家賃問題を解決する「Kwaba」にみる、アフリカの“意外な商習慣”とは

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Image Credit : Kwaba

重要なポイント:中低所得者層をターゲットに賃料の分割払いサービスを開始したKwabaは、今年2度目となる資金調達を実施している。同社がサービスを提供するナイジェリアでは、賃貸物件の支払いを長期間分一括前払いする慣例があり、新型コロナウィルスの影響で賃料の支払いが困難になった人により多く利用してもらえるよう、獲得した資金でサービスを拡大する狙いだ。

Kwabaは今年1月の設立。ナイジェリア拠点のARMが実施する、金融業界の問題を解決するスタートアップを対象としたアクセラレータープログラムLABS by ARMに選出され、2万ドルの資金調達を含む事業支援を受けた。今月にはアフリカ・サブサハラ地域のスタートアップを対象とするVCファンドIngressive Capitalから2回目となる資金調達を実施した。金額は非公開。

詳細な情報:ナイジェリアのラゴスで賃貸物件を借りる際には、エージェントを通して手続きを実施し、半年や1年、場合によっては2年分もの家賃を一括で前払いする慣例がある。加えて物件の持ち主やエージェントによっては更に同期間分の光熱費や頭金、手数料など更なる費用を前払いで求めてくるケースもあり、中低所得者層が家を借りるハードルが非常に高い。

  • 今年の8月にサービスを開始したKwabaでは、不要な支払いは排除した上で、一括で払う必要のある高額な費用を分割支払いできるソリューションを提供する。Kwabaプラットフォーム上にある物件には費用内訳が明記され、賃貸期間と支払いサイクルを毎日、毎週、毎月、四半期、毎年、といった単位で指定して借りる。
  • 同国には既にオンラインでの仲介サービスを始めとするPropTech(不動産テック)サービス自体は復数存在しているが、貸し手・借り手のマッチングや物件の使用に際しての費用から収益を上げているためサービスのほとんどが富裕層向けで、中低所得者層をターゲットにしたサービス及び高額な前払い一括支払いの負担軽減にフォーカスしているサービスはないに等しい。
  • Kwabaのサービスは同社が顧客に代わりに一括で家賃の前払いをし、その費用を低金利で顧客から回収するスキームのため、高額な一括払いの慣例をなくす類のものではない。

背景:ナイジェリアでは現在既に1,700〜2,200万戸の住宅不足に直面しており、政府は約1億800万人がホームレス状態で暮らしていると推定している。現在推定では60%の借り主が賃料の支払いが困難な状態に陥っているといわれており、この問題解決に向けて不動産開発は進んでいるものの、富裕層向け不動産の開発ばかりが進んで高級物件が供給過剰になる一方、多くの貧困層を取り巻く環境は改善されていない。

同国の人口は現在増加の一途をたどり、2047年までに人口が現在の約2倍、3億9千万人になると予想されているため、このままでは住宅不足問題はより一層深刻化する可能性が高いとみられている。長期間の家賃を前払い一括で支払うこの慣例は、ベナン共和国、ケニアなどナイジェリア以外の国でも行われている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代・増渕大志

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