陸上養殖の普及と共に増す、IT活用の「スマート漁業」の可能性

SHARE:
pexels-photo-229789.jpeg
Photo by mali maeder on Pexels.com

ピックアップ:AKVA group ASA: Potential new land based project

ニュースサマリー:ノルウェー拠点のAquacon社は、米国における陸上養殖事業の展開にあたり養殖機器の総合サプライヤーAKVAグループとのパートナシップを発表した。養殖機器や開発リソースの提供面での協業が期待されており、メリーランド州にて1万5000トンのサーモン陸上養殖が計画されている。

重要なポイント:日本の養殖産業が1990年代を境に横ばいになりここ10年は落ち込む一方、ノルウェーでは1980年代から毎年2桁を超える高い成長率で成長し2011年には日本の生産量を上回っている。これを支えるのがスマート漁業テクノロジーだ。スマート漁業のリーディングカンパニーのひとつであるAKVAグループとAquaconが、陸上養殖の大型施設設置を共同で推進することにより、陸上養殖を始めとした次世代型の養殖技術の社会実装を推進する起爆剤となりうる。

詳細情報:急成長するノルウェーの養殖産業を支えるAKVAグループは、自社内にソフトウェア部門を抱えているのが特徴。給餌システムのようなハードウェアに加え、養殖魚の管理や養殖施設の管理を行うソフトウェアの開発と販売を行う養殖機器の総合サプライヤーとしての活躍も見受けられる。

  • 主なプロダクトには、データに基づいた最適な給餌量の提案や環境調査データの管理を行うFishtalk Control、養殖生産現場の機器を制御するためのAKVA connectなどが挙げられる。
  • 国内にも、IT技術を活用したスマート漁業のプレイヤーは年々登場している。KDDIやNTTドコモのような大手通信事業者を始め、ウミトロンFRDジャパンオプティムなどのスタートアップが挙げられ、流通面での企業としてはUUUOなどが挙げられる。
  • KDDIでは、IoTセンサーを活用し、水温・酸素濃度、塩分などの環境データを自動測定することで、無線通信回線を活用しクラウド上にデータを可視化&蓄積させ鯖の養殖事業効率化を目指す取り組みを行っている。また、ドローンを活用した早期の赤潮検知でマグロ養殖漁業者の負担と作業効率化を目指す取り組みなどが推進されている。
  • NTTドコモでは、ITスタートアップのアンデックスと協業し、カキ養殖における水温センサ付きブイを設置し、アプリ開発はアンデックス、通信モジュール部とクラウドサーバー管理はドコモが行うプロジェクトを実施。双日やISIDとのマグロ養殖事業におけるIoTやAI活用の実証実験を行うなど、他社との協業を積極的に進めている。
  • 一方、スタートアップのウミトロンでは、スマート給餌機や世界初のリアルタイム魚群食欲判定などの海中におけるスマート漁業ソリューションを提供する。また、小型衛星を2022年度に打ち上げ、養殖業における衛星データ活用を推進していくことも発表するなど、地上と宇宙の両方からのビジネスを推進している点で注目を集める。
  • 陸上養殖の国内企業としてはFRDジャパンが挙げられ、同社の閉鎖循環式陸上養殖システムでは、天然海水や地下水を使用せず、水道水を100%循環させながら水産養殖を行うことが可能。

背景:国内の養殖産業が停滞する一方で、スマート水産や陸上養殖を含めた次世代型養殖技術の市場規模は右肩上がりの成長の予測がなされており、今後より一層活況となっていくとみられる。

執筆:國生啓佑/編集:増渕大志

Members

BRIDGEの会員制度「Members」に登録いただくと無料で会員限定の記事が毎月10本までお読みいただけます。また、有料の「Members Plus」の方は記事が全て読めるほか、BRIDGE HOT 100などのコンテンツや会員限定のオンラインイベントにご参加いただけます。
無料で登録する