お店から直接視聴者へ売り込むライブショップ「Popshop Live」ーー 1億ドル価値へ急成長したワケ

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Image Credit:Popshop Live

昨今、注目されるキーワードに「パッション・エコノミー」が挙げられます。この分野に積極的な関心を寄せるVCがAndreessen Horowitz(a16z)と、ライドシェア「Lyft」や家事手伝いマッチングプラットフォーム「TaskRabiit」に初期投資したVC、Floodgateです。

参考記事

なかでもFloodgateは、個人がお買い物代行サービスを立ち上げられるSaaSプラットフォーム「Dumping」へ2019年に出資。そして20年、小売店/販売業者向けライブコマースアプリ「Popshop Live」に出資しました。

Popshop Liveは小売店や個人事業者、クリエイターが直接視聴者に商品を売れるライブコマースアプリです。配信ユーザー(小売業者)は、自分だけのショッピングチャンネルを作成し、幅広い商品をリアルタイムで全国の視聴者に直接販売することができます。7月には300万ドルの資金調達を、直後の11月には1億ドル評価でシリーズAラウンドを迎えていると報道されました。

リアルタイム在庫管理、ジェネレーションZおよびミレニアル世代向けのポップな機能・テンプレート、パフォーマンス統計・詳細な指標レポート・リアルタイム分析機能、カスタマーサポートなどの諸機能を利用することができます。

他のライブストリーミングプラットフォームと違い、商品販売に特化したユースケースを想定しているのが特徴です。日本のBASEのように、個人が素早くライブコマース商店を立ち上げられるパッションエコノミー文脈を色濃くプロダクトに反映させています。ターゲット顧客となるのは、パンデミックの影響で実店舗売上が減少し、ECへの積極進出を狙う中小規模の小売事業者です。ユーザーとの密なコミュニティを作り、直接顧客と繋がれる場の創出を目指しています。

Image Credit:Popshop Live

かつて、ニューヨークの店舗から中国市場向けに洋服を売るライブ配信コマースサービス「ShopShops」が登場していました。テレビショッピング感覚でナビゲーターやキュレーターが実店舗から商品を紹介し、店舗内の商品を中国人客が購入していく越境ECの仕組みです。彼らの場合は専属の配信者が店舗へ出向き、ライブ配信するプロセスでしたのであくまでもプラットフォーム側が主導です。

一方、Popshop Liveは事業者自身がライブコマースECチャンネルを立ち上げられるサービスを展開しています。アプリ側は機能を提供する点に終始しています。そのため、集客や運用コストを下げられ、高額な販売手数料を抑えています。これは冒頭で紹介したDumplingでも同様の仕組みです。

一見すると、インスタライブの販売機能と真っ向から競合しそうです。ただし、ユースケースとそれに伴う販売機能を拡充させる、ショッピング特化型のアプリとして市場ポジションを確立するのが狙いに思えます。加えて、個人をエンパワーし、SaaSモデルに徹することで省コスト化に成功しています。こうした点が強みとなり、インスタライブとはまた違った成長性に期待が集まっています。

日本でも近いうちにPopshop Live同様のコンセプトを持ったアプリが登場すると感じています。パンデミック禍で営業不振な店舗の新たな収益源というサービスは共感を生みそうです。ただ、LINE Liveのような日本で有名なスーパーアプリとどこまで勝負できるのかが焦点となりそうです。

ちなみに日本ではファッション・美容系インフルエンサーがライブ配信で商品を売る「LiveShop」が登場していますが6月末にクローズ。自社でユーザーを集めつつ、物を売る難しさを物語っています。この領域に対し、Popshop Liveのようにユーザー自身が集客を担当する、比較的低コストで展開できるライブコマースアプリがもし日本で登場したら、どこまで市場に刺さるのかも注目を集めるでしょう。

いずれにせよ、パッションエコノミー文脈への投資は米国でどんどん進んでおり、日本でもその波がやってくる日も近いはずです。

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