農作物の生育状況はAIで予測、アグリテック「Taranis」に日本企業も注目

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Taranisウェブサイト

ピックアップ:Taranis eyes Asia expansion after raising $30m from Vertex, others

ニュースサマリー:アグリテック・スタートアップのTaranisは8月4日、シリーズCラウンドで3,000万米ドルを調達したと発表している。リード投資家はシンガポールのK3 Venturesで、Vertex GrowthやKuokグループのOrion Fund、日立製作所のCVC子会社「ヒタチベンチャーズ」や三菱UFJキャピタルなども同ラウンドに参加している。

同社はイスラエルのテルアビブを拠点とし、すでに南北アメリカやオーストラリアなどでサービスを展開している。調達した資金は今アジアでの事業展開などに利用されるという。

重要なポイント:アジアは世界の農地面積において約23%を占めており、食糧生産量の60%を生産している。

詳細情報:Taranisは航空写真とAIを組み合わせ、対象となる農地と作物の高精細画像を元に診断を行うのが特徴。農作物の生育状況や農地の状態などを監視し分析、収穫量に影響が出ないよう農作業についてのアドバイスやトラブルへの対処法などを提供している。

  • Taranisはシードラウンドで200万米ドル、シリーズAラウンドで750万米ドル、シリーズBラウンドで2,000万米ドルの資金を調達しており、今回の調達により資金調達の合計額は6,000万ドル近くとなった。
  • 同社は既に北米・南米アメリカ、ロシア、ウクライナ、オーストラリアでサービスを展開し、約1万9,000人の顧客を抱えている。現在は主要な作物としてトウモロコシ、大豆、サトウキビ、綿花畑へのサービスを提供している。アジア展開に合わせ今後は米、小麦などの作物も積極的に取り扱っていく予定。
  • アジア参入の第一歩として既にインドネシアではサトウキビ畑でのパイロットテストを完了している。また、タイ、フィリピンへの進出も計画しているほか、パプアニューギニアなどオセアニア地域への事業展開の可能性も示唆している。
  • 同社サービスは、UHRとAI2と呼ばれる軍事光学と機械学習を組み合わせた高精細画像に関する独自技術をサービスの核としている。
  • UHR(ULTRA-HIGH RESOLUTION)は、樹木単位で注意が必要な箇所を特定するための8cmサイズのフィールド全体画像。いくつかに分割して撮影された農地の画像をアルゴリズムを使用してつなぎ合わせ、1枚のフィールド画像を生成する。
  • AI2は、1ピクセルあたり0.3〜0.5 mmの画像解像度で、農作物の葉一枚一枚や葉の上にいる虫を識別可能な画像を航空機とドローンを使用して撮影する。モーション補正技術を駆使し、航空機から低高度(約10〜30m)に焦点の合った画像の撮影が可能。100エーカー(約40ヘクタール)分の画像を6分間で撮影する。
  • UHRによるフィールド全体の画像とAI2による細部の画像データを使い、60名以上の農学者が100万例以上の学習データを用いてAIの最適化を図る。作物の生育状態における異常性や害虫の検知、農地の状態把握などを行う。また、気象情報や大気環境状況などのモニタリングデータも活用し、各農作業に最適なタイミングをアドバイスすることが可能。収穫減に繋がる予兆を検知した際には注意や対処法などの情報も提供される。
  • これらの情報は全てウェブ上にあるダッシュボードにまとめられており、ユーザーはいつでも確認することができる。その他、農学者への作物に関する相談やカスタマーサービスへの問い合わせも24時間対応で受け付けている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

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