シードラウンドには意味があるーービザスク、IPOまでの道のり

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ビザスク代表取締役の端羽英子氏

本稿はベンチャーキャピタル、サイバーエージェント・キャピタルが運営するサイト掲載された記事からの転載

感染症拡大という不安が社会を包んでいる2020年3月、ひとつの銘柄が東証マザーズに公開された。スポットコンサルという新たな「リサーチのカタチ」を提案したビザスクは、個人が自分の力で活躍できる世界を実現し、今ものびのびと成長を続けている。創業者の端羽英子氏は金融畑から起業サイドに転身した女性起業家で、先日、日経ウーマンの「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2021」の大賞に選ばれた。そんな彼女が上場までのプロセスで何を選択したのか、いくつかの質問でその過程に迫る。(BRIDGE編集部注:本稿はビザスク代表取締役の端羽英子氏に上場までの道のりを聞いたインタビュー記事の転載になります。質問はサイバーエージェント・キャピタル編集部、回答は端羽氏、です)

Q1:この市場を選んだ理由は

個人が売り手になれる時代。社会的な信用が貯まるようなものが出てきてわくわくしたんですよね。

端羽:「SHARE」っていうオレンジ色の本あったじゃないですか。

個人が売り手になれる時代。社会的な信用が貯まるようなものが出てきてわくわくしたんですよね。個人の稼ぐ力が強くなることがやれないかなと思ってました。それで起業しようと考えた時、当初は個人が売り手になれるECサイトを作ろうとしていたんですね。当時の同僚のそのまた同僚、みたいな方々にECサイトを立ち上げた経験のある方を紹介してもらってビジネスモデルの指南というのですか、1時間ほどいただいたんです。そうしたらそれがすごく参考になって。

リサーチにチャンスがあると

端羽:そもそもファンドにいたので社外の知見が投資検討などに役立つことは分かっていました。業界調査の必要性とか詳しい人に話を聞くことの優位性は理解していましたから、これはビジネスになるぞと。小さな単価から大きな単価までとにかく調査をするんですよね。自分自身が業界調査にお金をかけるものだ、という肌感覚があったのは大きかったです。一人一人がやってきた知見を生かせれば活躍したい個人の気持ちにも寄り添えるし、買い手の気持ちも分かる。

やりたいことが見つかって、最初のハードルは

端羽:問題はアドバイザーの方です。

2015年にようやく5000人のアドバイザーが集まったんですが、そこまではずっと苦労してました(笑) とにかく知り合いづてに探して欲しいとお願いしたり、私たちのサービスに「ビザスクlite(現名称)」っていうのが当初からあるのですが、これはアドバイザーの方々のためのものでしたね。やはりリアルな案件が見えていないと登録してくださらないし、アドバイザーの方々も様々で、こういう案件でリクエストがあるんだ、ということを見せないといけない。それ以外にもあちこち登壇してお話をしたりとか、色々やりました。

Q2:限られるリソース、やらないと決めていたことは

端羽:関係のない受託や私が個人で外で稼いだり、というのはなかったですね。ただ、国の案件は受けました。本業そのものだったので。実は外からお金を頂いた最初の仕事は経済産業省の案件だったんです。成熟産業から成長産業に人の経験が流動化する実証実験というテーマで、これはまさに自分たちの仕事だ!と思って。

スタートアップでよく課題になる「最初のエンジニア」はどうやって見つけた

端羽:(金融畑で)当然こういった開発をする知り合いはいないので、外注で始めなきゃいけないと思ってました。しかし外注するにも勝手が分からないので、知り合いに「目利きをしてくれる人を紹介して欲しい」と出会ったのが、今年までCTOをしてくれた花村なんです。そんなにふわふわした内容だと外注とかできないですよ、プロトタイプでも作りましょうかと言ってもらって、もうそこから離さないぞって(笑) 本当にすごいラッキーだったと思います。

そんなこんなで、最初に開発を手伝ってくれる方がいらっしゃって、正式公開のタイミングでフルタイムになってくれたんですけど、フルコミットするまでの前の時間が1年以上ありました。

当時を振り返ってこれをやっておけば、というものは

端羽:ECモデルのダメ出ししてくれた人に出会うのに2カ月ぐらいかかったので、もっと早く会いたかったですね。当時、ソーシャルランチってあったじゃないですか。あれを使って自己紹介にこれこれこういうサービスを作りたいって書いて、会いに行ってました。あと渋谷のシェアオフィスみたいな場所でイベントスペースがあったりすると、そこで人に会いまくったり。とにかくアドバイスはたくさんもらいました。

Q3:PEファンドでの投資経験者として、最初の投資家をどう選んだ

当時、女性の起業家には厳しい時代でした。成功率が低いとか「子供産んで仕事辞めてる人もいますよね」みたいな意見を言った投資家の方もいました。

端羽:シードのラウンドは意味があるんです。

今で言うエンジェルの存在ですね。私自身は個人でスタートアップ界隈には親しい人がいなかったし、お金だけであれば金融出身の知り合いにいけばよかったかもしれません。でも自分も金融出身なので、金融の人間にはないものを持っている人が欲しかった。スタートアップ界隈のネットワークとか、採用ブランディングとか、メディアとのつながりとか。

例えばメディアでもスタートアップ専門に扱っているような媒体は別として、大手のメディアは資金調達を受けていないとなかなか取り上げてくれなかったりします。日経新聞に取り上げてもらって、ビザスクのサイトを見た方が安心してくれたり。

あと当時、女性の起業家には厳しい時代でした。成功率が低いとか「子供産んで仕事辞めてる人もいますよね」みたいな意見を言った投資家の方もいました。面と言われるとびっくりしますよね。ベンチャーユナイテッドやサイバーエージェント・ベンチャーズ(現在のサイバーエージェント・キャピタル)は女性だからということは一切なかったです。

Q4:最重要指標はどう決める

最初は数字が取れませんので、人を説得できるだけの仮説と「思い」を持ってそれを語れるかじゃないでしょうか。

端羽:公表しているところで言うとアクティブなクライアント数、クライアント毎の単価、アドバイザー数なんですが、実際はもっとすごく細かい数字で管理していて、これは最初からそうでした。数字ってコンパスみたいなもので、例えば売上は階段上に成長していったとしても、伸びてる数字と伸びてない数字が見えてきます。ここは伸びてるからいいけどここは伸びてないから止まっちゃうんだよね、じゃあ解決しようかとToDoに落とせます。とってもロジカルな世界なのでやりやすいんです。

KPI設計で苦労したことは

端羽:最初の一年は暗中模索でした。辛かったのは数字の分析は得意なのに、分析するための数字がないという時期がすごく長く続いて。施策のせいで当たったのか、たまたまメディアに出たから動いたのか、数字が小さいと何でも動きやすくなってしまうので、こういう分析ができない時期に「これに違いない」と思ってやれるかどうかはすごく大切です。

数字が曖昧な時にどうやって推進する

端羽:成熟産業に投資していた経験からも、数字で検証できるレベルであれば心を一つにしやすいのです。しかし、最初は数字が取れませんので、人を説得できるだけの仮説と「思い」を持ってそれを語れるかじゃないでしょうか。思いが強い方がやった方が良い。どうせ失敗するので(笑)ある仮説に対して誰かが強くこれをやりたい!、と思えるかどうかが大切かなと。

Q5:創業時、IPOをどのように捉えていた

スタートアップは事業を作るけど、IPOプロセスで会社を作っていくことになる。

端羽:起業したばかりの時は買収かIPO(株式公開)かについては正直、どちらでもいいと思ってました。

しかし(前職のPEファンドでは)散々、上場コストって高いですよねって言ってましたし(笑)、私達が資金調達したころの日本では大きな買収は起こりにくかった。投資するVCはホームラン狙いですから当然、IPOぐらいしないとその規模にならない。だから最初はお作法的に「IPOします」って言わなきゃいけないと思ってた時期もありました。

でも、事業をやっていくなかで意義が見えてきたんですよね。例えばみんなは嫌うかもしれないけど、働くためのルールとか。スタートアップは事業を作るけど、IPOプロセスで会社を作っていくことになる。だって自分たちを全部ひっくり返してみせて、監査法人さんや証券会社さんから「社会の公器になって良いよ」というお墨付きを貰うわけじゃないですか。これは事業戦略としても大切なことだったし、本当に意味があると思ったのでこれはみんなで目指そうよと。

上場終盤に差し掛かった時期の資本政策で気をつけたことは

端羽:最初から海外を頑張るつもりだったので、2回目のラウンドではDCMさんにリードしてもらいました。それとメガバンク系のVCです。驚いたことに、当時はまだ、サイバーエージェントさんですら大企業からみると(信用度が低い)ベンチャーだと思われることがあって、営業する上においてはやはりもっと固めの名前が必要だったんです。それでメガバンクに株主になってもらいたいと思って、みずほキャピタルさんに参加いただきました。そんな感じで海外、営業、採用、こういう形で非常に明確な期待値を持って投資についてはお話させてもらったのはありましたね。

組織も同時に大きくなる。マネジメントで苦労した点は

端羽:もともとマネジメント経験があったわけじゃないんですよ。そういう意味では、マネジメントすること自体がすごいチャレンジでした。例えば、みんなの前で私はこれをこういう風にしたいんだとか、ここまで言葉にしなきゃ分からないのかとか。何冊も本を読みましたし、色んな人たちの話も聞きましたね。自分が思ってる以上に人には伝わってないとか情報共有がされないと面白くないから、一生懸命やるべしとか、基本的なことを大事にし続けたいと思っています。

元々、リーダーシップというよりは分析が得意な人、という見立てを前職の同僚から貰っていたので、まさか社長やって上場するとはとても思っていなかったと思います(笑)マネジメントってスキルじゃないですか。今はまだ100人規模ですからこれを500人にしたらどうなるか、そのスキルは身につけなきゃと思ってます。

ーーありがとうございました。

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