働き方に地域という概念をなくすーーGMOペパボに「出戻った」ある社員さんのお話

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リモート前提の働き方になったGMOペパボのオフィス(写真提供:GMOペパボ)

Twitterを見ていたらある投稿に目が止まった。投稿主はGMOペパボ(以下、ペパボ)の代表取締役、佐藤健太郎さんだ。なにやら地元に戻った元社員の方の再雇用が決まったようなお話で、さらに言えば、今のコロナ禍でGMOインターネットグループはいち早く働き方の改革を進めている。

どういうことが起こっているのだろうか?

ということで、早速健太郎さんにチャットで経緯を聞いてみた。

ーーTwitter拝見しました。現在、GMOインターネットグループは全体としても働き方の変革を実施されようとしていますが、その一環で何かよいことが起こったのでしょうか?

健太郎さん:昨年、鹿児島にオフィス作ったのですがそこはエンジニアの採用しかしてなくて、それとは別の動きとしてペパボがリモート前提になり採用基準から地域を撤廃しました。今回再入社された方は、5年ほど前にご家族の都合で鹿児島に帰られて離職されたのですが、リモートワークで働けるということで再度応募してくれたというのが経緯です。

ーー地域という概念をなくす、いいですね。GMOインターネットグループとして新しい働き方の指針が出ていますが、ペパボとしての取り組み概要ってどのようなものなのですか

健太郎さん:GMOペパボでは6月1日より、パートナー(社員)が自身のライフスタイルに合わせてQOL(生活の質)を高めながら自律的かつ生産性高く働くことを目的として、自宅などでの勤務が可能なリモートワークを基本とした体制に変更しました。業務内容など、必要に応じて各拠点のオフィスに出社することも可能としています。

また、従来のオフィス(東京、福岡、鹿児島)は、業務を行う場としてだけでなく、社内イベント開催などによるパートナー同士のコミュニケーションや、他企業・地域とのコラボレーションなど、同じ空間で時間を共有することで生まれる体験価値をこれまで以上に提供できる「場」として活用していきたいと考えています。

ーーなるほど、じゃあ今回の件もそもそも鹿児島には支社はあるが、そこに再就職したいわゆる「I・Uターン」の話題とはやはり違っていたのですね。

健太郎さん:はい、リモートワークを原則としたことで、採用における居住地の条件がなくなりました。また、これまではご家庭の事情などで居住地が変わってしまうために退職を選択せざるを得なかったパートナーも、リモートワーク体制になったことによって勤務を継続することが可能となりました。

(今回のTwitterでやりとりしていた件は)先日、ご家族のご事情で実家に帰省するため、5年前に卒業(退職)したパートナーが再入社しました。これは、今回の体制変更により毎日の「通勤」が勤務条件から撤廃されたことで実現したことで、私たちも非常に嬉しく思っています。今後は、スキルや専門性はもちろん、GMOペパボの企業理念への共感や文化とのマッチングをより重視した基準で採用活動をしていきたいと考えています。

ーーすごくいい話。一方、リモートやオフィスのそれぞれの機能や働き方が急速に検討されることによって、一般的にリモートワークは成果主義的な傾向が強くなり、特定の職種に限定されがち、という指摘が出るようになりました。こういった課題にはどのように対応をされるのでしょうか?

健太郎さん:実は私たちは数年前からいずれ訪れるであろう「新しい働き方に備える」というテーマのもと、様々な人事施策を行ってきた経緯があります。その中の一つに評価制度の刷新があるんです。会社とパートナーが持続的に成長していくことを目的に育成方針を定め、評価制度全体を1月に改定しました。

具体的には、全職種共通の等級要件を新設し、これまでの目標達成評価から等級要件をベースにした評価に変更しました。自己評価時には「なぜこの点数にふさわしいのか」について言語化することを求めており、資料は全社公開としています。

評価資料に限らず、弊社では情報のオープン化や業務の非属人化を重視しており、リモートワーク体制ではよりその重要性を感じています。社内ツールを活用し、オンラインでもしっかりとコミュニケーションをとり、情報をオープンにすることで直接的にオフィスで同じ場所と時間を共有せずとも、協働していくことができると考えています。

ーーなるほど、与える影響(離職率の低下やQOLの向上等)はどのようなものでしたか

健太郎さん:6月に実施した社内アンケートでは、リモートワーク体制について満足しているとの回答が89%、また、QOLについては85%以上のパートナーが満足しているとの回答でした。中でも、通勤時間がなくなったことにより、家族との時間や自由に使える時間が増えたという声が多く見られました。

現状は概ね満足度の高い状況ではありますが、今後も、チーム内でのコミュニケーション量が十分か、わずかな変化にも気づける体制となっているかなどマネジメント側の見直しを行っていくほか、人事でも気軽に相談などを受け付ける窓口など、引き続き取り組んでいきます。

ーーありがとうございます。参考になりました。

いかがだっただろうか。

ペパボでの取り組みで特筆すべきはやはり地域や移動の縛りがなくなったこと、そしてそれに見合った評価制度をかねてから準備してきたことがこういった結果に繋がったのだろう。件の社員の方はご家庭の事情でやむなく地元に帰ったケースだったが、地域と通勤の問題がなくなることで復職することができた。

一連の働き方の変化に対する記事でも書いたが、大切なのは働く人々の人生と仕事のバランスだ。これまではやや仕事の側の理屈で移動や場所が制限されてきた。結果、プライベートと仕事の二者択一という苦しい選択を強いる場面が多く発生していたのではないだろうか。インターネットはこの問題を解決できたはずなのだが、社会構造までは変えることができなかった。

感染症拡大がその最後の一押しになったことは悲しいきっかけかもしれないが、それでもこうやって笑顔になって仕事と人生をバランスさせる例が出てきたことは、やはり素直によいことなのだと思う。

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