「Get in the Ring」AI版の大阪予選が開催——EC不正検知のLizuna、秘密計算のEAGLYS、音声ERPのHishabが世界決勝へ

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Get in The Ring はオランダで2012年に始まったピッチコンペティションだ。ピッチをボクシングに見立て、ス タートアップはバリュエーションによりライト級・ミドル級・ヘビー級に分かれ、リング上でピッチでの対戦に 臨む。それぞれの級で選ばれた各都市予選の勝者は、年に一度の世界決勝に出場できる。

これまでの世界優勝者には、 Ant Financial(螞蟻金融)が2016年に1億米ドルで買収した、眼球の血管パター ンによるバイオメトリクス認証のスタートアップ EyeVerify(アメリカ)、アバターによる手話通訳スタート アップ MindRocket(ヨルダン)、人間の尿から土壌改良のためのバイオ煉瓦を作り出す Liquid Gold(南アフ リカ)など有望スタートアップが名を連ねる。

大阪では、Osaka Innovation Hub が2016年から予選イベントを開催するようになり、3日の夜、5回目となる予 選がオンライン開催された。今回は AI スタートアップに特化し、ライト級・ミドル級・ヘビー級のセミファイ ナリスト6チームが集結。それぞれの級の日本予選優勝者(ファイナリスト) には来年2月19日、カナダのモントリ オールで開催される世界決勝への出場権が提供される。

このイベントで審査員を務めたのは、

  • Tim Miksche 氏(ドイツスタートアップ協会日本代表)
  • 廣田隆介氏(Spiral Ventures プリンシパル)
  • James Coleman 氏(Tech Concierge 共同創業者兼 CTO)

レフェリーは、Nathan Bryan 氏(ガイジンズ 代表取締役) が務めた。

<ライト級(バリュエーション50万ユーロ未満部門)優勝> Beacon by Lizuna

e コマースで不正な取引が行われると、店舗はチャージバック(クレジットカードのなりすましユーザからの注文に対し、店舗は商品を犯人に騙し取られながらも、店舗はユーザへの返金を余儀なくされるケース)をはじめ負担を強いられる。Lizuna は、チャージバックを減らすべく e コマースにおける不正注文の防止と検知をする Shopify 対応アプリ「Beacon」を開発している。

偽電話番号などの過去取引からのビッグデータ、SMS やメールを使った不正行為分析や異常アクティビティのパターン追跡、ブラックリストシステムの導入により詐欺に利用されている可能性の高いアカウントの自動削除などの機能を提供する。従来、このような仕組みはカード会社が利用する不正検知システム「Falcon」などに限定されたが、Beacon はより多角的な機能を月額15米ドルから利用できるのが特徴。

2018年、神戸市と500 Startups、アクセラレーションプログラム「500 Kobe Accelerator」第3期に採択された。Crunchbase によれば、同社は2017年に5万米ドルを調達している(調達先は不明)。

<ミドル級(バリュエーション50万〜250万ユーロ部門)優勝> Data Armor by EAGLYS

EAGLYS は、AI と秘密計算の研究開発と社会実装を行うスタートアップ。秘密計算とは、データを暗号化したまま復号することなく任意のデータ処理ができる新しい暗号技術の総称だ。データを秘匿した状態で活用できることから、データ利活用社会における重要インフラ技術として注目されている。

EAGLYS では、データを暗号化したまま処理可能な高機能暗号・秘密計算プロキシソフトウェア「Data Armor Gate」を開発。データベースへ保存する際の通信時や保管時のみでなく、保管した暗号データに対する検索や集計などの演算処理、保管されたデータをもと 機械学習や深層学習等を常時秘匿化された状態で処理が可能だ。

EAGLYS はこれまでに、「TechSirius 2019」最優秀賞、「未来2019」ロボット・AI・IoT部門最優秀賞、「ICT SPRING EUROPE2019 cyber security section」優勝、「Forbes JAPAN」 Rising Star Award,「東京ベンチャー企業選手権」東京都産業労働局長賞、「JapanVentureAwards2020」中小企業庁長官賞、「世界発信コンペティション」東京都ベンチャー技術奨励賞などを受賞。2019年に、博報堂 DY ホールディングス、SBI インベストメント、ユーザーローカルから資金調達している。

<ヘビー級(バリュエーション250万ユーロ以上部門)優勝> Hishab

Hishab は、バングラデシュを拠点に音声 UI による ERP ソリューションを開発するスタートアップ。主に新興国をターゲットにしている。新興国では識字率が低く(バングラデシュで60%、女性の場合で50%程度)、IT リテラシーが低いため複雑なシステムの導入が難しい。UI に音声を使うことで教育を受けていない人でも使えるシステムの構築を狙う。

スマートフォンに限らず、ガラケーでも対応が可能。特定の電話番号に電話をかけて話すことで、システムは ASR(音声認識)によるデジタルデータとして情報を取り込む。バングラデシュで使われるベンガル語のほか、ミャンマーで使われるミャンマー語にも対応。昨年からは、新興国向けクロステックサービスを提供するリンクルージョンとミャンマーで実証実験を行っている。

これまでにバングラデシュ国内で50万人以上のユーザが登録、メーカーの受発注業務、個人商店の売上管理、マイクロファイナンス事業者の業務管理に利用されている。今回審査員を務めた廣田隆介氏の在籍する Spiral Ventures(当時、IMJ Investment Partners)は、2016年と2017年に Hishab に出資を実行している(出資額非開示)。

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