非接触時代の功罪:無人レジが個人特定せずに「万引き」を検出する仕組み(5/6)

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(前回からのつづき)しかし、2018年のThe New York TimesFast Companyのインタビューでは話が異なっている。Standard Cognitionの共同設立者兼COOのMichael Suswal氏は、Standardのプラットフォームが買い物客の軌道、視線、速度を調べて、盗難を検出すると店員にテキストメッセージで警告するとTimesに語った。(StandardのWebサイトのプライバシーポリシーには、生体認証識別子を収集せず、「特定の身体的特徴」に関する情報のみを収集しているとある)また、Standardが100名の俳優を雇い、サンフランシスコのデモストアで何時間にも渡って万引きやその他の行動を認識するようにアルゴリズムを訓練したとも語った。

Suswal氏はTimesにこう語った。

「私たちは立ち去る行動がどのようなものかを研究しています。万引きしようとするとき、歩幅は大きくなり、目線はドアの方へ向けられます」。

2019年にStandardが申請した特許は、同社が歩様を追跡するシステムを開発したという見解を裏付けているようだ。この文書には、一連の画像でトレーニングされたアルゴリズムが店の棚の間にある通路を移動する買い物客の身体的特徴を識別できると書かれている。このアルゴリズムは首、鼻、耳、肩、ひじ、手首、腰、足首、ひざなど19箇所の身体上のポイントの内ひとつを識別するように設計されている。

VentureBeatへのeメールによる声明の中で、Standardの広報担当者はこう述べている。

「この特許は私たちが提供するレジ機能の核となる部分、つまり個人を特定しない映像追跡システムのみに関するものです。意図の認識や万引きに関するもののために利用されることはありません。私たちは歩様の認識やその他の生体認証はしていません。ご指摘の以前のメディア記事との不一致を解消できて喜ばしく思います。大切なことは、私たちのコンピュータビジョンベースのシステムが個人を識別できないということです。買い物客がスマートフォンでチェックインすることによってのみ、私たちは支払い情報を得ることができるのです」。

サンタクララを拠点とするAiFiもまた、同社のレジなしソリューションが認識できるのは定義された店内での購買行動に含まれる「疑わしい行動」だけだと述べている。Amazonと同様に、同社は合成データを使って一連のトレーニングおよびテストデータを作成しており、顧客データは必要としない。

広報担当はVentureBeatにこう語った。

「シミュレーションでは、私たちはヘアスタイル、髪の色、服装、体型をランダムに変化させて、多様で偏りのないデータセットを確保しています。私たちはユーザーのプライバシーを尊重し、顔認識や個人を特定できる情報は用いません。ショッピングの未来を変えて、自動化され、プライバシーを尊重し、インクルーシブにすることが私たちの使命です」。

Accel Roboticsが2019年に出願した特許は、同スタートアップの万引き防止ソリューションが、個人を特定することのない匿名のタグを選択的に使用することを明示している。サーバーはカメラ映像を時系列で分析することによって動きを個人に帰属させることができ、悪意を持って棚の商品を手に取ったかどうかを推測することができる。「識別特性」が個人ごとに保存され、取得されうるのなら、買い物客の行動は複数回の来店にわたって追跡可能で、過去にその店で万引きをした人物を特定するのに利用できる。

特許にはこう書かれている。

「(このシステムは)個人が商品代金を支払わずに店を出ると万引きを検出するように設定できます。具体的にいうと、客の手元にある商品のリスト(すなわちショッピングカートの中身のリスト)が表示され、従来のレジ画面でレジ係が確認するかもしれません。レジ係はこの情報を使って、買い物客が店から何も持ち出さないか、または持ち出すすべての商品を見せ、代金を支払うことを確認します。たとえば、もしも客が2つの商品を店から持ち出していれば、その客は2つ分の商品代金を支払うべきです」。

(次につづく)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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