20代経営者で30年後に一番大きくなるのは中嶋ーー隠れたキーマンを調べるお・ROXX山田氏

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ROXX取締役COOの山田浩輝氏

編集部注:「隠れたキーマンを調べるお」は、国内スタートアップ界隈を影で支える「知る人ぞ知る」人物をインタビューする不定期連載。毎回おひとりずつ、East Venturesフェローの大柴貴紀氏がみつけた「影の立役者」の素顔に迫ります。シーズン2として2020年に再開

求人企業と人材紹介会社間を繋ぐ求人流通プラットホーム「agent bank」の運営および、オンライン型のリファレンスチェックサービス「back check」を展開するスタートアップ ROXX。会社のバリューは「ROCK」「JAZZ」「PROGRESSIVE」、オフィスには多くのギターとドラムセット…。

まさに「ロック」なROXXの代表の中嶋汰朗氏は常日頃から革ジャンを身にまとい、多くのメディアに登場し、ロックスターさながらの存在感を放っていますが、そんなROXX、中嶋氏を影で支えるのが今回お話を伺った取締役COOの山田浩輝氏です。中嶋氏との運命の出会いから、新サービスを生み出す苦労など、とても多くのことを聞いてきました。ぜひお読みください!

彼は一通り自分の話したい事を話すと満足して帰っていった

大柴:中嶋さんとは大学の同級生なんですよね?

山田:そうです。同じ経営学部で10クラスくらいあったんですが、同じクラスでした。入学直後にオリエンテーションがあって、そこで中嶋と同じグループになったんですよ。名前の順でグループ分けされて、たまたま同じグループになりました。

大柴:オリエンテーションではどんなことをやったのですか?

山田:「タンブラー(容器)がもっと使われるようにするには?」みたいなお題で各グループごとに考えて、発表するようなものです。中嶋は最初っからしゃべりっぱなしで、グループを仕切っていましたね(笑。自分はその次くらいに発言をしてました。結局自分たちのグループが最優秀に選ばれました。

大柴:おぉ、すごい。それをきっかけに二人は仲良くなったんですか?

山田:いや、べつに仲良くなったわけではなく「認識」した程度です。連絡先を交換したわけでもなく。ただ教室でよく話しかけてこられました。彼が一方的に(趣味の)車のことや音楽のことやフィギュアのことなどを話すのをずっと聞いていました(笑。

大柴:山田さんも車や音楽などが好きなんですか?

山田:全く興味ないですね。興味はないんですが、人の話を聞くのが好きなので、相槌しながら聞いてました。彼は一通り自分の話したい事を話すと満足して帰っていきました(笑。

大柴:今とあまり変わらない(笑。そんな関係性なのに、中嶋さんが起業を志して山田さんをパートナーに選んだのはなぜなんですかね?

山田:授業でプレゼンをする機会が定期的にあるんですが、そういうのは自分はちゃんとやるタイプでした。ダサいプレゼンは嫌なので、資料も作り込んでたし、内容もまともだったと思います。そういうのを中嶋が見てて「いいな」と思ったのかもしれません。自分にないものを持ってる人間を集めて起業しようとしてたと思うので。バンドと一緒ですね。「俺がギター、ボーカルだからベースとドラムを探そう」というノリに近いと思います(笑。

大柴:なるほど(笑。中嶋さんも授業には出てたんですね

山田:興味のある授業にはちゃんと出てましたね。

大柴:じゃあ中嶋さんもプレゼンしてたんですか?どうでした?

山田:デザイン的なものはすごく良かったです。派手だったし、動きのある資料になってて「パワポでああいうことできるんだな」と感心しました。内容は大したことなかったですけど(笑。

大柴:めちゃ面白い(笑

前田敦子さんに教えてもらった「人間の心」

大柴:一旦時計の針を戻して、山田さんの子供の頃の話を聞いてみたいと思うのですが。一言で言うとどんな子供でしたか?

山田:生意気な子供だったと思います。年の離れた兄姉がいる末っ子で、人生を俯瞰して見ているような、冷めた子供だったと思います。口癖は「めんどくさい」でした。

大柴:高校1年の時に転校してるんですよね?

山田:はい。最初に入った高校は、東大を目指すような進学校で、東大を目指すので全教科やらないといけない。それが嫌だったんですよ。どうにも嫌でその学校を辞めて、他の学校に転校することにしたんですが、なかなか受け入れてくれる高校がなく、結局最初に入った高校とは全く文化の違う、偏差値は20下の高校に転校することになりました。

大柴:高校で転校するってあまりない事例ですよね

山田:そうですね。幸い両親は理解してくれました。転校した高校はいろんな人がいて、校風も自由だったので転校したことは正解でした。ただ、高校生活全体を考えて「面白かったか?」と問われると、そうではなかったと思います。

大柴:なるほど

山田:転校先の学校は大学に進学する人がほとんどいなくて、その中で自分は大学進学希望だったので、一人でいろいろと作戦を練りました。過去問を買ってきて、各大学の傾向を分析して、自分に向いている入学テストを実施している大学を選びました。結果的に青山学院に合格して入学することにしました。

大柴:高校時代はあまり面白くなかったということですが、何か趣味のようなものはなかったんですか?

山田:趣味というか、AKBにハマっていました。特に前田敦子さん。彼女に「人間の心」を教えてもらったようなものです。

大柴:どういうことですか??

山田:自分は幼少期からずっと冷めた子供でしたが、ある時、前田敦子さんが、望んでいないセンターに抜擢されて、その責任を果たすために努力をするが、彼女はそういう努力のようなものが表に出ないタイプで、誤解されがち。でも努力はしてるんですよ。そんな事を彼女が涙ながらに語ってる光景を見て、心を動かされました。

人の気持ちとか努力とかって必要なのか?とずっと思っていたんですが、彼女のスピーチを聞いて「努力って大切なんだな、人の気持ちって大切なんだな」と悟りました。その頃、哲学にもハマっていて、感情のような非合理的なものと哲学が結びついて。なので、AKBと哲学がその頃一番ハマっていたものです。

20代の経営者で30年後に一番大きくなれるのは中嶋

大柴:高校の転校という大きな出来事を経て、大学に入学し、クラスメイトにたまたま中嶋さんがいた。そして彼に誘われて一緒に起業した。ここまでの話をまとめるとこんな感じです

山田:はい。大学で「ベンチャー企業論」という講座を中嶋が受講していたんです。それに感化されて、彼は起業を決めたそうです。ある時「お前、どうせ就職できないだろ?一緒に起業しようぜ!」と言われ、「いいよ」と即答しました。

大柴:なぜ即答できたのですか?

山田:自分でも就職は向いていないと感じていましたし、いつか自分の人生の目標を達成するには、起業という道を選択する必要性があると考えていました。しかし自分にはトップに立って会社を引っ張るようなタイプではないとも自認していて、それができる人と起業するしかないと。中嶋はまさにそれができるタイプでした。

大柴:補完性のようなものですね

山田:はい。自分と真逆の人間なんですよ、中嶋は。自分が大嫌いなものが、彼は大好きだったりします。例えば「人に興味を持つ」「熱量を持って話す」というのは自分は全くないんです。「大人」と話す事も嫌い。でも中嶋はそういうのが好きなんですよね。

大柴:コミュニケーション力ありそうですよね、中嶋さんは

山田:いや、コミュニケーション力はないです。コミュニケーションって意思疎通ができる、こちらの言いたいことが伝わり、あちらの言いたいことを受け止めることじゃないですか。でも中嶋の言ってることは、よくわからないことも少なくないし、言葉が足りなくて理解できないとか、人の話もあまり聞いてなかったり(笑。

でも、人と接しようという姿勢がすごい。なんだかわからないけど、面白いやつだし、悪いやつじゃなさそうだな、って相手に思わせる能力はすごくあると思います。ただ、それが「コミュニケーション能力」かというと違うかなと(笑。

大柴:なるほど、確かに(笑。そう言えば、先ほど木下さん(Skyland Venturesパートナーの木下慶彦氏)に「ROXXの山田さんに取材行くんだけど何か質問ありますか?」って聞いたら「なんで中嶋をずっと信じ続けていられるのか?」って言ってて(笑。どうですか?

山田:そうですね、2つ理由があって、1つ目は「変わり続けている人だから」、2つ目は「上手くいくまで辞めないのが確実な人だから」ですかね。この2つがあれば失敗しないんですよ。

大柴:たしかに。そういうのがあるから信じ続けてる、一緒にやり続けているわけですね

山田:はい。彼はとにかく諦めない。失敗した事を自分の中に取り込む事ができる。頭の良さとかそういうのとは違うなにかを彼は持っている。

大柴:なるほど

山田:自分はNo2として、トップの彼には多くの失敗をさせたかったんです。失敗から学ぶことは多いので、会社にとって致命的になりうる事以外はやらせてきた。97%くらいは「いいよ、やろう」って言ってきた気がします。中嶋は昔は直線的に山を登ろうとしていた。それは焦りからくるものだと思うんですが、焦ると失敗して遠回りをする羽目になる。それを繰り返すことにより、失敗が身体に染み込んで、ようやく「一番高い山の登り方」を理解してきたように感じます。最近ようやく「急がば回れ」を本当に理解してきたように思えます。

大柴:成長を感じるわけですね

山田:そうですね。昔は短気で、短気が悪いわけではないですが、その悪い部分ばかりが出てしまっていた。でも失敗を重ねながらも前進し、いろいろな経験を身体に染み込ませていくうちに、正しいことが本能でわかるようになってきた。物事を本質的にロングスパンで考えるようになってきました。

ダメな部分をコントロールできるようになってきて、とても経営者としてバランス良くなってきた。僕は「現在20代の経営者で30年後に一番大きくなれるのは中嶋」だと確信しています。本気で覚悟を決めてるし、失敗を含むたくさんの経験を積んできている。現時点では遠い存在ですが、将来(青学の先輩であるサイバーエージェントの)藤田さんに匹敵する存在になれると思ってます。

緩んだ空気を一掃するため自ら先頭に立つ

ROXXのbackcheck

大柴:山田さんのnoteは昨年の9月で更新が止まっています。対外的なイベント出演なども同じ時期から極端に減ったように見受けられます。最後のnoteではリファレンスチェックサービス「back check」の立ち上げに集中するようなことが書かれていました

山田:コロナの影響もありましたが、対外的なことを全くやらなかった一年でしたね。ROXXはバンドがアルバムを出すように次々と新しいプロダクトを世に出していく会社にしたいと思っています。当時「agent bank」という人材データベースのプロダクトが主力に育っていましたが、その次のプロダクトを成功させないと自分たちの存在意義、未来はないと思っていました。

大柴:一発屋では終わらない、みたいな

山田:そうです。ですので、この「agent bank」に続くプロダクトである「back check」を絶対に成功させなくてはいけませんでした。でも当時社内は少し緩んだ状態でした。新しく入ってきた人も「イケてる会社に入ってきた」「agent bank」で安泰の会社」と思ってるようなとこがあった。そんなんじゃ未来はない。覚悟を持って本気でやらないと上手くいかない事を社内に伝える必要があったんです。それで自分が陣頭指揮を取り、自ら先頭で仕事に打ち込みました。メンバーに「本気」を要求するにあたって、自分が「本気」じゃなかったら伝わりません。

大柴:率先垂範ですね

山田:はい。もう倒れる寸前まで気力を振り絞って「back check」の立ち上げに奮闘しました。その結果、サービスは世の中に受け入れられ、社内の空気も締まりました。

大柴:ちなみに「agent bank」立ち上げの時はどういう感じだったんですか?

山田:あの時は「SCOUTER」しか事業がなく、しかも「SCOUTER」が伸び悩み、会社もブレ始めていたんです。社内の空気も悪くて、ある時メンバーの一人がキレたんです。「会社もサービスもブレブレじゃないか!」って。売上もなく、キャッシュもない、会社の空気も最悪。とにかく会社を存続させるために売上を作らないといけない。そこで「SCOUTER」に続く新プロダクトを作る必要になり、生まれたのが「agent bank」です。自分とキレたメンバー、そしてもう一人(現在の「agent bank」事業部長)の3人でやりました。

大柴:中嶋さんは「agent bank」に関わってないんですね

山田:はい、むしろ関わらせないようにしました。「俺らで売上作るからSCOUTERをやりきってくれ」って。中嶋にとって「SCOUTER」は愛着のあるサービス。社名も創業時のRENOからSCOUTERに変えたくらい。だからやりきらせたかった。それに、あそこで「agent bank」を中嶋がやるのは違うかなって思ったんです。

大柴:というと?

山田:彼自身「SCOUTER」はまだいけるって思ってたんです。だからそこに集中させたかった。それに「agent bank」は「会社が生きるための事業」だったんです、当時は。そういう生き残させるためのサービスに彼を関わらせたくなかった。彼には前向きな事をやり続けて欲しかったんです。彼には「一切関わらないでくれ」と意思表示し、自分が責任持ってやることにしました。サービス名もロゴも。そういうクリエイティブな事は中嶋が一番口を出したいとこですが、出させませんでした。

大柴:それでもやっぱり気になって口を出してきたりしませんでした?

山田:いや、それはなかったです。ロゴなんかも内心は「ダセェな」と思ってたみたいですが、口には出してこなかったです。「agent bank」は上手く立ち上がり、現在ではROXXの主力事業に育ちました。一方「SCOUTER」はサービスを終了しました。

大柴:でも中嶋さんとしては「SCOUTER」をやりきったし、失敗から学んだことも大きかったということですね

山田:はい。「agent bank」を立ち上げるまで、自分は管理系を主にやっていましたが、新規事業を立ち上げることができた。後日中嶋から「山田って事業作れるんだな」って言われました(笑。 自分しか事業を作れないという考えから、みんなもやればできるんだなというマインドに変化できたんじゃないでしょうか。

自分が語るビジョンは中嶋のビジョン

大柴:さて、そろそろ締めに入っていこうかと思うのですが、山田さんのこれからの展望など聞かせていただけますか?将来の夢とか

山田:将来の夢は明確で、高校を作りたいと思っています。

大柴:高校ですか?

山田:そうです。高校を転校するという経験もありましたが、とにかく高校時代はつまらなく、幸せだったとは言いきれない毎日を過ごしてきました。そんな僕が幸せになれるような高校を作りたいです。良くも悪くもROXXという会社は自分の人生のプロセスにすぎないんです。

大柴:なるほど

山田:先ほどもお話したように、中嶋はこの会社を続けるという覚悟を持っている。その礎となるような、中長期的な会社の成長の仕組み作りをCOOとしてずっとやってるんです。どこかで自分のゴールを見つけることができたら、その次のフェーズにもっともふさわしい人にCOOを譲り、自分は夢である高校設立に全力を注ごうと考えています。それまでは全力でROXXに集中します。

大柴:仕組み作りの進捗はいかがですか?

山田:新規事業が立ち上がった後に、ちゃんと事業を任せられる人材は育ってきました。ただ新規事業を中嶋、山田以外にゼロから生み出せるかというとわからない部分がある。そこもできるようになればかなりの前進です。

大柴:たしかにそうですね

山田:中嶋の人間的成長もあって、だいぶ組織として強くなってきたように思います。中嶋の言葉がだいぶ組織に伝わるようになってきたと思うので、そこは大きいですね。社長の言葉というのはどんなことでもいつも合理なんです。正しいんです。でも正しさがみんなに拒否されているような時期もありました。でもそういう空気感を社長が気にして、言いたい事を言えなくなったら終わりです。なので、自分がその間に入り、中嶋のビジョン伝達をサポートしてきました。自分が語るビジョンは中嶋のビジョンですから。

大柴:社長が言いたい事を言えなくなったら終わり…おっしゃるとおりですね。まさに「隠れたキーマン」「No.2」というお話をたくさん伺えました。ありがとうございました

編集部より情報開示:今回取材頂いたROXXは大柴氏がフェローを務めるEast Venturesの出資先でもあります。こちら情報開示としてお知らせいたします

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