Appleの自動運転車開発にみる、脱デジタルハブ構想のゆくえ

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Image Credit:Michał Kubalczyk

Appleの次世代ハードウェア開発の話題がいくつか出ています。

特に注目なのは21〜22年に予想されているARグラスの発表ですが、それとは別に24年を目処に自動運転車の開発を進めていると報じられました。乗用車の開発だけでなく、画期的なバッテリーまでも市場へ送り出す予定のようです。あくまでも噂レベルの話ですし、パンデミックの影響もあるため時期は曖昧だとしても自動運転車の開発に着手しているのは確かなようです。

ここで考えたいのがAppleのユーザー体験に関する大きな転換についてです。具体的には来年以降、故スティーブ・ジョブズ氏が提唱した「デジタルハブ戦略」を抜け出し、次の長期戦略を描くターニングポイントを迎えると考えられます。

2001年頃はパソコンがCDやビデオ機材などの周辺機器の絶対的なハブとなる考えでした。しかし、今となっては必ずしもパソコンを持つ必要がなくなり、モバイルだけでデジタル体験が完結する時代へ移行しています。そしてこれからは、モバイル以外の次世代端末も登場して拡大していくことが予想されます。言い換えれば、ハブとなる端末の絶対的な存在価値が徐々に下がってくると考えられるのです。

一方、これらのデバイスが全てクラウドで繋がることで重要性が上がるのが「コネクティビティー」です。

たとえばiPhone、AirPods、グラス端末のそれぞれが特定の利用シーンを担い、3つのハードウェアを上手く使い分け、連携して使うことで1つの体験が生まれる、といった具合です。データはクラウドに保存、共通音声UIのSiriを切り口に情報検索から指示出しまでできるので、どれか1つの端末を唯一のハブとして利用することが少なくなります。

どの端末からでもAppleが提供するデジタル体験へ入ることができ、複数の端末を並列して使うことで体験は強化されます。必ずしもパソコンを持たなければいけない必要条件は課されなくなるでしょう。

製品開発ロードマップは2000年代から大きく変わり、2020年以降はパソコンやモバイルといった平面のデジタル体験から、ARや自動車内、音声といった3D空間体験へとシフトしていくのは確実です。先日の発表会で、空間オーディオ技術を発表したこともその一環と考えれば自然です。

このようなテックジャイアンたちの3D体験への移行は新たなメガベンチャーを生み出すきっかけになるかもしれません。今後数年はAppleの動きのみならず、次世代ハードウェアに乗っかる形で、新たなサービス体験も誕生すると予想されます。

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