台湾AppWorks(之初創投)、第20期・第21期合同デモデイを開催——23チームが登壇、最年少17歳の起業家も

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台湾のスタートアップアクセラレータ AppWorks(之初加速器)は15日、AppWorks Demo Day 2020 を開催した。新型コロナウイルスの感染拡大により、今年前半はデモデイを一時中断していたため、今回の AppWorks Demo Day 2020 では、前半と後半に展開された第20期・第21期チームの中から、AI/IoT 分野とブロックチェーン/仮想通貨分野の23チームが参加することになった。

AI をテーマにしたチームが最多、最年少起業家は17歳

23チームのうち、AI をテーマにしたチームが10チーム、IoT が5チーム、ブロックチェーン/仮想通貨が8チームで、香港、シンガポール、インドネシア、スウェーデン、グアテマラなどの国際的なチームが8チーム、Google、Microsoft、MediaTek(聯発科技)の上級幹部もいれば、社会人のチームもいた。AppWorks Accelerator(之初加速器)には、史上最年少の17歳の起業家をはじめ、成功した起業家が多数在籍している。

AppWorks Accelerator では現在、AI/IoT、ブロックチェーン/仮想通貨(Blockchain / Crypto)、東南アジア(Southeast Asia)の3つの頭文字をとり、「ABS」という3つの軸でスタートアップチームを募集している。第17期以来、起業家は東南アジアの経済成長に楽観的であることが推奨され、募集対象は AI/IoT とブロックチェーン/仮想通貨に限定されている。

Jamie Lin(林之晨)氏「ビジネスを始めるには、今が一番いい時期」

冒頭のスピーチで、AppWorks 会長兼パートナーの Jamie Lin(林之晨)氏は、次のように述べた。

過去10年間の衣食住、交通、娯楽のすべての変化は、私たちのスマートフォンから来ている。次の10年には、5G と IoT が再び世界を変えることになり、新しいエッジコンピューティングプラットフォーム「MEC」は、IoT の発展に追随して、より多くのデータを預け、機械学習とディープラーニングが大きく成長し、スタートアップがより多くの製品やサービスを生み出せるようになる。ブロックチェーン、仮想通貨、DeFi、DNA シーケンシング、クォンタムコンピューティングなどの分野で、モバイルが普及したときのように、非常に多くのテクノロジーと要素が今後10年間で大きな変化をもたらす。これは、大きな可能性があることを意味する。今ほど起業に適した時期は無い。

今年の AppWorks Accelerator では、第20期と第21期で合計52チーム82人の起業家を採択。構成は、AI/IoT を中心とした26チーム、ブロックチェーン/仮想通貨を中心とした13チーム、東南アジアを中心とした13チームだった。第20期は40%の起業家が複数回に及ぶ起業を経験、これまでで最も起業経験が豊富な回となった。第21期は66%の起業家が台湾以外の世界17カ国から参加した。

今年のデモデイに参加したチームは、業界や業種を越えて AI アプリケーションが花開き、目を引く革新的なアプリケーションが多数登場した。

顔認証で、従業員の出退勤管理を支援する Astra

台湾の Astra は、大企業が遠隔地や現場で働くパートタイム従業員の管理を支援する顔認証ソリューション「GoFace 顔認証タイムカードシステム」を開発。同社によると、日本では4人に1人がパートタイム従業員であり、正社員よりもパートタイム従業員の流動性や離職率が高く、企業がパートタイム従業員を効果的に管理することが難しいという。

今年4月にサービスを開始したところ、広告を出さない状態で、サービス開始前から日本やインドネシアを中心にすでにのべ約3,000人の従業員が利用。主な取引先には、NTT 東日本、不動産管理の合同産業、インドネシアのハイパーマーケット Pondok Indah などがあり、いずれも数千人の現場従業員を擁する企業だ。

血液がん免疫測定の AI 解析プラットフォームを開発した AHEAD Medicine

同じく台湾の AHEAD Medicine は、血液がん免疫測定のためのAI解析プラットフォームを開発した。このプラットフォームは、7日から14日かかっていた血液がん検査の時間を検査の即日結果を出すまで短縮でき、結果を待つ患者とその家族や友人の心理的苦痛を減らし、貴重な治療期間を短くできる。創設者の Andrea(王毓棻)氏にはがん病歴があり、その人生経験を起業家精神に変え、現在の共同研究者には UMPC(ピッツバーグ大学医療センター)や NTU(台湾大学医学部附設医院)などがある。

「BTS にもを使ってほしい」と願う17歳の CEO が立ち上げた Dance Clout

Dance Clout CEO の Jerry Chang(張杰)氏

AppWorks Accelerator 史上、最年少創業者というの記録を打ち立てた Dance Clout CEO の Jerry Chang(張杰)氏は、ステージ上でダンスを披露し、Dance Clout のチーム紹介を始めた。Dance Cloutは、AI 技術を使ってダンサーのコミュニティを構築することを目的としている。17歳の創業者は、高校ダンスクラブ「建中熱舞(台北市立建國高級中学熱門舞踏社)」に所属し、建國高級中学科学部(理系)に在籍する高校生だ。

Dance Cloutは、ユーザが自分のダンス動画をアップロードしたり、AI を使ってダンス動画を分析しプロ講師と比較、動きが正しいかどうかを確認できるようにすることで、ダンサーのコミュニティを構築することに注力している。起業家精神にあふれた Chang 氏は、将来、韓国のバンド BTS に Dance Clout の製品を使ってほしいと語った。

グローバルデジタル資産運用プラットフォームを構築する Steaker

Steaker のチームメンバー

台湾の Steaker は、AI を使って多様な投資戦略を統合し、顧客がより簡単にパッシブインカム(利子や配当など定額所得、不労所得)を生み出すためにクリプト資産を割り当てるのを支援する。。

クローズドベータ期間中、10セット以上の資産投資戦略を開発。30以上の AI(人工知能)/ML(機械学習)モデルをトレーニングし、数百の市場指標を追跡し、ロボットで平均 ARR(年間経常収益)23%で総資産約400万 USDT(米ドル連動型ステーブルコイン「テザー)を管理している。

IoT 領域の起業家の成果も劣らず

IoT 領域から今回のデモデイに登壇したチームも起業家精神に溢れていた。自動運転ソリューションを開発する台湾の iAuto(艾欧図科技)は、「2018-2019 ドバイ・ワールド自動運転交通チャレンジ(The Dubai World Challenge For Self-Driving Transport)」に参加し、New Startups Group で2位を獲得したほか、Taiwan Mobile(台湾大哥大)、Formosa Plastics Auto Transport(台塑汽車貨運)と共同で、5G ネットワークを組み合わせ、台湾の高齢者施設「長庚養生村」で運行される自動運転システムを開発した。これは、自動運転車の産業用・商業用アプリケーションを開発する、分野を横断した最初の事例だ。

また、Aiello の AI 音声 SaaS プラットフォームは、ホテル、ケータリング、観光などのサービス業界のバックエンド管理システムやオンラインデジタル音声サービスで利用できる。Aiello CEO の Vic 氏は、Google Home の出身で、ホテル、ケータリング、旅行サービス業界におけるスマートスピーカーの巨大な可能性を目の当たりにしたことから、起業を決意した。

WASAI Technology はチップ設計に特化し、DNA 解析に利用できる高速 AI チップを開発。医療分野出身の WASAI CEO Calvin 氏は、遺伝子とコンピューティング技術を通じて、市場で拡大する DNA シーケンシングの需要に応えたいと考えている。Calvin 氏は自らも遺伝性免疫疾患の患者であり、技術でより多くの命を救うことを望んでおり、より価値のある起業テーマだと思うと語った。

AI を授業や学習に活用したチーム

すべての学習者の効果を高めるために、教育や学習に AI を応用することは、今後の重要なトレンドであり、今回のデモデイではこれを起業のテーマに掲げたチームが多く見られた。

TUTEEMI のチームメンバー

たとえば、グアテマラの TUTEEMI は、さまざまな学習ニーズに対応する外国語の講師マッチングサービスを提供している。創設者の Camila Sáenz 氏は、台湾から9年間の奨学金を受け、大学から博士課程まで学んた。 台湾の美しい人や物を長い間経験してきた彼女は、起業を通じて台湾に恩返しをし、台湾の国際化、バイリンガル化のプロセスに貢献したいと考えている。

台湾の TeraThinker は、教育用ビッグデータ分析を使用して適応学習システムを確立した。Tera Thinker 共同創業者兼 CEO の Chunyou Yang(楊淳佑)氏は、台湾学生の12.3%が学力不足で、学生学習能力の M 型化(優等生と劣等生が多く、中間成績の学生が少ない。二極分化。)の速度や程度が他国よりもひどい点を指摘。Tera Thinker はこの問題を解決したいと考えている。

ブロックチェーンのイノベーションが、リッチな実用アプリを促進

AI 領域だけでなく、ブロックチェーンも AppWorks Accelerator の重要なテーマだ。今年のデモデイでは、実りある起業実績を持つ台湾のブロックチェーンスタートアップが多数登壇した。彼らは、ブロックチェーン応用分野をより多様なものにしようとしている。

ブロックチェーン技術でクラウドコンピューティング業界をディスラプトする Poseidon Network

Poseidon Network 創業者の Light 氏(愛称:小光、本名:林弘全)氏

台湾発の Poseidon Network は注目のブロックチェーンスタートアップだ。創業者の Light (愛称:小光、本名:林弘全)氏は、これまでに匿名サイトのやクラウドファンディングサイト「flyingV」を立ち上げるなど起業経験が豊富だ。Poseidon Network は、分散型でスケーラブルなブロックチェーンノードサービスで、クラウドサービス業界の変革を目指している。

Amazon、Microsoft、Google の集中型クラウドサービスと対照的に、Poseidon Network はあまり使われていない帯域幅、ストレージスペースを集めることで、分散型でスケーラブルなブロックチェーンノードサービスを推進する。コンピューティングパワー、IoT デバイス、5G 通信を組み合わせることで、フォグデバイスサービス(フォグデバイスサービス)が作成され、デバイス効率を最適化して収益を得る機会を一般の人に提供します。

現在、システム全体では、30カ国以上で2,000以上のノードをカバーし、1,000Gbps以上の集積帯域幅と 5PB(ペタバイト)のストレージを提供している。

NFT を活用したデジタルアセットソリューションを開発する Lootex

Lootex のチームメンバー

Lootex は NFT(非代替性トークン)技術を用いて、文化・クリエイティブ産業、ゲーム、IP 向けのブロックチェーンデジタルアセット(ゲーム仮想資産、デジタルコレクタブル)の開発のためのソリューションを提供している。現在、Lootex が作成したマーケットプレイスには11のブランドが登録済。興行収入以外の新たな収益源を生み出すためにゲームカードを作っている。

ブロックチェーンを学術認証に応用する Turing Certs

TuringCerts はブロックチェーンを利用して企業や組織の学術資格認証ソリューションを開発し、企業や組織の学術監査の時間とコストを削減する。現在、カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkely)、国立台湾大学、国立清華大学、国立交通大学などの全大学や一部学部で採用されている。

コロナ禍にかかわらず、AppWorks のエコシステムはるかに成長

デモデイに登壇した起業家らは、コロナ禍の混乱にもかかわらず、危機を成長の機会に変えるレジリエンスを発揮した。この特徴は、AppWorks のエコシステムに参加しているすべての起業家にも表れている。

2010年に AppWorks が AppWorks Accelerator を正式に開始して以来、エコシステムはこれまでにないほどのスピードで成長してきた。調達資金の総額、評価額の総額、年間収益はいずれも3桁台となり、前年の2倍以上の実績となった。これらはすべて過去最高であり、参加スタートアップの評価額合計は100億米ドルを突破するという重要なマイルストーンに達した。

<具体的な成果>

  • アクティブなスタートアップ数が395社、起業家数が1,331人に達した。
  • 全輩出スタートアップの年間収益合計が前年同期比162%増の2,329億ニュー台湾ドル(約8,530億円)に達した。
  • 全輩出スタートアップの従業員合計が73%増の1万7,359人に達した。
  • AppWorks エコシステム(全輩出スタートアップ)が調達した資金の総額は、年間成長率140%の683億ニュー台湾ドル(約2,500億円)に達した。
  • 全輩出スタートアップの評価額合計は3,203億ニュー台湾ドル(1兆1,735億円)で、初めて100億米ドルの大台を超え、昨年の今頃と比べ160%増に達した。

Jamie Lin 氏は成果を次のように指摘した。

Jamie Lin(林之晨)氏

6月には、バイクシェアリングプラットフォームの WeMo Scooter(威摩)がシリーズ A ラウンドの資金調達を完了し、カーネットワーク技術の研究開発に投資するために数億ニュー台湾ドル(日本円で数億円〜十数億円)を調達した。

8月には、オンラインショッピングのキャッシュバックプラットフォーム「ShopBack」がベトナムで正式にサービスを開始し、これまでに80万人以上のベトナム人ユーザを獲得した。 40億ドン以上のキャッシュリターンを得て市場を9カ国に拡大し、ユーザ数は2,000万人を超えた

9月には医療技術スタートアップの iWeecare(愛微科)がプレシリーズ A のエクステンションラウンドで240万米ドルを調達した。同社の製品「Temp Pal」が、今年の新型コロナウイルス感染拡大予防と治療に重要な役割を果たし、台湾、日本、タイ、アイルランドなど世界の病院システムに導入された。

猛威を振るう世界的な流行の下、AppWorks エコシステムの全員がこのような成果を共に出せたことはさらに称賛に値する。

過去10年を振り返ると、AppWorks が指導してきた起業家らは、「20マイル行進(編注:好不調に関わらず、毎年一定のペースで成長する意)」という規律を守り、混沌の中にチャンスを求め、変化の中に成長を求めてきた。この巨大な車は高速稼働期に入っており、今後、台湾と東南アジアのコミュニティを結びつけ、大東南アジアのデジタル共栄圏を構築するプロセスを加速させると期待している。

【原文】

【via TechOrange】 @TechOrange