バンコクのTalentEx、新型コロナの影響でロシア事業を完全ピボット——ロシア人エンジニアのためのオンラインスクールを開講

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16日、オンライン開催された CyberSamurai のオープニイングイベントで。
TalentEx ロシア現法のコルビノフ・アナトリ氏(左上)、アン・ダーシャ氏(右上)、杉中亮星氏(左下)。全員が日本語とロシア語の2カ国語以上を話すマルチリンガルで、日本語教師の経験を持つ。

※この記事は英語で書かれた記事を日本語訳したものです。英語版の記事はコチラから

バンコクを拠点に求人メディアや人事向け SaaS を提供する TalentEx は16日、オンラインスクール事業「CyberSamurai(ロシア語名:КиберСамурае=キベルサムライ)」の設立を明らかにした。ロシア語圏エンジニアのためのオンラインスクールで、日本の IT業界・テクノロジー情報・商習慣を学んだり、アニメサブカル解説を楽しんだり、日本人 CTO とのイベントに参加したりできる月額制のオンラインコミュニティを目指す。

TalentEx は2013年、ノボット(KDDI 子会社の mediba が2011年に買収)出身の越陽二郎(こし・ようじろう)氏によって設立されたスタートアップ。TalentEx の経営の柱は大きくいくつある。タイ市場向け日本語人材採用サイトやジョブフェアの「WakuWaku」、モンスター・ラボのバンコクにあるコワーキングスペース「Monstar Hub Bangkok」のコミュニティ運営、タイの日系企業などに対する MICHIRU RPA の販売代理などだ。

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2018年7月からは、ロシアに現地法人を設立し、ロシアのエンジニアを日本企業に供給する事業に着手。立ち上げから1年余りを経たロシア事業は、売上ベースでタイにおける他事業を上回る勢いで推移していたが、新型コロナウイルスの感染拡大でほぼストップしてしまった。タイの事業売上から補填するなどしてロシア法人の運営を繋ぐこと数ヶ月、そんな中、ロシアの現地若手メンバーらが一念発起し立ち上げた新事業が CyberSamurai だ。

オンラインスクールのキャラクタは一見すると狐に見えるが、ロシアのフィギュアスケート選手アリーナ・ザギトワの飼い犬マサルをモデルにしたという。
Image credit: TalentEx

情報の非対称性やアービトラージなど、スタートアップのビジネスには、取引する両者間に立ち双方のギャップを埋めることで利益を上げるモデルが少なくない。日本、シンガポール、タイ、ロシアの4つの市場に拠点を置く TalentEx にとっては得意芸だ。異なる市場間で人材が流動するとき、最も障害になるのは言葉だと考えがちだが、広い国土のためリモートワークが一般的的なロシアで、あるいは、世界的にも新型コロナウイルスの影響でテレワークが常態化する中、むしろ障害は言葉ではないことが顕著化したという。

ロシア人エンジニアを日本企業が雇うとき、確かに最初は言葉のことを気にされる。しかし、最近は、日本もテレワーク化を余儀なくされ、作業指示やコミュニケーションも Slack などのツールを介して行うことが多くなった。

対面よりツールを使ったコミュニケーションが増えたことで、外国人にとって言葉のハードルは以前よりも下がった。むしろ、日本企業で仕事をするときに重要なのは、商習慣とか、仕事の進め方とか、言語化しきれない文化的なギャップが大きいかもしれない。(TalentEx CEO 越氏)

CyberSamurai の Telegram グループ

筆者の友人である外国人らの中にも、ドラマやアニメを見て、結果的に日本語を習得したという人は少なくない。香港民主化運動の旗手 Agnes Chow(周庭)氏が日本語を習得したきっかけも日本のアニメだ。彼女のような人物が日本で人気を集めるのは、おそらく日本語を話せることもあるが、それ以上に、日本の文化や社会習慣を理解しているとか、そういった文脈を日本人が感じ取っているのだろう。

CyberSamurai が言葉の習得ではなく、むしろ、業界動向や、仕事とは直接関係のないアニメサブカルの解説などにもフォーカスしているのはそんな理由からだ。CyberSamurai は月額の有料で提供されるが、おそらく TalentEx としては、これ単体でかつてのロシア人材事業を補えるだけの売上を上げるのは難しい。コロナ後にロシア人エンジニアの日本企業からの需要が回復してきた際に備え、CyberSamurai 会員をある種のタレントプールと捉えているのかもしれない。

CyberSamurai は、ロシアにおける TalentEx のメンバー、日本人とロシア人の若手数名で運営されており、ロシアでポピュラーな Telegram を使ったメッセージングを中心にコミュニティ活動を展開する。TalentEx では今後、ロシアをはじめ、旧 CIS 諸国などロシア語圏全域へと活動を拡大したい考えだ。