スタートアップとau IKEBUKUROが挑戦「スマホ除菌」共創の裏側 Vol.2

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは、毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

感染症拡大の問題はKDDIの販売店に幅広く混乱をもたらしました。訪問された方々が試した端末の清掃問題や来店時の体温チェック。これらを店舗スタッフが手動で対応するには限界があります。この課題をスタートアップとの協業で解決しようというのがau IKEBUKURO店で実現した、感染症拡大を防止するためのスタートアップ共創事例です。

前回はKDDIでのきっかけづくりと、Ideinのケーススタディをお届けしました。ここからは引き続き「MUGENLABO支援プログラム 2020」に参加したスタートアップ2社の話題をお送りします。

スマホを除菌せよ・・GREEN UTILITYの除菌ケース

ずらりと並ぶスマートフォンやフィーチャーフォンなどの端末の数々。特にタッチ操作の感度や反応が重要なスマホにとって、実機に触れることは購入の決め手になるだけに「端末の清掃問題」は店舗にとって大きな課題でした。清掃しようにも、いつどこでどれに触ったのかを正確に把握しなければ、店舗スタッフはずっと清掃し続けなければいけません。この課題にチャレンジしたのがGREEN UTILITYとAWLの2社です。

新型コロナ対策として、au店舗スタッフのみなさんはアルコールタオルでデモ機などの除菌をしていたそうなのですが、人気店や広い店舗ですと常に清掃対応に追われる事態になっていました。そこでアイデアとして出てきたのがUV紫外線による除菌です。紫外線の照射をすれば自動的に除菌可能となりますので、確実かつ除菌作業の効率化が可能になります(GREEN UTILITY代表取締役 李展飛さん)

GREEN UTILITYはmocha(モチャ)というモバイルバッテリーシェアリングサービスを2018年頃から展開しているスタートアップです。 以前、白馬村で実施された共創プロジェクトでKDDIと協業し、村内にモバイルバッテリーの充電ステーションを設置するという取り組みから継続的に交流が生まれ、今回のプログラム参加へとつながったそうです。きっかけは今年7月、今回の共創の橋渡し役となったKDDIビジネスインキュベーション推進部とのミーティングで店舗における除菌問題を知り、除菌ケース開発へと乗り出します。

除菌ケースの利用風景

驚くのはここからの開発スピードです。なんと1カ月という短期間で実際に店舗で使える品質と数量の除菌ケースを開発することに成功します。李さんは経緯をこう説明してくれました。

元々、モバイルバッテリーのシェアリングサービスをやっていたこともあって、多くの人が触れることから除菌については課題感を持っていた、というのがあります。また、弊社がこれまでバッテリー開発などで培ってきた技術ノウハウと中国・深圳を中心とするサプライチェーンのネットワークが短期間での納期を実現してくれています(GREEN UTILITY 李さん)

フラッグシップの店舗でショーケースとして展示されるだけでなく、実際に使われているという実用性もあって、現在このソリューションについては多くの問い合わせが集まっているそうです。注文という形での反響もさることながら、李さんたちが培ってきた技術とサプライチェーンの「価値」を改めて確認できたことが大きかったと語っていました。

どれに触ったのか?を探せ・・AWL(アウル)の接触検知ソリューション

接触検知ソリューションの写真

GREEN UTILITYが開発した除菌ケースを利用して、端末を自動的に、かつ効率的に清掃できるようになりました。しかし、もう一つの課題として幅広い店内に展示されている端末の「どれを綺麗にするのか」という問題が残っています。ここにAIを活用したカメラソリューションを提供したのがAWLです。

デモ端末の展示台に設置したAIカメラがお客様の手を検出し、触れた端末をモニター上に色を変えて示すことで、スタッフに該当端末の消毒を促すソリューションを提供しました。これまでは15分に一回程度、スタッフがすべての端末を消毒していたそうなのですが、これによって触れた端末のみを消毒することが可能となりました(AWL取締役CTO 土田安紘さん)

きっかけはKDDI ∞ Laboが主催したイベントに、AWL代表取締役の北出宗治さんが登壇したことから始まります。auショップで発生していた感染症拡大の防止策は急務で、この話を聞いた北出さんたちはAIカメラを使ったいくつかのソリューションを提案。今回の接触検知は、自社で持っているノウハウをベースに数週間で導入を実現しました。こちらもきっかけから導入まで2カ月程度というスピード感です。

AWLはこれまでも大企業との協業・連携で成長してきた背景があるそうです。元々、AI関連の受託開発を手がけていた企業からスタートし、その後、北海道で幅広く展開するドラッグストアチェーン「サツドラホールディングス」と資本提携を結びます。開発拠点を北海道大学内に開設するなどして、サツドラのグループ会社の位置付けで小売における画像解析などを活用した実証実験を続けていました。

こうして、AWLでは店舗にある既存の監視カメラなどのデバイスに、自社で開発したAIソリューションを組み合わせることで空間を分析するサービスを提供しています。例えば店舗の防犯であったり、レジ前の行列がどれぐらい続いているのか、陳列棚の前に立ち止まる人々の様子など、リアル空間を分析することで、その後の来店や需要の予測に役立てる、といった具合です。実際の店舗での実証実験を繰り返したことが同社の強みになっています。

こういった経緯から独自の技術と実績を積み上げることになったAWLに大企業との協業メリットを聞いたところ、やはりスピードを挙げられていました。また、AWLは今年2月に8.1億円の増資を実施して共同通信デジタルやサイバーエージェント、凸版印刷などの大手と資本提携を結んでいます。

恐らく大企業さんも一度は何かしら自分たちだけでやろうという方向性を検討されていると思います。ただ、自分たちだけでやっていくには(AI領域は)非常に難しい面があるということはよくお話に挙がりますね。そういう観点で検討された結果、私たちと一緒にやりましょうという判断をされるケースが多いと認識しています。私たちは応用範囲の広いリアル空間を分析するソリューション、アプリケーションを開発できるのですが、自分たちだけでは社会実装ってなかなか進まないんですよね。(今回の増資についても)大手の方々と組むことでここを加速させていきたい、という方向性を持っています(AWL 土田さん)

なお、AWLで今回、取材に対応してくれた土田さんは弁理士ということもあり、知財戦略もしっかりと対応されていたのは細かい点ですが注目ポイントでした。

スタートアップにとって知財はプライオリティの設定が難しく、早すぎては無駄なリソースを割くことになりますし、遅すぎるとどこで穴を突かれるかわかりません。特にAWLのような協業・提携戦略を進める上では重要な視点になるでしょう。

au IKEBUKUROを舞台としたスタートアップとKDDIの共創ストーリー、最後は連続起業家として次のチャレンジを仕掛けるプレースホルダの話題をお届けいたします。

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