マネーフォワードが人材紹介サービスの開始を発表、会計SaaSの会社が「働き方の最適化」に進出するワケ

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マネーフォワード(東証:3994)は先頃、キャリア支援サービス事業「マネーフォワードキャリア」を開始すると発表した。同社の主軸事業は言うまでもなく会計 SaaS だが、先日の資本政策解剖の記事にも書いたように、かねてからプロダクトの拡充や売上の多角化を狙い、スタートアップを買収したり、子会社を設立したりしてきた。

今回のマネーフォワードキャリアは子会社ではなく、マネーフォワード本体の社内プロジェクトとして半ばリーン的に立ち上げるという。同社がこれまで進出してきた事業は、企業間ファクタリング(MF KESSAI)にせよ、フィナンシャルアドバイザリー(マネーフォワードシンカ)にせよ、会計 SaaS 事業とのシナジーを想像しやすかったが、なぜ人材事業に進出するのか?

新サービスの責任者を務める、マネフォワードの小川昌之氏に話を聞いた。


小川昌之氏

小川氏はグリーを経て、マネーフォワードには2015年2月に入社。以来、社長室人事部や組織改編後の人事本部人材採用部部長を務めるなど、マネーフォワードの人事や採用の陣頭指揮に当たってきた人物だ。

ミッションである「お金を前へ。人生をもっと前へ。」のうち、「企業経営を前に進める」ための仕組みづくりに注力してきたが、「個人の働き方の最適化」にも焦点を充てていきたいと小川氏は言う。

ここで敢えて「最適化」と言う言葉を使っているのは、転職にありがちな「目先の収入を上げる」ことだけが課題解決の手段ではないと強調したいから。収入を上げることも大事だが、自分らしく働き、活躍できる環境を手に入れられることが大事。

スキルや経験だけでなく、人間関係のマッチングも重要だと考えている。そこでマネーフォワードキャリアでは、一般的な人材紹介の仕組みに加えて、FFS という科学的なアプローチも採用することにした。

小川氏の言う FFS とはモントリオール大学国際ストレス研究所で「ストレスと性格」を研究していた小林恵智博士が提唱した理論で、個人の特性、人間関係で発生する問題やシナジーを客観的に把握し具体的な対策を提示できるというもの。マネーフォワードキャリアでは、FFS 理論の排他的使用権を持つヒューマンロジック研究所と業務提携、サービスで FFS 理論を活用する。

これもまた、先日の資本政策解剖の記事にも書いたように、マネーフォワード CFO の金坂直哉氏もまた、買収先や新たに迎える IPO 支援人材についても、表面的なスキルよりもカルチャーフィットや信頼関係の確立が重要であると説明していた。どんな仕事をするかよりも、誰と仕事するか、どんな環境で仕事できるかは、転職の成否を大きく左右する。

一方、あまたある人材紹介サービスの中で、新規参入のマネーフォワードキャリアを利用することは、優秀な人材を渇望する企業にとってどのようなメリットがあるのだろう? マネフォワードキャリアは「DX 人材に特化する」というキーワードを打ち出している。これにはマネーフォワード自体が企業の DX を促進するサービスであるため、これまでにも多くの顧客から相談を受けてきたことが背景にあるという。

マネーフォワードのクライアントからは以前から課題を聞いてきた。そこから得た答の一つが、企業が DX を成功させる上で人材が大きな課題であるということ。こういった課題を聞いてきたので(人材紹介は)新規参入の市場ではあるが、大きなハードルになるとは考えていない。

マネーフォワードでも人材採用は行っているが、そこから得られたノウハウを存分に使って企業が欲しがる人材を紹介していきたい。求職者にとって良い選択になることが一番いいと思っている。(小川氏)

一言で DX を進めると言っても、一定の予算を取って専門部署を立ち上げ CDO(Chief Digital Officer)のようなポジションを設ける大企業もあれば、SaaS の現場浸透がままならない中小企業もある。小川氏によれば、マネーフォワードキャリアでは今のところ、紹介する人材のレイヤーや対象とする事業者規模などは絞り込んでおらず、今後、PMF(プロダクトマーケットフィット)を図っていきたい考えだ。

人材関連に限らず、企業の DX をさまざまな形で支援しようとする動きが各社で活発化しつつある。イグニション・ポイントは先月、経営人材の供給を通じた企業のオープンイノベーションを加速する事業の開始を発表。また、人材大手のエン・ジャパン(東証:4849)は今週、スタートアップへの投資を通じて、顧客15万社への DX を加速する事業を開始すると発表した

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