置き配の「OKIPPA」がサブスクモデルにピボット、荷物の不在受取バッグから〝玄関前プラットフォーム〟へ

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Image credit: Yper

宅配ボックスが無くても、荷物の不在受取ができるソリューションとして2018年に登場した「OKIPPA(オキッパ)」だが、このほどビジネスモデルの転換を図ることが BRIDGE の取材で明らかになった。OKIPPA を展開する Yper(イーパー)は、これまで置き配バッグを買取形式で販売してきたが、かねてから提供している東京海上日動と共同開発した置き配バッグ専用の盗難保険を付帯することで、月額270円(税込)のサブスクリプションモデルでサービスを始める。

また、これまで荷物の不在受取にのみ利用されてきた OKIPPA を「玄関前プラットフォーム」と再定義してさまざまなサービスを載せていく。その皮切りとして、ご飯やパンを白米や小麦粉から作ることができる調理家電と食材配送のミールキット「OKIPPA BOX」の提供を始める。Yper 代表取締役の内山智晴氏は、「コロナ禍で外食に出かけにくく、フードデリバリでは料理が冷めてしまう。調理家電が発達した日本では、手軽にできたてを食べられる体験を届けられると思う」と新サービス開発の意図を語ってくれた。

筆者の場合、自宅マンションに宅配便用の不在受取ボックスが備わっているので、残念ながら OKIPPA を日常的に使うことはないのだが、クリーニング屋から汚れた衣類を24時間いつでも受付ボックスに出せるバッグをもらっている。ただ、コロナ禍でクリーニングに出す衣類の量も減ってしまったので、このバッグは現在、今夏から有料化されたスーパーの買物袋の代替として使っている。日常的に本来の目的で使われない媒体は、邪魔になるか別の用途で使われてしまい、提供したプロバイダにとっては不本意な結果を招く。

少額の利用料を定期的に払い続けてもらうことで、サービスの本来の使い方をユーザに意識してもらい、サービスへのスティッキネスやエンゲージメントを高める、というのは他でも見られる。好例がアマゾンプライムではないだろうか。月に500円(税込)払うだけで、商品購入時に即日配送や送料が無料になり、おまけに数多くの配信プログラムを無料で視聴できる。Amazon TV Stick だけだとテレビに刺さっていることを忘れてしまいそうだが、サブスク契約があることで使いたい願望が定期的に呼び起こされる。

2019年8月、Open Network Lab「Resi-Tech プログラム」第1期デモデイに登壇した Yper 代表取締役の内山智晴氏
Image credit: Masaru Ikeda

おそらく OKIPPA が新たなモデルで目指すのは、アマゾンプライムのような戦略が背景にある。置き配バッグ(この呼称もいずれ改められるだろう)を Amazon TV Stick に見立てるなら、ちょうど Amazon TV Stick に Netflix や Abema TV などをインストール・契約するのと同じように、玄関前プラットフォームとなったバッグの中(または上)にさまざまなオプションサービスが追加可能になる世界。そのとっかかりが、不在にしていても、いつでも調理家電や食材が受け取れる前出のミールキットである。

玄関前で受け取ったり、玄関前で発送したり、といった体験が提供できるようになる。この春には、ファッションサブスクの「メチャカリ」と、商品の受取・返却を玄関前でできる実証実験を行った。ユーザはコンビニや宅配便の取扱店まで出向く必要がなくなり、事業者にとっては商品の回転率が上がる、という効果が確認できた。

定期的に何かするようなサービスやモノとの相性が良く、それを提供する事業者とは WIN-WIN の関係になれるのではないか。そのオプションサービスを月に一回使えば、(OKIPPA 無しで使う場合と比べて)OKIPPA の利用料の元が取れてしまうようなサービススキームにしていきたい。(内山氏)

内山氏によれば、荷物の不在受取ロッカーの普及率は推定2%程度で、ポテンシャルは高いものの市場規模はまだ小さいという。新築時からロッカーを備えたマンションは別として、後からロッカーを追加設置する場合、その費用を誰が工面するのか(マンションであれば住民組合)、また、高齢者の多い集合住宅ではそもそも不在が少なく重い荷物を部屋まで持ってきてほしい要望が強いため、ロッカーを設置しようというモチベーションが働きにくいらしい。

しかし、ここで新たなファクターが加わった。新型コロナだ。不在時受取に加え、非接触での荷物の授受が求められるようになった。ロッカーをすぐに設置するのは難しいが、OKIPPA であれば即日利用が可能だ。そんな事情から、OKIPPA の利用は全国的に伸びているという。また、荷物の再配送に伴う配達業者の二酸化炭素排出を抑制する観点から、全国各地の地方自治体の環境対策部門などが中心となり、助成金を出して住民に OKIPPA を配るところも現れ始めている。