンドでの調達額(1億円)と合わせ、累計で7億円を調達している。

同社の創業は2010年。オフィスへの来客対応を管理する「ACALL」を2016年に公開し、2018年3末時点で630社が導入。その後に改良を続け、会議室や入退室のチェックインと連動した総合的なワークスペース・マネジメントサービスとして拡大し、現在、エンタープライズや不動産事業者など3600社が導入している。

また、同社では新たにリモートワークでのチェックインにも対応した「ACALL WORK(β版)」の提供開始も伝えている。在宅で働く人が業務開始と終了時にチェックイン・チェックアウトできるアプリで、業務に関する情報を集めた情報基盤「WorkstyleOS」と合わせることで在宅勤務を含めた従業員の業務管理ができる。また、感染症拡大の状況をふまえ、当面の間は同サービスについては無償提供とする。

話題のポイント:国内における企業のチェックイン(受付管理)クラウドサービスは「RECEPTIONIST」と「ACALL」がここ数年成長著しいものになっています。両社共に3000社を超える導入実績があり、サービス開始も2016年からと同時期です。

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ACALLが提供するワークスペース管理ソリューション

ACALL代表取締役の⻑沼⻫寿さんの話によると、グローバルでのこの領域はワークスペースのデータをカバーするソフトウェアとして、IWMS(Integrated Workplace Management System)という市場があるそうです。プレーヤーもIBM、Oracle、SAPなどの欧米のエンタープライズ巨人が中心で、2019年では2,400億円規模の市場が、2024年には5,000億円になると予測されているというお話(※)でした。※Markets and Markets社の調査レポートより

これらは「オフィス」が前提のサービスではあるのですが、ACALLでは早くからフルリモート・フルフレックスを推進するなど、働く場所についての概念を自ら実践して拡張してきた経緯があります。

感染症拡大に伴って需要が一気に顕在化してきた「在宅」の扱い方はどうすべきなのか、サービス提供者として、また、実践してきたチームとして⻑沼さんに課題や考え方などを伺いました(太字の質問は全て筆者、回答は長沼さん)。

感染症拡大対策として企業がリモートワーク推奨にするなどの施策を公表していますが、長沼さんが感じる課題は

オフィスワークとリモートワークそれぞれの有効性について客観的な視点で評価し、それぞれの企業、個人にとって最適なワークスタイルを合理的に見出しづらい状況にあることではないでしょうか。

Zoom等のおかげで、想定よりビデオ会議を円滑に運用できることがわかり、オフィスワーカーを中心にテクノロジーの価値を享受できています。企業によっては思い切ってオフィスを閉鎖し、完全フルリモートでフレキシブルな体制を構築しているところも出てきてますよね。

一方、個人の目線では「オフィスに行く意味が見いだせないが、会社から出社を要求されている」とか、「自宅に書斎がないので集中できない。以前のようにオフィス主体で仕事をしたい」、「近隣のシェアオフィスをオフィス代わりに利用したい」といったそれぞれの意見が出ています。また企業にも迷いがあって、オフィスを完全に閉鎖してもいいのか、オフィスはどの程度縮小するのが適切なのか、ソーシャルディスタンスのためにむしろオフィス増床が必要ではないのか、など頭を悩ませている状況を耳にしています。

確かにこういった議論するコストが高すぎる、という意見もあるようです

ワークスペースの多様化によって起こるこれらの不透明感は、場所に関連づけられたワークデータの蓄積が乏しいことが要因です。そのスペースではたらくことがワーカーにとっても企業にとっても最適なのかどうか客観的な評価が難しいのですね。

例えば場所に関連付けられた広範なデータを取得できれば「あの場所はこういう仕事をするときは向いている」といったチーム間でのシェアも可能となり、働くことをより積極的で楽しいものに体験価値として高めていくことも可能になります。

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ACALL代表取締役の⻑沼⻫寿さん(筆者撮影・2018年4月)

では企業は何から取り組むべきでしょうか

完全に新型コロナが終息するためには、ワクチンの普及期間を考慮すると18カ月程度のスパンを見ておく必要があると言われています。私たちはこの期間を社会全体にとって次の新しいワークスタイルに移行するための実証実験期間と捉えたいと考えていますが、実証実験のためには、その試みが有意であるかどうかを検証するためのデータが必要になります。

新しいワークスタイルを考える上で、まず検証すべきデータは生産性です。

生産性の定義は、「インプット量(人数×時間)に対するアウトプット成果」を指します。どこでも働ける場を実現するためには、その場がどのように貢献しているのか、場所×時間×成果の軸で測定していく必要があります。

これらの測定データをもとに、その時間はどの場所で働くことが最も合理的なのか判断することができれば、個人はより多様なワークスタイルを積極的にデザインするでしょうし、生産性という共通言語をもとに、企業としてもワーカーが自由にはたらく世界を後押しする立場として、ベクトルを合わせる動機になります。

確かにこの職種であれば在宅でも十分に生産性が上がる、ということが定量化されれば、経営者としては判断しやすいです。一方で変数が多すぎてどこから手を付けるべきか難しいポイントです。最近ではSlackのコミュニケーションを分析する人も増えていますがそれだけで全体像はわからないですよね

はい、既存のソフトウェアサービスを活用することで生産性の可視化に対応できればそれに越したことはありません。例えば、グループウェアならびに勤怠管理アプリケーションやビジネスコミュニケーションプラットフォームは新しいワークスタイルを支える情報基盤として確立されている重要なインフラです。ただ、これらは物理的なワークスペースを変数として保持することを目的に作られているわけではなく、リアルの空間とインターネット空間のデータがつながっていることが重要なポイントになると思います。

つまり、既存のオンラインインフラと物理的なオフィスを繋ぐことが必要

更に言えば、ワークスペース対象はオフィスに限らず、シェアオフィスやサテライトオフィスなどの中間オフィス、自宅などのプライベートスペースもあります。また、オフィスに焦点を当てると、執務室、会議室、空調、照明、デスク、チェア、コピー機などさまざまな要素がありますが、これらは基本的にデータ化されていません。こういった要素を横断的に共有していくことで、あたかも仮想的なオフィス空間が展開されているかのように考えることが必要なのです。

一方でこういった過度のデータ化、可視化は成果主義への偏りに繋がるという懸念もあります

私たちはこれらの取り組みを「ワークスペース体験価値を高めるための手段」として位置づけていて、監視や単なる管理目的で利用することに明確に反対の立場を取っています。ワーカー個人も企業も生産性を高めていくことを前提としながらも、ワーカーが自由にワークスタイルをデザインすることができる仕組みとして使うと生産性が高まり、企業にとっても大きなメリットをもたらすと信じています。

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ACALLは働き方の仕組みをOSに置き換えて考える

今回、リモートワークに対応するソリューションを公表しています。どこまでが実現できる範囲なのでしょうか

多様なワークスペースを横断的に共有する基盤として「WorkstyleOS」という概念を持っていて、ここで生産性のデータを分析し、効率的なワークスタイルをレコメンドすることを考えています。現時点のサービス対象は、場所と時間に限定したデータとなっていますが、今回リリースするリモートワークチェックインアプリによって、ワーカーの成果も蓄積し、2021年にはワーカーごとに最適なワークスタイルを提案する機能をリリースする予定です。

また、オフィスにあるものをIoT化し、WorkstyleOSでデータ化していくスマートオフィスの取り組みも引き続き進めていきます。これはオフィス内に限定しても、まだ生産性を高めるための伸びしろが十分にあるからです。この点については、オフィス最適化ソリューションを提供する多くの事業パートナー様とともに推進力を高めていく予定です。

ありがとうございました。