あえて「手数料」を捨てたモバイル銀行「Chime」が躍進した理由

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Image Credit : Chime

ピックアップ:Chime is now worth $14.5 billion, surging past Robinhood as the most valuable U.S. consumer fintech

ニュースサマリー:モバイルバンク「Chime」は18日、シリーズFにて4億8500万ドルの資金調達を実施したとCNBCが報じている。今回の調達で同社評価額は145億ドルに達し、前回ラウンドの15億ドルから約9倍に上昇している。Chimeはミレニアル世代などのティーンをターゲットとしたモバイル銀行を運営するスタートアップ。送金や海外利用の際に生じる手数料等を完全廃止し、若者世代の需要に特化したサービスを特徴としている。

話題のポイント:アメリカの中央銀行FRB(連邦準備制度理事会)は最低でも2023年末までのゼロ金利政策、つまり政策金利がほとんど発生しない金融緩和施策を維持すると明らかにしています。そのため、実質的には銀行へキャッシュを金利目的に預ける意味はなくなっており、銀行側としては他行との違いを出すのが難しい状況です。Chimeはまさに、この既存金融機関の「使いにくさ」を解消し、金利以外での価値提供を狙って成功しました。

冒頭で述べたように、既存の銀行では伝統的にかかっていた「手数料」が多く削られています。例えば、今までは仮に残高がマイナスになってしまった場合、利用者は「Overdraft fee」を支払わなければなりませんでした。銀行で異なるものの、支払いがあるまで隔週5ドルを徴収されるような仕組みになっているのです。

個人にとってはそこまで大きな金額ではありませんが、Chimeが示すデータによれば2019年時点で既存金融機関が得ている手数料は約110億ドルにも上るそうです。Chimeでは、最大で100ドルまでとの決まりはありますが、うっかり残高をマイナスにしてしまっても数日中に支払いをすれば全く手数料がかからない設計になっています。

既存金融機関が利益としていたポイント(ユーザーにとっては「使いにくさ」)を捨て去り、体験向上に走っているのがチャレンジャーバンクのひとつの特徴ですが、Chimeには他のサービスもあります。

例えばChimeを給与の振込口座(Direct Deposit)に登録すれば、実際の支払い日より2日前に入金を受け取ることができる先払いサービスも実施しています。また、通常は手数料がかかる最低預入額や海外送金手数料などもかからず、若者の需要やひとり一人の状況に対しフレキシブルなサービス提供を意識しているように思えます。

「貯蓄」という観点では、自動で貯蓄の提案をしてくれる機能も実装されています。例えば4.55ドルでコーヒーを決済すると、キリのいい5ドル分の決済にアプリ上のみで変更し、45セントを貯蓄預金へ移動してくれます。

今までの銀行は、どこを選んでも同じようなUI・UX、そして当然のように「手数料」を各所で徴収していました。もちろん、信頼性高く著名な銀行は、多額の資金の預入場所として最適なのは過去もこれからも変わらないでしょう。しかし、Chimeが台頭してきていることからも分かるように、特に若者を中心とした需要の柔軟さに対応が求められているのです。

そうした意味で、Chimeは既存金融機関が即座には提供できないようなプレミアム機能を兼ね備えており、今後も成長する流れは止まりそうにありません。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏