救急外来向け患者情報記録システム開発のTXP Medical、シリーズAでUTECから2.5億円を調達

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Image credit: TXP Medical

救急外来に特化した患者情報記録・管理システム「NEXT Stage ER」シリーズを開発・展開する TXP Medical は、シリーズ A ラウンドで今年7月に東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)から2.5億円を調達していたことを明らかにした。

同社は、2017年8月、救急集中治療医でもある園生智弘氏によって設立されたスタートアップ。今回初の外部調達と見られるが、設立から約3年を経て調達を迎えたことに、病院に導入して実績を積み上げるという着実な前進の上での結果だと園生氏は語った。

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中規模以上の病院では、収益源は概ね入院患者からもたらされるものと、救急を含む外来患者からもたらされるものが、それぞれ半々程度を占める。しかも、入院患者の3分の1は外来から入ってきており(残りは、以前から治療にかかっている患者の病状が悪化したり、別病院やクリニックから紹介されて入院したりするケース)、病院収益の流入経路として救急外来は見過ごすことができない。

一方、病院の一般診療科では、電子カルテシステムが導入され診療情報を病院内で統合的に情報管理できるようになってきているが、救急外来は救急という外部とのやりとりを逼迫した状況で行う必要から、情報システムが外部と連携されるケースは皆無だった。地方自治体によっても、病院によっても、導入しているシステムはまちまちで、それらを互いに接続するのには困難を伴う。

救急の IoT 化も各地で進んでいるようだが、その多くは救急を管轄する消防本部内での情報管理の効率化までに終始しているケースが多いようだ。つまり、救急内や病院内で診療情報は統合管理できているのだが、救急と病院がつながることは難しい。救急救命士が病院に急行する救急車の中から、バイタルデータを電話越しに口頭で ER の医師に伝えている姿がよく見受けられるのも、救急⇄病院間でデータ連携できないことを象徴しているのかもしれない。

Image credit: TXP Medical

NEXT Stage ER を使えば、外来問診、救急車、ドクターカー向けの各種アプリ(音声入力を使用)から情報を取り込み、そこから電子カルテ、救急台帳、紹介状作成などあらゆる医療管理上必要となる作業へ連携が可能となる。従来は電子カルテからレセプト(請求処理)や研究用レジストリを作成していたが、NEXT Stage ER から電子カルテ作成や必要業務への情報連携でき作業が簡素化される。

今の病院は、多くがオンプレミス主体でシステムを構築しているが、これをクラウド側に持っていきたい。救急外来というアプローチからこれを実現できれば、地域の病院同士が互いにつながった世界を生み出すことができるだろう。

クラウドでさまざまな病院に導入してもらうことで診療データが溜まっていくだろう。例えば、脳卒中をはじめ急性期のデータは、消防庁などにあるものを除いてどこにも無い。集中治療室での治療実績に関するデータだ。

急性期医療では、こういったデータが非常に価値を持ってくる。医療デバイスのメーカーや製薬会社などがターゲットになってくるだろう。(園生氏)

TXP Medical 代表取締役の園生智弘氏(最左)と、NEXT Stage ER を導入した千葉・鴨川の亀田総合病院の ER の皆さん
Image credit: TXP Medical

匿名化された医療データの流通では、上場からまもなく6年目を迎えるメディカル・データ・ビジョン(東証:3902、以下、MDV と略す)が先行する。今月上旬には、SBI ホールディングス(東証:8473)が MDV 株式の約5分の1を譲り受けると発表したのが記憶に新しい。同社は今年2月には回復期・慢性期データの流通について発表しているが、急性期のデータについては触れていないことから TXP Medical はこの点で優位に立てる可能性がある。

NEXT Stage ER は今年10月末現在、救命救急センターや大学病院を中心とした全国32の地域基幹病院で導入内定・稼働している。園生氏は起業家でありながら、現役医師として35本もの英文論文をこれまでに発表しており、自身が所属する日本救急医学会や日本集中治療医学会での活動を通じ、NEXT Stage ER の可能性をアピールしていきたいとしている。

以下は、TXP Medical が今春リリースした「COVID-19対応セルフ問診支援システム」の紹介動画。

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