AI司書が本を推薦、子供向け読書習い事「ヨンデミーオンライン」が正式ローンチ——シード調達も明らかに

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Image credit: Yondemy

子供向け読書習い事サービス「ヨンデミーオンライン」を運営する Yondemy は23日、シードラウンドで W ventures と F Ventures から資金調達していたことを明らかにした。調達額は明らかにされていないが、数千万円程度とみられる。創業者で代表取締役の笹沼颯太氏による bosyu.me への投稿内容などから推測すると、調達時期は今年8月前後とみられる。

Yondemy は今年4月、笹沼氏をはじめ現役東大生数名で起業。笹沼氏らが通っていた筑波大学附属駒場中・高等学校で、教育に読書を取り入れる分野で第一人者の澤田英輔氏の指導を受けたこと、講師を務める塾で英語多読(extensive reading)を担当していたことなどから、児童教育の一環で読書にフォーカスしたサービスを開発することを思い立ったという。

親御さんは子供に本を読んでほしいと思っている。しかし、子供は本を全然読んでいないのが現状だ。学校から帰ってきて、寝るまでの自由になる、例えば6時間のうち2時間とか、ずっと YouTube や TikTok をいじっている。

それはひとえに、読書という体験を教えてくれないから。本に触れる機会が無かったり、子供が幼い頃は親が本を読み聞かせても、その読み聞かせ以降のフォローアップが無い。(笹沼氏)

笹沼颯太氏

筆者も本を多く読む方ではないし、学校に提出する読書感想文の類を書くのは好きではなかった。知識を得るコンテンツのフォーマットは多様化したので、必ずしも読書に依存する必要がないようにも思う。ただ先般、弱冠16歳の芦田愛菜氏が哲学的な発言をして注目を集めたのは気になった。若くして彼女が考えの境地に辿り着いた背景には、年間180冊に及ぶ読書量が大きく関係しているようだ。

子供の習い事にはよく「読み、書き、算盤」と言われるが、読書をして知識を獲得し、そこから自分なりの洞察力を高めるという鍛錬の機会は、他の〝派手な〟習い事に押されてか、あまり目にすることがない。子供に読書習慣をどうやって身につけてもらえばいいのかわからない親、そして、そういう体験を日常で得にくなった子供にキッカケを与えてくれるのがヨンデミーオンラインだ。

ヨンデミーオンラインがターゲットとするのは5歳から14歳までの児童ユーザ。習い事の授業料に相当する料金(月額2,980円)は保護者が支払う。ヨンデミーオンラインにはさまざまな本のデータがタグづけされており、ユーザの好みやそれまでに読んだ本の評価履歴(選択式回答)に基づき、AI ライブラリアン(司書)が次に読むべき本を推薦してくれる。

現在は、本のおすすめをしているだけで、本の提供はしていない。ユーザさんは、その本を図書館で借りたり、ネットで買ったりして読んでいる。児童書は著作権が複雑で電子書籍化されていないものが多く、ほとんどのユーザは紙の本で読んでいる。(笹沼氏)

本の構成要素に基づき、AI が判断できるデータのタグ付けは Yondemy の社内メンバーや、資格を持ち児童書などに詳しい全国の学校司書らに手伝ってもらっているという。成人が読む文芸書に比べると、児童書は新作が出て旧作が忘れられるサイクルも速くない。情報プールを蓄積していくことも比較的容易だ。

ヨンデミーオンラインでは、ユーザに読書を継続してもらえるための工夫も多く取り入れている。読書後に簡単な感想レビューを投稿してもらうことで、同じ本を読んだユーザ同士が「本の友」コミュニティを構築し、互いに意見を交換できる場を用意している。サービス開始から日が浅いので精緻な評価は難しいが、平均的なサブスク SaaS よりかなり低いチャーンレートを記録しているようだ。

サービスの正式ローンチを受けて、Yondemy では2021年末までに、ユーザ1,500〜2,000人の達成を目指したいとしている。

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