なぜGoogleはGebru氏を解雇したのか:人の生活に関係する技術を規制する必要性(9/9)

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Photo by Deepanker Verma from Pexels

AI研究のオープンネス

(前回からのつづき)Abdurahaman氏は、財務上の繋がりを公開することがAI研究者のスタンダードへと繋がるのではないかと指摘している。「例えば医療品のような分野では、自身がどの製薬会社から資金の提供を受け研究を実施しているかなど開示する義務が伴っています。なぜなら、そのバックグランドに研究の方向性やそもそもの前提情報など全てが集約されているから」と述べる。NeurIPS AIカンファレンスでは、今年初めて、利益相反の可能性、また、研究が社会に対して与える影響を明記することを義務付けている。

AI倫理とコンピューターサイエンス

ビッグテックとビッグタバコを比較した研究で示されているように、学術界は倫理学を別の分野として維持するべきだとされている。これは、生命倫理学と生物学が異なる分野とされていることと似ている。しかし、Abdurahaman氏は、産業界と学術界は既に分離化されており、この手法に対して懐疑的な姿勢を見せている。

「何かを想像した人が悪い、それに対して何か異論を述べる人たちを区分けするのではなく、さらに批判的な倫理的な実践が必要です」

倫理学の研究者と機械学習の研究者の一部では、AIと労働者AIと気候変動AIと海洋学など枠組みを超えた取り組みを推奨している。実際、Gebru氏はGoogle Researchのチームに対して初めて社会学者を招集し、Fairenessに対するフレームワークを導入させるなどしていた。

まとめ

2018年にGoogleがPentagonと共同で軍事に特化したドローン映像コンピュータービジョンのプロジェクト「Maven」に取り組んでいるという情報が出た際には、数千人規模の従業員が反対の声を上げていた。その後にも、セクハラなどを含めた抗議として、世界中のGoogle社員が退職運動に参加する動きが見られた。特にAI倫理委員会は数日で解散する結果となるなど迷走が続いていた。

Gebru氏の解雇から2週間(訳註:原文の掲載日は12月16日)が経過したが、Googleではまだ問題が多く残っているように思える。Bussiness Insiderによれば同社AIチーフのJeff Dean氏がオールハンズエンドオブイヤーコールを中止したことを明らかとしている。本誌がGebru氏にインタビューした先週、彼女はBBCSlateMIT Tech Reviewなどのメディアで多くを語っている。

アルゴリズムの偏りに関連した法案を支援した実績のある議員は本日、Googleのサンダー・ピチャイCEO に書簡を送り、Google が大規模言語モデルにおける偏りをどのように緩和しているのか、Gebru氏に起こったことをさらに調査して多様性を促進する計画をどのようにしているのかを尋ねた。

署名者にはYvette Clarke議員(D-NY)とCory Booker上院議員(D-NY)が含まれている。2人は企業にアルゴリズムに偏りがないかどうかを評価することを義務付ける2019年の法案「Algorithmic Accountability Act(アルゴリズム説明責任法)」の共作者である。Booker氏は今年初め、連邦政府の顔認証モラトリアムを共催一人でもある。金融融資における偏りを疑問視したElizabeth Warren上院議員(D-MA)や、抗議活動で顔認証のような技術の使用に疑問を呈したRon Wyden上院議員(D-OR)も署名している。

そしてまさに今日だ:Googleの倫理AI チームのメンバーは追加の要求をピチャイ氏に送って、ポリシーの変更とGebru氏の仕事を取り戻すことを求めている。

今年初め、筆者は機械学習の行く末に関するレポートを書いた。特に、監視や抑圧、白人至上主義に対峙するAI企業と、公平な世界を実現するために活動している企業についてフォーカスしていた。それ以降、実際に私たちが直面したのは。AI Now Instituteが触れているように、この分野が一歩立ち止まる時がきたということだ。

Gebru氏の例を見ても分かるように、多様性に対する投資の欠如がよろしくない労働環境を生み出しかねないことを浮き彫りにした。また、企業のリーダーがそうした問題を直視しない場合、従業員は人の人生に関わるAIの利用に対して従業員たちが世間に対して注意喚起すべきかどうか、という疑問にも繋がっていく。またアルゴリズムの偏りをできるだけ少なくするということは、世界共通認識であるにも関わらず、多種多様な従業員を採用しないというのはまさに失敗の根源を作り出していると言えるだろう。

この記事のために話を聞いた有識者たちは、人間の生活を形作る技術をある程度規制する必要があることに同意していると感じた。彼らはまた、より強力な説明責任と執行メカニズム、制度や政府政策の変更を求めている。Gebru氏の例によって提起された横断的な問題に対処するための措置は、学術研究の独立性を確保するためだけではなく、幅広いテックワーカーたちによる組合の必要性や、もっと大きな組織連合に至るまで幅広い懸念に対して対応する必要があると感じた。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】