レキピオがピボット、注文から30分以内に届けてくれるデジタルコンビニ「QuickGet」を都内で開始——1.7億円の調達も

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「QuickGet」
Image credit: Recipio

これまでに2度、BRIDGE でも献立提案 AI アプリを提供するスタートアップとして紹介してきたレキピオが事業を大幅ピボットし、資金調達を明らかにした。

レキピオは16日、プレシリーズ A ラウンドで1.7億円の調達を発表した。このラウンドに参加したのは、UB Ventures、マネックスベンチャーズ、サイバーエージェント・キャピタル、FGN ABBALab、F Ventures、個人投資家の赤坂優氏、中川綾太郎氏、吉田浩一郎氏。レキピオにとっては、いずれもシードラウンドである、2018年10月の約1,000万円、2019年1月の4,200万円の調達に続くものだ。UB Ventures、サイバーエージェント・キャピタル(CAC)、F Ventures は過去ラウンドに続くフォローオン。

中華料理の名店「青山一品」の弁当も安価で購入できる。
Image credit: Recipio

また、レキピオは同日、デジタルコンビニ事業「QuickGetiOS / Android )」を正式ローンチした。東京の六本木や渋谷を中心に、モバイルアプリからのオーダーを受けて、一般的なコンビニが取り扱っているような、あらゆる商品を30分以内にデリバリする。スーパーや飲食店に代わり配達のみを代行する各種サービスなどと異なり、レキピオ自体が商品を仕入れているため、配送手数料を含めても市中のコンビニと変わらないくらい商品価格がリーズナブルなのが特徴。同社では今後、エリアの拡大を図る

QuickGet はβ版を2019年11月にリリース。都心部であってもコンビニが近くに無いエリアに住む人、高層階で忙しく仕事していてランチに出かけるのが億劫な人、また、新型コロナウイルスの感染拡大により自宅勤務やテレワークを余儀なくされた人などを中心に好評を博してきた。取扱商品は食料品や雑貨品をはじめ1,000点以上。レキピオは酒販免許を持っているため酒も頼める。注文者の年齢が確認できることを条件に、タバコも販売店での購入代行という形で届けてもらうことが可能だ。

市中のコンビニ店舗は全国に55,000軒超。東京都内だけで約7,300店舗ある。都内では、1店舗あたり約30万平方メートル(≒ 一辺550メートルで囲まれる四方)に存在する平均2,000人の消費者を相手にしている計算だ。全国的にならせば、1店舗あたり1,000人のお客を相手に、客単価600円程度を毎日売り上げるというのが、標準的なモデルである。QuickGet では配達をすることにより、商圏を拠点あたり半径3キロメートル程度にまで拡大することができる。単純ざっくり計算で、一拠点の商圏は従来コンビニの約90倍(≒  π × 3,000^2 / 550^2 )。この発想はカクヤスの商圏設定のコンセプトにも近いかもしれない。

<参考文献>

レキピオが QuickGet のベンチマークとしているのは、アメリカの goPuff だ。全米500都市でデジタルコンビニ事業を展開数 goPuff は、長らくステルスで事業を展開してきたため、同社の将来戦略や詳細については明らかになっていないが、配送手数料や都扱商品数などについても、QuickGet は多くのことについて goPuff を参考にしているとみられる。そんな goPuff は昨年8月にソフトバンク・ビジョン・ファンドから7億5,000万米ドルを調達、時価総額は最大で28億米ドルに上ることが報じられた

オンデマンド配達スタートアップ DoorDash も今年初めから全米1,800店舗のコンビニと提携したデリバリサービスを開始、先月にはデジタルコンビニ事業のローンチを発表し、全米8都市でサービスを開始した

2017年3月、SXSW でオースティンの街を歩いていた goPuff 3人娘。
Image credit: Masaru Ikeda

レキピオは商品を主に問屋から仕入れていて、メーカーとの取引はまだ無いとのことだが、以前、無人コンビニ「600」を取り上げた拙稿に書いたのと同様、商品を消費者に直接届けられることで、市中の小売チャネルでの POS などでは得られない詳細な購買データ、メーカーにとってはマーチャンダイジングやテストマーケティングの可能性が大きく広がる。自前の配送拠点から商品を届けるため、先般、「Chompy」の記事で書いたようなロジスティクスの最適化も可能だ。

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筆者の自宅やオフィスはサービスエリア外だったので、レキピオのオフィスで「QuickGet」を試させてもらった。注文から20分ほどで頼んだアイスクリームが届いた。
Image credit: Masaru Ikeda

筆者は数ヶ月前、脚をケガしてしまい、一時期歩行に困難を伴った。ネットスーパーで商品を届けてもらうことを試みたが、コロナ禍で外出をためらった消費者からの注文が殺到していた時期で、どの社のサービスも注文から商品を届けられるまで最短で1週間程度を要するという状態が続いた。フードデリバリもいくつか試したが、飲食店への代金に加え一対一で届けてもらう配送料が重畳され割高になるし、1日3食 UberEats というのも気が乗らない。QuickGet が数ヶ月前にあってほしかったというのが率直な印象だ。

レキピオは2017年9月の設立(当時の社名は TADAGENIC)。同社代表で同志社大学学生だった平塚登馬氏を筆頭に、京大・大阪など関西の学生を中心に始まったスタートアップだ。2017年のサイバーエージェント・ベンチャーズ(当時)による学生起業家向け選抜イベント「GATE」では、インフルエンサーマーケティングアプリ「TADAGENIC」で優勝。リクルートホールテディングスのアクセラレータ「TECH LAB PAAK」(2018年終了)の第11期参加を通じてサービスをピボットし、2018年に Recipio をローンチしていた。

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