共創プラットフォームに必要な「コミュニティとカルチャー」の存在 – ソラコム 玉川憲氏 Vol.3

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ソラコム 代表取締役社長 兼 共同創業者 玉川 憲氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

SORACOMというプラットフォーム事業はどのようにして立ち上がったのか。日本を代表するクラウドサービスのエンジニア集団が感じた時代の変わり目、仮想のプレスリリースから生まれた創業へのきっかけ、そしてコミュニティと一緒に立ち上げた初期のソラコム。

前回のインタビューでは「スウィングバイ・IPO」宣言したソラコムがどのようにして創業期を駆け抜けたのかをお伺いしました。続きとなる今回は、プラットフォームの成長過程についてです。プラットフォームにはクライアントでありパートナーであり、ライバル関係となる利害関係者が複雑に存在することになります。

プラットフォーマーはそこを交通整理しながら、健全なエコシステムづくりをしなければなりません。ソラコムはどのようにしてそこを乗り切ったのでしょうか。(太字の質問は編集部、回答はソラコム代表取締役の玉川憲氏)

プラットフォーム・マネジメント

プラットフォームには多くのステークホルダーが参加していて、それぞれ利害関係が複雑になるじゃないですか。例えば全方位と言いながら、パワーバランスはどこかに働く。その辺りのマネジメントはどのように考えていますか

玉川:インフラストラクチャーのプラットフォームサービスですからおっしゃる通り、全方面で使っていただける必要があります。例えばお客さんのサイズ感にしても、スタートアップとか中小企業も使うし大企業さんも使うし、個人のエンジニアでも使える。ウェブから一枚単位で買えるのでそこの敷居はありません。B2BでありB2Cである。さらにお客様の規模感によって求めるものは全部違ってくるので、チームを分けて、それぞれのニーズに対応する。

エコシステムで対象となるコミュニティをクラスタのように分けて、チームで対応する、そういったイメージですね

玉川:そうですね、例えば個人や中小企業のお客さまで小口で買ってもらった時にいかにすぐ届けられるか、といった体験も重要です。ヤマト運輸さんにネコポスという仕組みがあるんですけど、これを使って必要なSIMやデバイスを小口ですぐに届ける仕組みにしてるんです。また、IoTをはじめようとすると、通信のみならず通信モジュールも必要なので、SIMや通信モジュールに加えて温湿度センサも含めたスターターキットを用意したり。

大企業さんは大企業さんでまた全然違います。ソースネクストさんのようなケースであれば、ポケトークを世界中の国で通信できるようにしたい、というお客さま固有の課題を抱えられてるので専任のチームがついて伴走します。さらに、パートナー様は僕らの製品を一緒に売っていくようなケースになるので、違った視点でサポートしています。

当然ながら全てのお客さんにソラコムが相対でフルサポートしていたら間に合わないわけです。このエコシステムを回す上で重要なポイントは

玉川:それぞれのお客様のご要望をお伺いした上で、ソラコムとしてはどの部分を共通機能としてプラットフォームとして提供できるか、その勘所が重要になると思っています。そこにおいては、エコシステムの中でも開発者を含むユーザーコミュニティはすごく重要なんです。

お客様が、パッションを持って何かに取り組まれたときに、そこにソラコムを役立てて頂いて、さらにこんな機能があったらもっといいのに、とフィードバックをもらえる。このフィードバックがあるのは非常に有り難いですね。そしてソラコムのチームとしては、改めて5年間やってきていても、ビジョンやミッション、リーダーシップをみんなで共有しているのは大事だなって思っています。「世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ」 というものを掲げていて、それぞれが先ほどお話したライカビリティのようなリーダーシップを行動様式として持っています。

メンバーがリーダーシップを発揮して自律的にコミュニティを動かしていく

玉川:本当にその各方面のエコシステムに自律的に当たっていくんですね。例えば、極端な例でいうと、大企業担当とユーザーコミュニティ担当って全くやってること違うんですよ。売上っていう観点で見たらユーザーミュニティって短期的には全く貢献しないように見えるかもしれない。逆にユーザーコミュニティの視点で大企業担当を見ると、案件のクロージングのサイクルは時間がかかりすぎているように見えるわけです。

こうやってクラスタ毎に全然違うKPIを追いかけていて、それでいてもお互いにとって、それぞれのエコシステムが大事であるってことを理解できるかどうかは根本にビジョンやミッションがあるかどうかですよね。

振り返ってみるとみんな繋がってたって分かるわけですよ。例えばとある大企業でソラコムを使ってもらえたんですね。でもそもそものきっかけは実はそこの担当者が、ユーザーコミュニティに出てきて何かスゴイと知って自分でプロトタイプを動かしてみて。そしたら上司が喜んじゃって、すでにソラコムファンになっていたり。世の中面白いなと思うのはこういった複雑に絡み合うエコシステムなんですよね。

こういった設計はやはり思想的な部分が大きいですね

玉川:僕らは、最初からユーザーやディベロッパーに喜んでもらうため、という考え方があるんです。パッション持ってる人たちにこういった道具をお渡しして世の中をより良い方向に変えてもらう。そこが一貫していると、それぞれのエコシステム間での共感が生まれて、繋がり合っていく。ただこれを継続的に成長させていくのは本当に難しくて。

なんだかんだ言いながら、スタートアップってやっぱりリスクがあることをやっていますから、短期的な数字だったり結果にこだわりたくなる部分もあるわけです。でも変に結果にこだわり過ぎると中長期的な視点が曇ってくるんですよね。(次回につづく)

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