マンガ専用の多言語翻訳システム「Mantra Engine」正式公開、さらなる精度向上の構想も

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『Mantra Engine』動作画面 ©️Kuchitaka Mitsuki

ニュースサマリ:マンガに特化した機械翻訳技術および法人向けサービスを展開するMantraは7月28日、多言語翻訳システム「Mantra Engine」の正式版を公開した。Mantra Engineはマンガの高速な多言語展開を可能にする、出版社およびマンガの制作・配信事業者を対象にした法人向けクラウドサービス。

マンガの翻訳版制作に関わるほぼすべての作業をブラウザ上で可能にすることにより、簡便な操作性と、関係者全員で進捗を共有できる利便性を実現している。

同社が開発したマンガ専用の機械翻訳技術とプロの翻訳者による修正・校閲を本システム上で組み合わせることにより、従来の翻訳版制作のワークフローの約半分の時間で翻訳版の制作が可能となる。対応言語は英語・中国語(簡体字)から開始し、順次追加を予定している。

話題のポイント:マンガの海外展開、海賊版による経済的損失問題の解決を目指すMantraが手がける「Mantra Engine」の主な役割は「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」の3つを素早く実行することです。電子版の普及を背景にライセンス運用から多言語配信で売り上げを拡大したいマンガ業界にとって、週刊連載にも対応できる仕組みは強力な武器と言えるでしょう。

テクノロジー企業の共通事項ではありますが、特にAI企業にとっては自動処理できる範囲が拡大すればそれだけ付加価値が大きくなります。コアなデータへのアクセス確保ができたら、次はストックし続けるデータを活かす手を考えていく必要があります。

Mantra代表取締役の石渡祥之佑氏は、今回の正式版から追加された「用語集」こそがまさに機械翻訳の一番大きな課題に対する解決策になると期待を寄せていました。

マンガでは作品・作家独特の固有名詞が数多く登場します。一般的にGoogle翻訳を利用する場合は、同じ固有名詞を含む文章を読ませて同じミスを繰り返しても受け取り手で処理できますが、すべて訂正するのは物凄い労力となります。新しく登場するごとに登録できるというのはシンプルですが効果は大きいです。

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Image Credit:Mantra

「用語集」は自動翻訳されたものに対して、翻訳者がどこを訂正しているのかをエラー分析するというアプローチでしたが、今後は動的な方法も検討してるそうです。

すでに学習済みのモデルを関連したタスクに応用する手法である転移学習の一種であるドメイン適応を用いることで、1ページ目の翻訳訂正を2ページ目の自動翻訳に適応することで精度を向上させるアプローチを構想していると言います。

しかし、あくまで「用語集」や「動的アプローチ」は機械翻訳の汎用的な精度向上手段です。セリフが横書き、推理マンガの長文、少女マンガのモノローグなど、マンガの自動翻訳という大きな括りで見ると、作品ごとに「文字認識」「機械翻訳」「自動写植」を適用させるような努力が今後も必要となります。

課題の優先度が横並びな分、相談された作品に必要な要素から取り組んでいくとのことでした。インパクトの大きな課題から取り組む優先順位を決めていくのがセオリーだとは思いますが、目の前の顧客を一人ひとり満足させていく過程が全てMantra Engineの外形を作り上げていく、これもターゲット領域にマッチした正攻法なのだと感じます。