Ant Group(螞蟻集団)の上海・香港ダブルIPO延期、その背景とこれまでの動きを追う

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Image credit: Ant Group(螞蟻集団)

Ant Group(螞蟻集団)の340億米ドルを調達する上海と香港での上場停止は、親会社 Alibaba Group(阿里巴巴集団)創業者 Jack Ma(馬雲)氏の最近の大胆な発言に加えて、規制当局がリスクに対して寛容ではなくなったことが重なった結果かもしれない。

情報筋が、TechNode(動点科技)に語ったことは次の通りだ。

これまでの出来事

  • 10月25日、Ant Group が大規模なダブル市場 IPO を果たすまで2週間を切っている段階で、Jack Ma 氏は、上海で中国のトップ金融関係者や規制当局者集団に対し、金融業界は過剰に規制されていると語った。
  • 中国には「システムがない」ため、中国には「システミックリスクがない」と述べ、中国で最も知名度の高いテック企業の億万長者は、金融業界のリスクを最小化するために努力してきた規制当局者の集団にそう語った。
  • 中国には「惰性」があり、「革新者は間違いを犯さなければならない」とし、人々が何ができて何ができないかを規制する「文書」が多すぎると Ma 氏は述べた。
  • Ant Group の香港デビューまであと3日となった11月2日、同社会長兼 CEO の Eric Jing(井賢棟)氏は、北京で中国人民銀行、中国証券監督管理委員会、外国為替規制当局との会議に召集された。
  • 同社はこの会議が「規制当局との話し合い」だとしているが、それ以上の詳細は明らかにしていない。「Ant Group は会議の意見を深く実行することを約束している」と述べた。
  • 同日、中国の保険規制当局は、同社グループの事業の大部分を占めるマイクロファイナンスに関する新たな規則を発表し、担保要件を強化した。ブルームバーグの報道によると、Ant Group の融資事業に対する資本要件が規制強化の焦点となっているという。
  • 新規則では、Ant Group は融資の少なくとも30%を自社のバランスシートから調達することを要求されることになる。Ant Group が現在ローンの2%しか資金調達していないため、このルールが適用されると多くのローンが非準拠となるだろう。
  • 非公開の会議が行われた翌日の11月3日遅く、上海証券取引所は、Ant Group が運営する規制環境に「重大な変化」があったとして、Ant Group の上海証券取引所への上場を突然中止した
  • 同社は、上海証券取引所の発表からわずか数時間後に、規制当局を安心させるため声明を発表した。
  • 同社は「課題を克服」し、「規制を受け入れ、安定したイノベーションを実現する」という原則を掲げ、規制当局による上場に関する更なる決定を待っていると述べている。
  • また、Ant Group は、香港上場の一時停止は、上海の上場停止の直接的な結果であることを明らかにした。

兆候を無視

  • TechNode が話を聞いた専門家によると、上海での Ma 氏の演説は、Ant Group と中国のトップ金融監視機関との間の長い闘争の転機に過ぎなかったという。
  • 中国の規制当局は2017年から金融業界のリスク回避に取り組んでおり、Ant Group はこのキャンペーンの重要なターゲットとなっている。「これは本当に、しばらく前から醸成されていた何かの集大成だ」と、調査会社 Trivium の共同創業者 Andrew Polk 氏 は語った。
  • 金融システムのリスクを軽減することは、貧困の緩和や公害の削減とともに、Xí Jìnpíng(習近平)氏の最優先政策の一つであると Polk 氏は言う。
  • 過去1年間で、融資、支払い、流動性要件など、フィンテック企業への監視を強化することを目的とした数十の新規制が制定されている。
  • 中国人民銀行は、Alipay(支付宝)と Wechat Pay(微信支付)のデジタル決済分野での優位性について、独占禁止法の調査を開始しようとしていると報じられている
  • 中国人民銀行は、Ma 氏の演説の数日前にマンデートを更新し、デジタル決済プロバイダと「重要な金融企業」に特別な言及をするようになった。これまでのマンデートにはなかった文言だ。
  • 「今まで規制を受けてこなかった業界は、これを好まない」と Polk 氏は述べている。
  • Ant Group と Webank(微衆銀行)が比較的緩和された規制環境の中で事実上の銀行へと成長することが許されていることを、伝統的な銀行は好ましく思っていない。彼らは規制当局に対し、フィンテック企業に対する監視を強化するよう働きかけてきたと、ある情報筋は TechNode に語っている。
  • 中国銀行保険監督管理委員会は、Ant Group と協業して融資を行うことを貸金業者に思い止まらせている。Ant Group が、2日に発表された規制案で定めた資本要件を満たしていないからだ。
  • 上場目論見書によると、Ant Group のクレジットテック事業は収益の40%近くをもたらしている。
  • 同時に、中国人民銀行は、デジタル決済分野で伝統的な銀行の競争分野を平準化することを目指して、デジタル人民元に取り組んでいる、と情報筋は TechNode に語った。

派手な振る舞いは命取りに

  • このような環境の中で、規制当局の統制を強化しようとする努力を拒否する Ma 氏の大胆な行動は、ペダルを踏み間違えた。Alibaba 会長のカルト的な性格は、儒教的価値観に傾倒する従来の中国のリーダーシップとは相容れない。
  • 圧力をかけられた場合、中国のテック企業家は、過去の出来事が示すように、敬意を示せば、通常はリーダーに従うことが期待される。
  • 2018年には、Bytedance(字節跳動)CEO の Zhang Yiming(張一鳴)氏は、人気ニュース収集アプリ「Neihan Duanzi(内涵段子)」を規制当局が取り締まった後、「中核的な社会主義的価値観」に逆らったことについて謝罪を発表した。
  • しかし、2日の会議は、明らかに Ant Group の上場停止へと動いた規制当局をなだめることはできなかった。「Ant Group は、しょんぼりして出てきた」と Polk 氏は言う。
  • 専門家は、上場停止が恒久的なものになる可能性は低いとしているが、同社が中国当局との合意に至るまでにどれだけの時間がかかるかは不明だとしている。
  • Ant Group の評価額も、規制当局にとって重要な検討事項となっている。Ant Group は10月30日、投資家が同社の上海上場に2.8兆米ドル相当の注文を出したと発表したが、これは市場投機を抑制を目指す当局を困惑させる行動だ。
  • ここ数週間、中国の仮想通貨取引所の幹部の逮捕が報道されるなど、仮想通貨の幹部に対する取り締まりが展開されてきた。「すべての動きは、リスクを取りたくないという政策に集約される」と Polk 氏は述べた。

【via TechNode】 @technodechina

【原文】