米空軍も注目、広がる「宇宙データビジネス」

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Photo by Rakicevic Nenad on Pexels.com

ピックアップ:US Air Force Selects Orbital Insight as Big Bet and Awards Strategic Financing SBIR Phase II Contract

ニュースサマリー:宇宙AIスタートアップOrbital Insightは今年4月、米空軍(USAF)と衛星画像やIoTデバイスなどの複数地理空間データソースを活用したビッグデータ解析を共同で実施することを発表している。今回実施されるプログラムでは、Orbital Insightを含む21社の小規模事業者に約5億5000万米ドルの契約が締結されることになる。

今回Orbital Insightが参加するプログラムは、米空軍の「中小企業イノベーション研究プログラム&中小企業技術移転プログラム(SBIR/STTR)」「社内インキュベーター(AFWERX)」「M&A部門」の共同事業であり、インキュベーション活動の一環である。

重要なポイント:衛星画像データの活用による、今までになかった視点でのインサイトが今後の宇宙データビジネスでは期待されている。特にAIを活用した分析を実施するOrbital Insightのような事業者は、政府機関とのパートナーシップも盛んになるかもしれない。

詳細情報:宇宙データビジネスとは、衛星画像などのリモートセンシング(遠く離れたところから対象物に触れることなく、対象物の種類や形状、性質等の情報を得る技術)データを活用したビジネスを指す。

  • Orbital Insightは、衛星画像を活用して原油の埋蔵量の予測や経済成長の予測といった、新たな視点での地理空間データ分析のサービスを提供している。日本にも支社を置き、東京海上日動火災保険などにサービスを提供している。
  • その他の主要プレーヤーには、米国を拠点とするSpaceKnowが挙げられる。同社は、中国サテライト製造業指数(SMI)を立ち上げ、複数の商用衛星が撮影した写真を分析することで中国経済の実態に迫る取り組みを行っている。

背景:この宇宙データビジネスの背景には、インターステラテクノロジズアクセルスペースのような超小型衛星周りのプレイヤー増加が挙げられる。基幹ロケットH-IIAの開発費が1500億円、ひまわりのような大型の人工衛星は数百億円という額に対して、NECが開発した小型地球衛星ASNAROは50億円と、大幅にコストを抑えられることから急速に商用利用が進む可能性がある。

さくらインターネットのように、商用の衛星画像プラットフォームを無償で提供し、日本における宇宙データビジネスを後押しするような企業も市場に大きく貢献している。

宇宙データビジネスの一部である商用の衛星画像市場だけを見ても、2019年の23億7500万米ドルから2025年にかけて45億6200万米ドルへと成長する予測もある。日本国内でも宇宙機器産業が2030年代初期で6000〜7000億円の市場規模の予測であるのに対して、宇宙データビジネスが1兆7000億円~1兆8000億円となると予測される、非常に大きなマーケットでもある。

執筆:國生啓佑/編集:増渕大志

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