物流テクノロジーの夜明け、注目すべきサプライチェーン・テクノロジーとは

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Photo by Tiger Lily from Pexels

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」に掲載された記事からの転載。Universe編集部と同社のInvestment Group Partnerの深山和彦氏が共同執筆した。

調査会社ガートナーは今年7月に注目すべきサプライチェーンテクノロジーについての考察を公開している。同社調査によると、サプライチェーンに関わる企業の8割は新たな技術、特にアーリーステージのテクノロジーの採用に及び腰だという。サプライチェーンに関する技術は次の8つに分類できるという。

  1. 超自動化(Hyperautomation)
  2. デジタル・サプライチェーン・ツイン(DSCT)
  3. 継続的インテリジェンス(Continuous Intelligence、CI)
  4. サプライチェーンガバナンスとセキュリティ
  5. エッジコンピューティングと分析
  6. 人工知能(AI)
  7. 5Gネットワーク
  8. 没入型の体験

参考情報:Gartner Identifies the Top Supply Chain Technology Trends in 2020

では、国内は今後の物流・サプライチェーンテクノロジーをどのように考えればよいだろうか?私たちグローバル・ブレインは今年4月にヤマトホールディングスと共同で50億円規模の「KURONEKO Innovation Fund(YMT-GB 投資事業有限責任組合)」を立ち上げている。それぞれのテクノロジートレンドについて私たちの見解と共に掘り下げてみたい。

パンデミックで加速する国内物流業界のデジタル化

まず国内事情から。大きな動き、変化の全体感を示す指標としてはやはりEC化率が挙げられる。経済産業省の年次報告を見ると、ざっと次のような状況だ。

令和元年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、19.4兆円(前年18.0兆円、前年比7.65%増)に拡大しています。また、令和元年の日本国内のBtoB-EC(企業間電子商取引)市場規模は353.0兆円(前年344.2兆円、前年比2.5%増)に拡大しています。また、EC化率※1は、BtoC-ECで6.76%(前年比0.54ポイント増)、BtoB-ECで31.7%(前年比1.5ポイント増)と増加傾向にあり、商取引の電子化が引き続き進展しています。引用:電子商取引に関する市場調査の結果

消費者向け、事業者向け共に順調に拡大をつづけており、パンデミックによる「接触制限」によってこの流れはさらに加速すると予想される。つまり取引の多様化はさらに進む。

一方、物流業界はこれら「産業のEC化」に対する需要増、多様化に素早く対応し、多種多様な配送を提供できるかというとなかなか難しい。要因としてはやはり中小レイヤーにプレーヤーが多数存在しており、担い手の高齢化についても長らく指摘されていることが挙げられる。一言でデジタル化と言っても「はいそうですか」とはいかない。

需要増に対する配送のデジタル化・多様化への構造的な遅れ。これがざっくりとした国内の物流テクノロジーを取り巻く環境と言える。

何が求められているのか

調査会社ガートナーが公表しているサプライチェーン・テクノロジーの全てが日本市場で今すぐレディの状態かというとやはり最適化は発生する。現在、私たちグローバル・ブレインが注目している動きはマーケットのトレンドも含めて次のようなものだ。

  1. AI・ビッグデータ:配送網・ルート最適化の流れが燃料や人手不足の解消に繋がる(生産工程など異なるバリューチェーンとのデータ連携で配送のさらなる進化)
  2. 超自動化:自動運転やドローンを使った超自動化。人手問題を解決
  3. ラストワンマイル:置き配にみられるラストワンマイルの多様化、体験の変化
  4. 環境問題:エコシステム全体としての取り組み、CO2削減
  5. ギグワーカー:新しい労働力により配送の体験が変わる

動きはもう始まっている。例えばラストワンマイルについては、ヤマト運輸が開始した「EAZY」がある。「ZOZO TOWN」で先行しているが、このサービスを利用すれば、ユーザーは自転車のカゴに荷物を配達してもらうことも可能だ。

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国内初!ヤマト運輸提供の「EAZY」導入により 6月24日(水)からZOZOTOWNでの商品購入後、「非対面受け取り」指定が可能に(2020年06月16日・株式会社ZOZOリリースより)

しかし、こういったラストワンマイル、配送の体験は1社で作れるものではない。今回の「KURONEKO Innovation Fund」はこういった体験をバリューチェーン全体でスタートアップと一緒に作り上げていく、いわば「新物流エコシステム」として考えている。

社会はどう変わるのか

国内のマーケットについてざっくりとした俯瞰から、特に私たちが注目する物流テクノロジー、マーケットトレンドについて紐解いてみた。では、これによって社会はどう変わるのだろうか?本稿の最後に先行している米国などでの事例を紹介して締め括りたいと思う。

先述したAIによるルート最適化の流れはすでに到来している。

UberEatsを代表とする配達プラットフォームではギグワーカーが配達業務を担っているが、随時何百もの要素に基づいて配達ルートをシミュレーション・選定・指示する必要がある。たとえば雨の日、高確率で晴れの日に使っている道が混むと分かっているのであれば、別のルートを指定する必要がある。

そこで登場したのが、膨大なシミュレーションをA/Bテストの要領でこなし、フード配達事業者にルート最適化のシステムを卸す「nextmv」である。同社は米国版セブンイレブンと称される「goPuff」に利用されている。

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Image Credit: nextmvウェブサイトより

配達ルートの最適化は物流の効率化に貢献し、商品の到着時間の精度を高め、従来は午前中や午後と指定されていた配達予定時間が、分単位で指定できる可能性を秘めている。

物流網の最適化とは違い、配達プロセスそのものをなくそうとする動きもある。Amazonだ。

2019年、Amazon Go事業担当者はオフィス従業員向けではなく、アパート居住者向けに出店展開していくと発言している。実際、シアトル市内のアパートに出店する試験は行っているようだ。

奇しくもこの出店戦略はパンデミック禍では特に理にかなう形になるだろう。つまり、AmazonGo店舗が、アパートおよび近隣住宅街へのラストマイル配達拠点になるのだ。近隣住人が欲する食料品を、実際に需要が発生する前に事前予測して店舗に備蓄しておく。

その上で、室内配達サービス「Amazon Key」などを経由して自宅内に直接配達する体験が実現されるかもしれない。ビックデータを駆使して需要が発生してから届ける物流の業態を根本から覆し、配達体験さえも変えようとしてる。 このように物流がデジタル化すると、バリューチェーンそのものが変化する。

物流会社が外部の家政婦サービスやホテルのコンシェルジュサービスなどが連携する形は前述のAmazon Keyで始まっているし、nextmvのようなルート最適化ソリューションやギグワーカー派遣と連携することで、フード配達のサポートができる未来もあるかもしれない。

これから時代は各企業が強みを活かし、共通化できる点は仕組み化して共有するオープンプラットフォームの形になっていくはずだ。各社が様々な先進技術やDXを強みに物流市場を支えていく未来を見据えていく必要がある。