国慶節休日を経て、回復への兆しを見せ始めた中国のオンライン旅行業界

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今年1月、成都から上海へのフライトに搭乗する乗客ら
Image credit: TechNode/Eliza Gkritsi

旅行や他の消費に拍車をかけるための「ゴールデンウィーク」に位置づけられた、中国の国慶節休日が8日に終わった。今年初めからの新型コロナウイルス感染拡大でボロボロになった観光業界が、元の状態に戻るかどうかの前哨戦として、今年の国慶節休日は特に注目された。

国内旅行への転換

中国人観光客は他国に比べてウイルスの心配は少ないかもしれないが、政府や消費者自身が海外旅行に慎重な姿勢を崩していなかった。

  • 国慶節休日の旅行は近年、中国人観光客が海外旅行に出かけるための時間として見られていたのに対し、今年は主に国内旅行にとって代わられた。
  • 去年の国慶節休日では、700万人以上が海外旅行に出かけた。今年は査証の適用や検疫条件のさまざまな制限から、海外旅行は非現実的なものとなった。
  • 国内旅行へ集中したことで、2019年上半期収入のうち海外旅行が約35%を占めた中国最大のオンライン旅行プラットホーム「Trip.com(携程)」にとっては、完全な需要回復をさらに遅らせる方向に作用するかもしれない。
  • 短期旅行の需要が増え、余暇を楽しむ人のうちパッケージツアーや混雑した公共交通機関への露出を避けようとする人が増えたため、自ら車を運転して出かける観光が増加した。
  • この変化は、国慶節休日期間中のレンタカー事業を後押しした。Trip.com は、同プラットフォーム上での自動車レンタル日数が前年比50%上昇した、と TechNode への声明で述べた。レンタカー1台あたりの平均支出は2,000人民元を超えた。自ら車を運転して訪問する観光客には、中国南西部の雲南省や南部の海南省が人気を博した。

旅行プラットフォーム間の競争

  • 国内観光へのシフトは、中国最大のオンライン旅行プラットホーム Trip.com に重くのしかかった。同社は、国内旅行で Alibaba (阿里巴巴)傘下の「Fliggy(飛猪)」や Meituan(美団)との競争が激化する中、海外旅行事業の成長に注力してきた。
  • Trip.com は2018年、5年以内に海外旅行事業で総収益の40%~50%を目指すとしていた
    Trip.com は、今年第2四半期の収益が前年同期比64%減と急落したことを報告しており、第3四半期の収益は前年同期比50%前後の減少になると予想している
  • 中国のオンライン旅行業界は、世界で最も人が移動する春節に拡散した新型コロナウイルスの打撃を最もひどく受けた業界の一つだ。

正常回復への道のり

昨年末にコロナウイルスが初めて発生した中国では、政府のウイルス拡散抑制策が概ね有効であったことから、早期の景気回復が期待されていたが、世界的な感染率の高止まりが続いており、その影響はまだまだ続くものと思われる。しかし、世界的な感染率の高止まりが続いているため、流行の影響は長引くと予想されている。

  • 中国文化和旅遊部(日本の観光庁に相当)によると、中国の観光客は、8日間の国慶節休日で6億9,370万人が国内旅行し、観光業に4,666億人民元(約7.3兆円)の収入をもたらした。国慶節休日は中秋節と重なったため、今年は1日延長された。
  • 今年の国内旅行件数は、昨年の国慶節休日期間中(7日間)のそれの7億8,200万件(観光業収入ベースで約6,500億人民元=約10.2兆円)の約8割にとどまった。
  • 今年の国慶節休日の観光業収入は、昨年のそれの約7割に達した。前年比8割減を記録した清明節(4月4日)からは劇的な回復ぶりである。
  • 中国の観光事業当局は、2020年には中国観光事業の収入だけでなく、観光客数が半減すると予想している
  • 政府当局の規制は緩和されつつあるが、まだ排除されてはいない。北京の紫禁城のような観光地は入場に先立ちオンライン予約が求められ、国慶節休日期間中は収容人数75%の制限で運用された。上海などの自治体は、学生やその家族が旅行を控えるよう奨した。都市からの旅行客は14日間の隔離措置を求められたため、家族旅行はもとより、短距離旅行についても事実上、計画を取りやめる人が増えた。

政府からの新たな規制に直面する旅行業界

新型コロナウイルス感染拡大による旅行需要の減少に加え、中国の観光業界は、市場規制を強化しつつある政府の新しい挑戦に直面している。

  • オンライン旅行プラットホームや旅行代理店を規制する中国の最初の法律は10月1日に発効した。この法律は、価格吊り上げのためのユーザターゲティングやユーザのマイナス評価削除など、不公正な商習慣でビッグデータや他の新技術の乱用されるのを禁止する規則などからなる。
  • Trip.com や Alibaba の支援を受けた Fliggy など中国の大手オンライン旅行プラットフォームは、ユーザデータを分析することで、同じ商品やサービスに対してより多くの支払をすると考えられる顧客に対して高い価格を請求しているとして、消費者らから非難されてきた。両社はこの疑惑を否定している。
  • 価格操作が一般的なオンライン旅行市場でのこのような慣行を鎮圧することが期待されている。また、配車サービスや e コマースなど他分野でも同様の手口が考えられ、その手本となる可能性もある。
  • これらの規則は短期的な冷却効果が期待されるのに加え、長期的なメリットがあればユーザのリテンション効果の改善が期待される。ある業界アナリストは新華社に対し、これらの規則がなければ、収益を20%成長させることができる慣行を取り除く理由はほとんどなかったと語った。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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