ヤマトHDが中国配送ロボ「YOURS Technologies」に出資ーーラストワンマイルの課題解決へ

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ニュースサマリ:ヤマトホールディングスは中国で自動配送ロボットの開発・事業展開を進めるYours Technologies(以下、Yours)への出資を公表している。出資額や条件等の詳細は非公開。出資は今年3月にグローバル・ブレインと共同で設立したファンド「KURONEKO Innovation Fund」の初号案件となる。今後、両社は技術交流などを通じて国内での自動配送ロボットの活用に向けた検討も開始する。

Yoursは2018年創業のスタートアップで中国北京を拠点に、食品などのデリバリーができる小型の自動走行ロボットを開発している。北京にある50箇所以上のショッピングモールや歩行者天国などの場所で自動配送の契約を結んでおり、実際に食品などのデリバリーを実施している。

話題のポイント:今年3月に公表されたヤマトHDの新ファンドの初号案件です。グローバル・ブレイン側でこのファンドを担当するチームに聞いたのですが、配送ロボット以外にもかなりの数で投資検討が進んでいるそうで、具体的な技術やサービス範囲の明言はありませんでしたが「幅は広い」というお話でした。

たまたま初号案件が配送ロボットというわかりやすい物流テクノロジーでしたが、別にこっち方面をものすごく攻める、というわけではなさそうです。さておき、配送ロボット(ドローン)はここ数年目まぐるしい進化を遂げています。AmazonのScoutやStarshipTechnologies、国内はZMPや楽天が中国EC大手の京東集団と共同でテスト運用を開始するなどの動きがあります。

今回の出資にあたってファンドのチームは全世界のドローン案件を見てまわったそうです。その中でこのYoursが採用された理由は圧倒的なコスト優位というお話でした。当然ながらヤマトHDではこれら自動配送に関する調査や研究は進めており、一番の問題点はどうやってコストを下げるかという点にあったそうです。

ショッピングセンターで配送するYoursの自動配送車(Image Credit : Yours

一般的に自動運転走行にはLiDAR(ライダー)センサーが使われることが多いです。レーザー光を使って対象物までの距離を計測するセンサー技術なのですが、とにかく価格が高い。数万円から数百万円のものまであるそうなので、当然ですが、自動運転させるにはコストもそうですし盗難などの危険性も伴うわけです。

そこでYoursはこのLiDARを取っ払って一般的なカメラを使うことでコストを劇的に下げることに成功しました。具体的な価格比較は難しいですが桁がひとつ落ちるレベルだそうで、その一方、Yoursはこういった高価なハードウェアの代わりにソフトウェアを活用しているんですね。特に彼らのコンピュータービジョンのアルゴリズムが優れていて、こういったハードウェア構成でも高精細の地図を作成することが可能というお話でした。

用途としては広範囲のエリアというよりは、彼らが導入を済ませているショッピングモールや一定範囲のエリアでのフードデリバリや物流で、今後、こういった実際のサービス展開を続けながら、MaaSのようなプラットフォームビジネスへの拡大も可能性としてはありそうでした。

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