タイムラインアルゴリズムからの脱却とパーソナルメディアの未来(前編)【ゲスト寄稿】

濱本至氏

本稿は、ニュースレター配信サービス「theLetter」を運営する OutNow 代表取締役の濱本至氏による寄稿。OutNow は、Open Network Lab のシードアクセラレータ第21期に採択された。

濱本氏は、神戸大学在学中に位置情報 SNS アプリ「Colony Tale」を友人と開発・リリース。2016年からリッチメディアで、美容アプリ「fem」のリリースや美容悩みメディア「スキンケア大学」のマーケティングに従事した。フリーランスとして独立後は、SNS ディープリンク作成ツール「Link OutNow」、ビートメーカーとラッパーのためのマーケットプレイス「Beat Store」、作家志望者が作品のフィードバックをもらえるサービス「feedback sauna」などをリリースしている。


こんにちは。ニュースレター配信サービスの theLetter を運営している濱本至(@itarumusic)です。

テキストブログサービスや個人のマネタイズについてリサーチしている中で、海外ではタイムラインでのコンテンツマッチングアルゴリズムから脱却し、ファンや読者と直接繋がるトレンドにあることを知りました。

今回はそういったトレンドの渦中にあるサービスについて紹介しつつ、タイムラインアルゴリズムからの脱却と、パーソナルメディアの未来について考察します。

Image credit: Pixabay

ファンや読者と直接繋がる

EC 業界は Amazon などの巨大なマーケットプレイスがあるにも関わらず、Shopify や BASE など多くのネットショップ立ち上げサービスが成長してきました。

その背景には、SNS で誰もが発信力を持てるようになったこと、商品のコモディティ化の速度が上がり独自のブランドストーリーを持つ必要性が大きくなったことなどがあると思います。

ネット上のテキストメディアの世界においても、ここ 10 年間の Facebook フェイクニュース問題や、広告モデルから直接課金モデルへの転換トレンドを受け、EC 業界と似た変化がグローバルで起きつつあります。

読者とコンテンツのマッチングアルゴリズムに投資する Medium に対し、誰もがメールアドレスを収集でき、読者と直接繋がれるニュースレターサービスの Substack が生まれています。タイムライン上でのコンテンツマッチングアルゴリズムに依存せず、自分だけのファンや読者を集め、独自のコミュニティを構築していけるサービスが次々に成長しています。

そういったサービスは、広告モデルのサービスと比べ、ニッチな領域と相性が良く、個性や情熱をどんどんマネタイズしていける社会になると、Substack に投資している Andreessen Horowiz の「The Passion Economy and the Future of Work」でも伝えています。

<関連記事>

タイムライン以外の顧客接点をつくる

では、どういったサービスがグローバルで生まれてきているのでしょうか?テキストコンテンツにおけるタイムライン以外での顧客接点としては、メール(ニュースレター)、チャットサービス、SMS があります。

それぞれのサービスについてご説明していきます。

メール(ニュースレター)

英語圏を中心に、多くのニュースレターメディアが生まれています。

メディア各社がスマホシフトの際に、広告単価を決めるプラットフォームという立場を取れず、SNS やニュースキュレーションアプリを通してしか顧客接点を取れなくなった事を背景に、顧客である読者と直接の関係を結ぶ手段としてニュースレターが流行してきました。

Image credit: Online Journalism Awards

アメリカではインターネットメディアで最も栄誉ある Online Journalism Awards にも Excellence in Newsletters というニュースレター部門が新設され、ファイナリストには Washington Post や New York Times などの大手メディアの他にも、ニュースレターメディアとして急成長中の Axios、Substack で運営されている Popular Information が選ばれています。

そういった流れからも、個人がニュースレターメディアを立ち上げられるサービスの流行が分かります。

どんなサービスがあるか、ご紹介していきます。

TinyLetter by Mailchimp

「TinyLetter」
Image credit: MailChimp

Substack が生まれたのは 2017年ですが、ニュースレターをシンプルな UI で執筆・発信できるサービスは他にも多くあり、2010年からすでに始まっていました。個人向けのニュースレターサービスの TinyLetter です。

ブログサービスの CMS を利用するように、ニュースレターを簡単な UI で発信できるサービスは当時斬新で、立ち上げ約 1 年後に老舗のメールマーケティングツール Mailchimp に買収されました。

TinyLetter は2015年時点で14万以上のアカウントがあり、合計1,400万人の購読者にニュースレターを送っていました。

しかしながら、TinyLetter は Mailchimp の入り口的な立ち位置のサービスとなり、5,000人以上の購読者が集まれば Mailchimp への移行を促され、直接課金の機能が実装されることもなく、ユーザによる Medium や Substack への移行が進んできたようです。

Ghost

「Ghost」
Image credit: Ghost

2013年にクラウドファンディング Kickstarter でのキャンペーンで始まった非営利団体によるオープンソースのニュースレターサービス Ghost は、カスタムドメインやページの見た目のカスタムができたりと、ブログツールの WordPress のような自由度があります。

そして、有料のニュースレターを発信することも可能です。

購読者数の規模に応じてプランがあり、月額の利用料金は $36〜$249 となっています。累計250万以上のインストールがあります。

Revue

「Revue」
Image credit: Revue

2015年に設立され、複数人での編集や分析に強い Revue は、Substack の生まれる前の2016年時点で2万人以上の利用者がいました。

特徴としては企業アカウントが比較的多い事が挙げられ、Vox Media の The Interface や、VentureBeat の Daily Roundup などは Revue 経由で配信されています。

Image credit: Revue

Ghost と同じく有料のニュースレターを発行可能です。

ビジネスモデルは、購読者50人までは無料で、以降は購読者数に応じて月額が上がっていくサブスクリプションモデルです。

Buttondown

「Buttondown」
Image credit: Buttodown

2017年に生まれた Buttondown は、1人の個人デベロッパによって開発されたサービスです。

Substack よりも分析ツールや各種 API などのツールが拡充していますが、Web 記事のアーカイブページの UI などは他サービスに劣る印象を受けます。

有料のニュースレターの売上に対して手数料はなく、購読者1,000人ごとに月額 $5 がかかります。

ちなみに Revue や Buttondown は、Substack のピッチ資料の競合ページにも記載されています。

Image credit: Substack

Substack

「Substack」
Image credit: Substack

Substack は Y Combinator を卒業した後、Andressen Horowiz から資金調達した、勢いのあるサービスです。

Axios 記事によると、Substack で運営される有料ニュースレター全体の有料購読者は25万人以上で、上位 10 名のライター達の年間売上は 700 万ドルにもなるそうです。

ビジネスモデルは上記で紹介したサービスと異なり、ライターの月額売上の 10% を手数料とするレベニューシェアモデルとなっています。

<関連記事>

a16zがニュースレターに注目する理由ーーメルマガ配信「Substack」が1530万ドル調達

後編に続く)