「独身の日」を前に宅配業者がスト、東南アジアから参入の配送業者排除の動きなど——中国テックシーン・アップデート

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Image credit: TechNode/Cassidy McDonald

中国の物流業界にとっては、「光棍節(独身の日)」に向けて業界が盛り上がっている矢先に厄介な一週間となった。全国各地で配送ドライバーのストライキが発生したとの報道があったからだ。Alibaba(阿里巴巴)の支援を受ける Yunda Express(韻達快逓)は、中国市場に急速に進出しつつある東南アジアのライバル企業に対するボイコットに参加した。一方で、Alibaba 傘下の生鮮食品小売 Yiguo(易果)は倒産した。

中国の EC 小売市場は、商品、選択肢、ビジネスモデル、急速に変化するコンテンツなどが氾濫している。本稿では、10月22日〜28日までの一週間に起きた中国のオンライン小売市場について知っておくべきことを紹介する。

独身の日を前に、宅配業者が抗議デモ

中国の物流会社は先週、ソーシャルメディア上で労働争議の報告が広く伝えられる中、配送業者からの反発に直面している。ストライキは、STO Express(申通快逓)、YTO Express(円通速逓)、ZTO Express(中通快逓)、Best Express(百世快逓)、Yunda Express など、国内の主要な宅配業者数社に影響を与えたと報じられている。報道によると、これらの配送業者の社名の2文字目にちなんで「四通一達」と呼ばれている5社の業務は、二級都市や三級都市で大幅に妨げられているという。

中国のマイクロブログプラットフォーム「Weibo(微博)」のハッシュタグ「#快逓罷工#(配達人ストライキ)」は1,300万ビューを記録し、13,000人以上の Weibo ユーザーが議論に参加した。顧客はまた、Douban(豆瓣)や Baidu Tieba(百度貼吧)のような他のソーシャルプラットフォームにも殺到し、小包配達の遅延に対する不満を表明した。

中国の労働 NGO である China Labour Bulletin(中国労工通訊)のストライキマップによると、福建省東部の福州と上海で2回の配送ドライバーのストライキが10月19日に行われた。マップによると、今年は少なくとも25回の宅配便のストライキがあった。労働者は、賃金の引き下げや賃金の遅延に抗議している。

ストライキによってもたらされた不確実性は、EC 業界が11月11日の独身の日のプロモーション前、今年の最も忙しいショッピングシーズンに時期を合わせるように、EC プラットフォームの注文処理能力に対する懸念を提起した。複数の宅配業者はストライキの噂を否定し、地元メディアによると、オフラインの流通センターは「通常通りに営業している」という。(Lieyunwang.com=猪雲

東南アジア参入者へのボイコット

中国の物流会社 Yunda Express は、オフラインのフランチャイズ加盟店のすべてが、東南アジアから新規参入した J&T Express(極兎速逓)に協業することを禁止した。10月19日に公開された声明によると、J&T Express に代わって小包を受け取ることも配送することも禁止されていると、地元メディアが報じた。処理中の注文は、送信者に返却されるか、受信者に受取を要求される。ルールに違反したフランチャイズ加盟店には5,000人民元(約78,000円)以下の罰金が科せられる。YTO Express や STO Express のような地元競合が同様の規則を制定した直後、Yunda Express もその動きに追随した。

中国の物流の広大さを考えると、ほとんどの中国の宅配便会社は、規模の経済を実現するためにフランチャイズベースのモデルで運営されている。フランチャイズ・パートナーシップは、技術的にはフランチャイズ代理店が他の宅配業者と協力することを禁止する独占契約であるが、フランチャイズ加盟店が複数の物流ブランドと同時に協業することは一般的な慣行である。

Yunda は、独占的な運営ルールを再設定することで、3月から中国で積極的に営業展開している J&T Express との競合を防いでいる。J&T Express は補助金を出したり、競合の既存の流通網を活用したりしてシェアを奪い、「Network Squatting(ネットワーク居座り)」と呼ばれている。

J&T Express は2015年、Oppo Indonesia 創業者 の Li Jie(李杰氏)が、スマートフォンブランド「OPPO」や「VIVO」を手掛ける中国の億万長者起業家で Pinduoduo の主要投資家でもある Duan Yongping(段永平)氏からの資金援助を受けて設立した。中国では、J&T Express は Pinduoduo(拼多多)、Suning.com(蘇寧)、Douyin(抖音)などの EC プレイヤーと協業している。(Southern Metropolis Daily=南都日報

新たな生鮮食品プロバイダの犠牲者

かつて中国の著名な生鮮食品 EC プラットフォームであった Yiguo は、破産と組織再編の手続きを進めており、この分野の著名なプレーヤーがまた一人倒れたことを示している。地元メディアによると、今年6月の時点で、同社は23億人民元(約358.3億円)の負債を抱え、純資産は11億人民元(約171.3億円)を保有しているという。

Yiguo は Alibaba 傘下の生鮮食品ブランドで、関連会社を通じて35%以上の株式を保有している。Yiguo の直近ラウンドでの3億米ドルの資金調達は、2017年に Alibaba 傘下の Tmall(天猫)からもたらされた。

Alibaba との提携は、Tmall の生鮮食品事業である「Tmall Supermarket Fresh(天猫生鮮超市)」からのトラフィック支援のおかげで、Yiguo の総合的商品価値を倍増させるのに役立った。しかし、Alibaba の支援に過度に依存したことで、同社は外部の変化に弱くなっていた。2018年、Alibaba は Tmall Supermarket Fresh の 運営を Yiguo から自社の小売店チェーンFreshippo(盒馬鮮生)に引き渡すことを発表した。このシフトは、2017年に Tmall からの注文の90%以上を引き出していた Yiguo の事業に大きな打撃を与えた。それ以来、Yiguo は混乱状況にあった。

競合の Taojiji(淘集集)の破産からわずか10ヶ月後、Yiguo は今年、コロナ禍のロックダウン期間からの再起にもかかわらず、生鮮食品のEC プラットフォームにとって、新たな教訓となった。(Tencent=騰訊)

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【via TechNode】 @technodechina

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