トップインフルエンサーが神格化しつつある中国EC界——「独身の日」がもたらす光と影

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今年の「独身の日」の Alibaba(阿里巴巴)売上は、4,982億人民元(約7.9兆円)に達した。
Image credit: (阿里巴巴)

「今年の独身の日の新しい動きや戦術は何か?」

事業者や EC プラットフォームに質問すると、寄せられた回答の半分以上が「ライブコマース」になると思う。

巨額の特典に魅了され誰もがそれに群がり、11月11日を待たずにピークを迎えた。企業データによると、2019年のライブコマースの新規登録数は681件、2020年のライブコマースの新規登録数(10月時点)は2,364件に達し、過去10年間のライブコマースの総登録数を上回った。

誰もがこの人的に作られた「ダブルイレブン」の買い物騒ぎ、生配信のごちそうを見逃すわけにはいかない。ダブルイレブンのライバー達のスタートは思っていたより早かった。トップライバーともなればなおさらだ。Taobao Live(淘宝直播)」で3,300万人のフォロワーを持つ「口紅王」こと Li Jiaqi(李佳琦)氏は10月11日から生配信を始め、すべての女性の財布に何度も何度も底を突かせるかのごとく、1日おきに一つの商品を前宣伝・プレセールを展開し売り切れを続出させ続けた。

ライブ配信データプラットフォーム 「Zhigua(知瓜数据)」の統計によると、独身の日のプレセールが始まった10月21日だけで、トップライバー Wei Ya(薇姫)氏の総売上高は53.2億人民元(約846億円)、Li Jiaqi 氏は 38.7億人民元(約615億円)に達した。しかし、ライブコマース業界は一線を画しており、それは誰もが知っていることだ。 ダブルイレブンの戦場では、業界発展の偏りが顕著になりつつある。

Taobao 系のライバーである Li Jiaqi 氏と Wei Ya 氏を筆頭に繰り返し販売記録を破られ、他の EC プラットフォームはそれを止めることができず好成績を明け渡すこととなった。JD Live(京東直播)は、11月1日0時0分10秒に受注額1億人民元(約15.9億円)を突破、Suning(蘇寧)のさまざまなライブコマースは大小あわせて5万回を超え、11月8日には百億人民元相当の特典を用意し、ディスカウントとセレブリティが紹介するダブル効果で、スマートスピーカー「Xiaodu(小度)」の1日の売上を前年比4倍に押し上げた。ライバーから事業者、プラットフォームからユーザ、その誰もがダブルイレブンを使って消費者をエンゲージし魅了する方法を変えつつある。

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トップライバーは神様

Taobao Live(淘宝直播)」で3,300万人のフォロワーを持つ「口紅王」こと Li Jiaqi(李佳琦)氏

今回のダブルイレブンは1ヶ月前から始まったといえ、Li Jiaqi 氏と Wei Ya 氏の生配信の頻度・長さは大幅に増えたが、企業の需要にはまだまだ足りない。

「ダブルイレブンを逃したら下半期が終わってしまう」と言うブランド運営者は、15万人民元の予算を持ってトップライバーに相談に行ったが、トップライバーのダブルイレブンの配信は2ヶ月前に交渉が始まっていて、料金は通常の2~3倍にまで跳ね上がっていたことを知らされたと言う。

ライブコマースの頂点に君臨するトップライバーは、熱烈なファン層とプラットフォームのトラフィックをサポートしているが、より重要なのは、巨大な売上高を作ることだ。 この現状から、頂点を極めたライバーは経済界の「信仰」にまでなっていて、それは権威の証明を得ることに相当し、さらには製品にとって「生涯のセールスポイント」になっている。

ダブルイレブンは、トップライバーの魅力をより一層際立たせている。 ダブルイレブンの参加基準を満たした店舗を見逃す人は少なく、最前線の生配信は話題のプロモーションチャンネルとなっている。 複雑なクーポンや100%割引ルールに比べ、多くの消費者がライブコマースでは低価格で販売されていると考えている。「〝アタマ〟に入るか入らないか」を、ダブルイレブンでは多くの企業が選択するようになった。

中堅どころのライバーやセレブリティは、比較的バツが悪いことになっている。頻繁にニュースやライブの告知をするため、彼らの信頼が急落してしまったのだ。複数の記者によると、Taobao の多くの中堅どころのライバーは、Li Jiaqi 氏と Wei Ya 氏と協業する事業者に連絡し商品を売りたいと掛け合ったが、その結果の多くは事業者から拒絶されている。

この背後には、Taobao ライバーの深刻な欠点がある。Wei Ya の会社に所属する Lin Yilun(林依輪)氏や Haiqing(海清)氏の名前があっても、商品を持ってくる力があるとは言えないのだ。仮にが数十万人民元の商品を持ってこれるライバーが多くいたとしても、Wei Ya 氏や Li Jiaqi 氏のオーラの下で他の Taobao ライバーが Tmall(天猫)上で数百万人民元を持ってこれるからだ。

Taobao Live は中小のライバーにリソースを開放して成長させることを重視してきたが、Wei Ya 氏や Li Jiaqi 氏以外の新しいライバーがなかなか育たないのが現状だ。 Alibaba もこの問題には気付いていて、今年は事業者に自らライブ配信することを推奨している。強制ではないものの、Taobao 上でのさまざまなマーケティング活動に事業者が参加している以上、ライブ配信をやらないわけにはいかない。代わりに事業者自らのライブ配信が増えたことで、Taobao のライブトラフィックの希少性が高まった。

中堅どころのライバーが苦境に立たされているだけでなく、中小企業のブランドも「ダブルイレブン混戦」に苦悩している。ライブスタジオの頭に行列ができるということは、高い手数料、限りなく落ち込んだ価格、高額なリベート、そして最終的に手に入れることができるのは、ちょうど勝利の上での売り上げの数字かもしれない。

それにもかかわらず、企業が急に退くことができないトレンドの潮目の中で、ライブコマースは続けざるを得ない道と言える。

砲撃戦と隠密戦、それぞれが街を守る

今年6月に6,000店を突破した、Suning(蘇寧)の EC ブランド「蘇寧易購」のリアル店舗
Image credit: Suning(蘇寧)

突然撤退することができない大手 EC プラットフォームもライブコマースをやるのか? 答えはイエスだ。

中国2位の EC プラットフォーム「JD(京東)」は今年、ライブコマースをグループ全体の戦略的事業と位置づけるための努力を惜しまなかった。 今日 Taobao(淘宝)と Kuaishou(快手)が業界を二分して支配する中、JD Live は差別化のためにエンターテイメント路線を取り、ライブ配信をマーケティング施策と位置づけて事業者を後押ししている。

JD によると、2021年にはライブ配信は事業者の自己配信によるものが増し、より多くの自前ユーザを集め、ライブ配信が事業者の営業の日課となり、革新的でより多くのマーケティングシナリオに基づいて、プラットフォームのコンテンツマーケティング力を高めるだろう。JD のライブコマースに対する公式の立場は、「グループ全体の戦略的事業で長期的事業であり、グループの位置付けや価値は当面変わらないだろう」としている。

また、積極的な戦いに挑む Suning は、618(Alibaba に対抗し、JD が設定した6月18日のセール日)のナイトパーティーとダブルイレブンライブパーティーで、OMO(Online merges with Offline)に焦点を当てている、トラフィック達成、確実な顧客獲得、効率的なコンバージョンのために、大規模パーティーのインタラクティブな雰囲気の中、商品マトリックス毎に最適化されたライブ配信がなされる。

新進気鋭の Pinduoduo(拼多多)は絶好調ではないが、11月8日にライブコマースで数百億人民元の特典に加え、割引とセレブリティ紹介のダブル効果で、スマートスピーカー Xiaodu の1日の売上高を前年比4倍にまで引き上げた。この強さは過小評価されるべきではない。煙が出て、戦いが再燃した。声の大きさ、発言権、ユーザの心の攻防を狙う巨人同士の戦いがまもなく封切られる。

EC プラットフォームのライブ配信合戦の話をするなら、注目度が高く、徐々にスケールアップしてきた Kuaishou と Douyin(抖音)のことを取り上げなくてはならない。彼らは多くのファンと短編動画を集め、ライブ配信業界で熾烈な争いを続けてきた。

しかし、Douyin のライブコマースが開始されて以来、同社は競合は Kuaishou ではなく Taobao をターゲットに捉えているようだ。特に Douyin が10月9日にサードーパーティサービスへの外部リンクの禁止を発表した後、Taobao と Douyin の関係は悪い方向に急転し、多くの売り手が Kuaishou を離れてライブ配信することにつながった。今年の各社の売上高は、Kuaishou EC が2,500億人民元(約4兆円)、Douyin EC が2,000億人民元(約3.2兆円)に対し、Taobao Live が4,500億人民元(約7.2兆円)。Taobao Live の売上は Kuaishou と Douyin の合計額に相当する。

業界関係者によると、ライブコマースの「ボーナス期間」はまだまだ終わらない。EC はまだ成長段階にあり、どのプラットフォームも成長スペースをつかみ、ユーザの習慣を鍛えているという。 Taobao、JD、Douyin、Kuaishou などのプラットフォームは、それそれ独自のスタイルを持っている、それぞれに異なる層の視聴者グループがあり、重要なのはケーキを切るときと同じくユーザを配分する割合だけだ。ライブ配信業界は今後も、秩序と制度化された方向へと向かっていくだろう。

ライバーであれ、ブランド EC であれ、煙の出ないこの戦争で彼らは街を攻めることに全力を尽くしている。ライブコマース業界には深刻な分裂、資源の偏在、システムの混乱などの問題はあるが、活気に満ちた経済情勢が現れている。最後に、ダブルイレブンではまだ、皆が喜ぶ状況を見ることができる。消費者は受け取る商品のリストを見て満足しているし、トップライバーは大きな収益を上げることができ、ブランドの下半期の業績は低迷しつつも、EC プラットフォームは忙しく成績表を公表している。

【via TechNode】 @technodechina

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