車のローンが通らない人向けサブスク「Planet42」、南アフリカで展開加速

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ニュースサマリ:2017年に設立された、エストニアを本拠地に南アフリカで自動車のサブスクリプションサービスを展開するPlanet42は、今年初めにシードラウンドでの240万ドルの資金調達を行い、今月(2020年12)月初めに金融機関であるLendableからデットファイナンスによる1,000万ドル(820万ユーロ)の資金調達を実施した。この資金は、南アフリカ人の自動車購入とモビリティの民主化という目標と2024年までに10万台の自動車を購入するという目標に向けて使用される。

同社のサービスは、審査の厳しい南アフリカで自動車を購入したくてもローンが組めない人たちをターゲットにしており、利用期間に応じて買取額の下がる購入オプションによって、長期間サービスを利用した後には比較的安価な値段でその自動車を買い取ることも可能となる。

詳細:Planet42がサービスのターゲットとしているのは銀行口座を保有していない人と、銀行口座を保有していてもローンが組めず、これまで自動車を購入したくてもできなかった人たち。 南アフリカをはじめ新興国には銀行が非常に保守的な国があり、こういった国では安定した収入があってもローンが組めないということが珍しくない。

  • このような顧客に対して、同社は独自のスコアリングアルゴリズムに基づいたリスク評価を行う。顧客はその後リスク評価に基づいて提示される使用可能な中古車リストの中から、自分が使用したい車を選択すると、Planet42がその車を提携ディーラーで購入し、顧客へサブスクリプションサービスとして提供する。リスク評価から車購入までのプロセスは人を介さず全てシステム上で行うことで人件費やコストを削減し、車の貸し出しにあたっては追跡装置と車両保険を付加してリスクヘッジをしている。
  • 利用者はいつでも好きなタイミングでその車を買い取れるオプションがあり、60カ月のレンタル利用後には5,000ランド(約350ドル)で車両を購入できるようになる。
  • 同社は既に南アフリカの300以上のディーラーと提携し2,000台以上の車を購入しており、これらの車の月額利用料からおおよその収益の予測が可能であるため、今回の1,000万ドルのデットファイナンスが実現した。
  • 新型コロナウィルスの流行によって多くの顧客の収入が減少したことを知ると、一部のユーザーに対しては料金の減額や支払い免除などの救済措置を行ったが、パンデミックにより公共交通機関が機能しなくなったことでサービスの利用を開始するユーザーもいた。その結果、新型コロナウィルス流行下でも同社は四半期ごとに収益を伸ばしており、今後は東南アジアやラテンアメリカの新興市場への事業拡大も検討、2021年にシリーズAラウンドでの資金調達を計画している。

背景:南アフリカに限らず、アフリカやアジア、ラテンアメリカには公共交通機関網が貧弱ながら、銀行ローンなどの審査が厳しく個人の交通手段を持つこともできない人が多い「輸送の貧困」という問題を抱える国があり、こういった国では交通手段の欠如が社会的・経済的な排除へとつながってしまう。同社では、モビリティを提供することでキャリアや教育の機会により多くの人々がアクセスできるようになり、物理的なモビリティを有効にすることがソーシャルモビリティのロックを解除する、と考えている。

執筆:椛澤かおり/編集:岩切絹代

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