農業支援もサブスク、南アフリカ発「Aerobotics」はAIとドローンで食料問題に挑む

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Image Credit : Aerobertics

ピックアップSA agri-tech startup Aerobotics raises US$5.5m from Naspers Foundry

ニュースサマリ:南アフリカでのケープタウンを拠点とするAgritechスタートアップAeroboticsは今年5月、Naspersの設立した投資ファンドNaspers Foundryから1億ランド(550万米ドル)の資金を調達した。

Aeroboticsの創業は2014年。ドローンで撮影した高解像度の農作物の画像と衛星画像とを、AIを使用して解析し、農家のコスト削減や生産性向上を支援するサブスクリプションサービスを提供している。同社は2019年からはアメリカでの事業拡大にも重点を置き、前年比4倍の収益を上げるなど順調な成長を遂げている

重要なポイント:アフリカの農業は先進国と比べて生産性が数倍低いといわれており、コストを削減し生産性を向上することは貧困問題の解決と将来的な世界レベルでの食糧問題の解決にも繋がるため、アフリカのAgritechの中で注目が集まる領域となっている。

また、出資したNaspers FoundryはNaspersが南アフリカのTech系スタートアップ向けに設立した14億ランド(9,600万米ドル)の投資ファンドでAeroboticsは2つめの投資先となる。

NaspersはTencent(騰訊)への早期投資で知られる、南アフリカに本社を置くインターネット事業やメディア事業を行う多国籍起業。2001年に3200万ドルをTencentに投資し半数近い株を取得、現在でも株の30%強を保有する筆頭株主。

詳細情報:Aeroboticsのサービスは農家のコストを削減し作物の生産性向上を目的とするもので、ドローンで撮影した高解像度の農作物の画像と同地点の衛星画像とをAIを使用して解析し、樹木一本ごとやそこに生っている収穫物の一つ一つの育成状況や害虫・病害の有無、農地全体の環境状態などをモニタリングしてレポートするサービスをサブスクリプション形式で提供している。

  • 利用料は1エーカー(4047平方メートル)あたり年間12ドル。利用者にはクラウドベースのアプリAeroviewとモバイルアプリAeroview InFieldが提供され、これを通して樹木一本単位でのレポート(樹木それぞれのサイズや、健康状態、倒れている木はないか、など)、高解像度のドローン撮影による農地の調査報告、衛星画像による農地の健康状態、灌漑モニタリング、農地観察アプリケーション、害虫や病害の早期発見、被害を軽減させるためのアドバイス、プレミアムトレーニング及びサポートといった内容を確認できる。
  • Aeroboticsは2014年の起業当初は独自ドローンの開発を試みたり画像解析の精度が良くなかったりと、最初の数年の業績はあまり好ましいものではなかった。 その後独自ドローンの開発を諦め他社との差別化はソフトウェアで行うことにし、画像解析にはAIを導入して精度改善に取り組むなど、サービスの改良に取り組んだことで2018年に入った頃から一気に注目が集まり始めた。
  • 2018年にはGoogle Launchpad Acceleratorに選ばれたほか、CNBCのAll Africa Business Leader AwardsでInnovator of the Year賞を受賞、2019年にはフランスのマクロン大統領が推進する欧州最大規模のTechイベントVivaTechでPresident Macron’s Award for Best Startup賞を受賞
  • 2019年からはアメリカでの事業にも重点をおき、農業効率化のためのプラットフォームをアメリカの農家約1万世帯へ提供しているFarmers Business Network との事業提携や、クライアントの農地や農作物について精度の高い情報を手に入れたい農家向け保険会社からの支援を取り付けるなど、順調に事業を拡大
  • アメリカ以外にもイギリス、オーストラリアなどを含む11カ国で事業を開始。南アフリカ以外でのシェアはまだまだ低いが、南アフリカ国内では世界最大の輸出量になるマカダミアナッツ市場の40%、柑橘類市場の20%を占める農家などが主要顧客となっている。サービスがこの作物にしか対応していないということではなく、リンゴ、ブルーベリー、ピーチ、アボカドなど、他の作物農家を育てる農家も利用している。2019年は四半期ごとの売上高が平均で50%増加し、通算での収益は前年比約4倍となった。
  • Aeroboticsは2017年8月にケープタウンに拠点を置くVC会社4Di CapitalとSavannah Fundから60万ドル、2018年にPaper Plane VenturesからシリーズAラウンドで400万ドル、追加ラウンドで200万ドルの資金調達を実施、今回Naspers Foundryからの1億ランド(550万米ドル)の投資により、資金調達合計額は一気にこれまでの倍近くとなっている。

背景:新型コロナウイルス流行下、人々が作業中に密接に接しないことや、ロックダウンで農地へ行けなくても農場の様子の観察や農薬の噴霧等が行えることで、現在ドローンを活用した農業向けサービス全般への需要は世界的に高まっている。

執筆:椛澤かおり/編集:渡邉草太

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