蜂の巣駆除から高所の防サビまで——飛びながら遠隔操作で薬剤噴射できる、ドローン用デバイスが登場【動画】

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何事も課題に応じた対処を行うには、「モニタリング(状況確認)」と「アクション(行動)」が必要になる。人はこういったことを日常的に無意識に行っているが、これを遠隔で作業を行ったり、ロボットによって作業を自動化したりしようとすると、技術的なハードルは高いものとなる。

近年開発されている小型ドローンの多くも、その役目はモニタリングに終始しているものが多い。限られたバッテリでより長い時間飛行を続けたり、飛行時の敏捷性を確保したりすることを考えると、可搬重量が限られるためアクションに必要となる複雑な稼働部を搭載することは難しくなるからだ。

飲料容器メーカー世界大手の東洋製罐グループホールディングス(東証:5901)は今週、ドローンに着脱可能な遠隔型スプレー缶噴出装置「SABOT for Drone」を発表した。Sabot はドローンに装着することで、高所など人が作業しづらい場所で液体や薬剤を高圧で遠隔指示で噴出可能。液体や薬剤は同社が持つエアゾール包装技術でスプレー内に高圧充填されているため、ポンプなどの複雑な機構を搭載する必要がない。

用途はさまざまであるが、実際にデモで紹介されたのは、高所部にできた蜂の巣の薬剤を使った駆除、地面や壁面へのマーキング、樹脂を吹き付けることによる防錆・防水処理などの事例。装着するスプレーの容量には限りがあるので、広範囲の農薬散布や消火作業などには向かないが、従来、通行止にして高所作業車を手配する必要があったような作業はかなり省力化・短時間が図れるだろう。

東洋製罐が今回開発した初号モデルは DJI SDK を採用し、DJI Matrice 200 シリーズ V2 に完全対応している。産業用ドローンの中でも規格が標準化され、こなれているものという理由から DJI を選んだようだ。すでに大手建設会社や電力会社が SABOT 導入に向けた検討を始めており、スプレーに充填する内容物も大手薬剤メーカーや塗料メーカーと共同開発に向けた準備に入った。

1917年に設立された東洋製罐は昨年、創業から100年を機に次の100年を築く新たな開発・取り組みに向けたイノベーション活動「OPEN UP! PROJECT」を立ち上げた。SABOT はその取り組みの一つで、このデバイスの名は、不要な仕事を「サボる」に由来し、「TOBAS(飛ばす)」のアナグラムにもなっている。

同社は9月、シンガポール発エビ培養肉開発の Shiok Meats のシリーズ A ラウンドに参加した。東洋製罐グループホールディングスにとっては、これが初のスタートアップ投資で、食のインフラ企業の立場から、食糧・タンパク質危機、気候変動、海洋汚染の社会課題を抱えるアジア地域において、培養エビや甲殻類製品を食卓に届ける社会実装に向け共に取り組みたいとしていた。

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