SORACOMがグローバルに挑戦する意味 – ソラコム 玉川憲氏 Vol.4

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ソラコム 代表取締役社長 兼 共同創業者 玉川 憲氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

Internet of Thingsを自由にするーー。クラウド技術をフル活用してIoTを民主化する。これに成功したソラコムのメンバーは、KDDIグループに入った後も大きく事業成長し、スウィングバイ・IPOという次への飛躍を宣言するに至りました。

成長の鍵となるのはコミュニティです。開発者たちがパッションを持ってアイデアに取り組もうとした時、助けになる情報や協業パートナーが探せる、アイデアを累乗に育てることのできる環境をソラコムのチームは作ってきました。彼らが作ってきたプラットフォームの正体、それはクラウドサービスと密接に紐づいた、人や企業が集う共創環境そのものだったのです。

インタビューの最後は、ソラコムがこの先に見据える世界戦についてお伺いします。(太字の質問はMUGENLABO Magazine編集部、回答はソラコム代表取締役の玉川憲氏)

グローバルに挑戦する意味

ここまで「SORACOM」共創環境を自らも生み出し、また、KDDIとの共創関係で事業を大きく成長させ、その先を見据える準備段階に入った、というストーリーをお聞きしてきました。最後に世界への挑戦についてです。実際に今、グローバルでも展開されていますが、改めてその視点について玉川さんの考え方を教えてください

玉川:ここ2年ぐらいグローバルに対して、自分たちのプラットフォームを世界でより使ってもらえるようにしていこうというチャレンジをしてきました。コロナ禍もあってより、グローバルに対する理解が深まったと思っています。

特に国による違いですね。例えば電波って2Gや3G、4Gと規格が標準化されています。でも一方で、国によって2Gがあるとか3Gがないとか、普及している仕組み自体が違っていたりする。こういうことってグローバルなんだけど、結局、一個一個のローカルをしっかりと丁寧に見ていかなければ分からない。

現在、SORACOMは140カ国で使えるようになったんですが、じゃあ実際にアメリカで使ってもらえるようにしようと思ったら、よりローカルのお客様の視点になって考えていかないと結局使ってもらえない。これこそ、昔、ホンダさんやソニーさんといった偉人たちがやってきたことであり、我々はそれを追体験しているんだろうなと。

ソラコム USチーム

国内サービスが海外で受け入れられない理由のひとつがカルチャーギャップ、つまり日本ローカルに最適化されすぎていることの弊害、という意見はよく耳にしますね

玉川:その上で「WHYグローバル」って言うと3つくらい視点があると思っています。

ひとつは我々が提供しているIoTのインフラに、お客さんがグローバルを求めてると思うんです。今までのサービスっていうのはドメスティックに国の中に閉じたものが売れていて、これだったら従来型の通信や仕組みでいいと思うんです。

ただし、世界中のモノは繋がりたがっている。コロナ禍で如実だと思うんですけど「出張」って難しいですよね。移動も難しいと。そうなったら遠隔監視とかリモートコントロールとか、空間を超越する仕組みが必要になる。ここを補うような位置付けで、IoT通信のプラットフォームそのものもグローバルでなければいけない。

もう一つはこれは中馬(和彦氏・KDDIビジネスインキュベーション推進部長)さんの思いに近いんですけど、やっぱり僕も76世代のひとつ上で、なんかもうこの世代って日本の宿命みたいなものを背負ってるじゃないですか。僕らの前の世代はハードウェアであったりものづくりで世界を席巻し、自分たちの世代に出現したインターネットでは世界で戦えてないじゃないか!みたいな。

だからこそ、日本発でインターネット・テクノロジーを使ったプラットフォームビジネスっていうのがやっぱり誰かに成功して欲しいじゃないですか。もちろん僕らもその一員なので、自分たちも頑張りたい。

あとソフトウェアってやっぱりハードウェアとかと経済原理が違うと思ってるんですね。ハードウェアは毎回新しいところにお金がかかる。でもソフトウェアを主体としたサービスっていうのは一回作っちゃうと新たなお金はかからなくなる。

国内ってある程度市場があるので、安心してしまうわけです。けど、海外に視野を広げると、マーケットのサイズだけで売り上げが二十倍違うんです。同じコストだけど、マーケットサイズの理由で売上に二十倍も差があると、どんどん差がついていきます。

国内では5年は生きられるかもしれないけど、もし僕らがある単一のマーケットだけ見てると多分、10年は難しくなる。

人生短いのでいい仕事をしたいじゃないですか。確かに難しいチャレンジなんですけれども、ちょっと先を見ればある程度予想はつきます。だとしたら「やらない理由」はないんです。(了)

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