“優しいSNS”目指す実名制「Telapath」はアンチFacebookの選択肢となるか

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Image Credit : Telepath

ピックアップ:Telepath is a new, kinder social network. But is the internet ready to be nice?

ニュースサマリー:9月24日、元ベンチャーキャピタリストで実業家のMarc Bodnick氏は実名制SNS「Telepath」のローンチを発表した。同プロダクトは個人の興味に応じたネットワーク(コミュニティー)に参加し、交流を図るというもので一般的なSNSと変わりはない。DiscordやFacebookと使い勝手は似ており、特徴は完全実名制(登録時に氏名の認証がある)を採用しているところだ。

話題のポイント:Telepathを創業したMarc Bodnick氏はベンチャーキャピタル「Elevation Partners」の共同創業者としてご存知の方もいらっしゃるかもしれません。Facebookに対し2億1000万ドル、Yelpに対し1億ドルの投資をIPO前に実行するなど、現在のIT市場を創り上げてきた存在でもありました。

そんな同氏がリリースしたTelepathは、上述したように完全実名制のいわば「優しいSNS」を目指しています。同氏はツイッターで以下のようなコミュニティーガイドラインを発表し、中にはLGBTQなどの表記も受けられることが分かります。こうしたガイドラインを違反した場合、どのような対処がなされるのか不明です。加えて、実名にしたからといえ完全な健全性を本当に保てるかどうかについては、現在のFacebookを見ても疑問が残ります。

Image Credit : Telepath

Bloomberg等で公開されている(ツイッター下図)TelapathのUIを見る限り、特に今までよくあるSNSと変化がないように感じます。また、実名制であるという点も例えばQ&AサイトのQuoraなどが既に存在しています。実は創業者のMarc氏は2011年頃から2016年頃まで、Quoraに参画していた経歴を持っています。そのため、Quoraのような実名制特有のコミュニティー性を引き継ぎつつも、QAのような固定ページ化されるものとせず、さらにツイッターのように「流れ」のあるSNSを目指しているのだと思います。

同氏はツイッターで、実名制SNSの重要なフィロソフィーに「Paradox of Torelance(寛容のパラドックス)」を挙げています。これには、『寛容な社会を維持するためには、不寛容性がどこかに必要だ』という意味が込められています。つまり、誰もが自由に楽しめる寛容なSNSであるためには、時に訪れるフェイクニュースやヘイトスピーチに対して不寛容な社会が存在しなければならないということを示しています。

FacebookやTwitterでは煽りや炎上、最近では選挙戦に関連したフェイクニュースが多数タイムラインに流れます。こうした従来のSNSにアンチテーゼをかけるように、実名性を軸にした新しいSNSがTelepathです。使い勝手はFacebookに似ていますが、必ず興味のあるネットワーク(コミュニティ)に参加しなければならない、DiscordやMixiのような興味ベースのSNSとなっています。

また、現在はコミュニティの質を担保するため招待のみの限定となっています。人々の不信感を煽って荒れたコミュニティでありながら、ユーザーを集めた「Secret」や「YikYak」などはそのユーザー数に任せて大型調達を重ねてきましたが、Telepathはさすがにその道を辿ることはなさそうです。こういった「アンチFacebook」のようなコンセプトは今まで何度か出てきましたが、「Path」以外のサービスでうまくいった事例を見ていません。

共同執筆:「.HUMANS」代表取締役、福家隆氏

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