
Image credit: Plum
AI を使った個人のお金の節約や貯蓄を自動化するアプリ「Plum」を開発・提供する Plum は21日、1,000万米ドル(約10.7億円)を資金調達したことを明らかにした。この調達は来年実施予定のシリーズ B ラウンドに向けたコンバーチブルノートラウンドで、グローバル・ブレインと、前回ラウンド(シリーズ A)にも参加した欧州復興開発銀行(EBRD)がリードした。アテネの VC である VentureFriends も参加し、イギリス政府のスタートアップ支援ファンド「Future Fund」からも助成を受けた。同社の創業以来の累積調達金額は約1,930万米ドル(約26.3億円)に達した。
Plum は、以前 TransferWise の国際オペレーション責任者を務めた Victor Trokoudes 氏らにより創業。ユーザが Plum のアプリを自分の銀行口座と紐づけることにより、収入・支出(光熱費や通信費・クレジットカード利用代金)・貯蓄余力などをモニタリング。AI により貯蓄余力分を高利回り商品で運用したり(普通預金から定期預金への乗り換えなど)、利用状況に応じてより安いプランの光熱費をレコメンドしたりする。ユーザは意識することなく生活における出費を抑えることができ、節約・貯蓄・投資を自動化することで個人の金融を最適化してくれるサービスだ。
Trokoudes 氏によれば、今回の資金調達を受けて、Plum はターゲットとする市場を現在のイギリス国内からヨーロッパ全体へと拡大する。
次の四半期では、特にフランスとスペインへの進出に注力する。お金を貯蓄することに対して大きな需要があるからだ。(Trokoudes 氏)

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Plum の海外進出において次にどの市場を狙うかは、この「お金を節約・貯蓄することへの需要」が大きく関係している。その市場に住む人々の平均的な収入と支出とのバランス、価格を比較して複数のプロバイダの選択肢から電気・ガス・水道などの契約を選べるか、銀行からオンラインバンキングでアカウント情報をアグリゲーションできるようオープンな環境を提供しているか、などにもよる。
ヨーロッパ進出の次にはアジア市場を狙うと Trokoudes 氏は語った。具体的には市場が大きい、日本、香港、シンガポール、インドネシア、インドなどだ。多くの欧米のスタートアップがそうであるように、ターゲットに中国市場は含まれない。具体的な時期については言及はなかったものの、Trokoudes 氏は TransferWise の日本進出にも関わったことから、Plum のターゲットに日本が含まれることを強調した。この点において、今回投資家となったグローバル・ブレインは日本の金融機関やプロバイダと Plum が関係を構築していく上で協力すると推定できる。
Plum は新型コロナウイルスの感染拡大を追い風にユーザを増やし、今年1月以降のユーザの貯蓄総額がそれまでの5倍に増え、電気・ガス・水道などのプロバイダ変更が163%に増えたという。人々が屋内にいることを余儀なくされ、生活費の抑制を行おうとした結果が如実に現れた形だ。これまでに100万人がアプリを利用しており、2021年末までにイギリス、スペイン、フランスでユーザ数500万人の獲得を目論む。
この分野では、競合になり得るスタートアップとして、いずれもロンドンを拠点とする MoneyBox、Cleo、Hyperjar などが存在するが、Trokoudes 氏によれば、いずれも投資の最適化にフォーカスしているものが多く、節約や貯蓄にフォーカスしているものとしては Plum が唯一無二ではないかと言う。同社では今回調達した資金をもとに、プロダクト開発、オペレーション、マーケティング人材を増強する。現在、ロンドン、アテネに60人以上いるメンバーを2020年までに80人体制までに拡大する計画だ。
<参考文献>
- The best standalone savings apps in 2020(MoneyMagpie)
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