スマホで「お手軽分身術」、3Dアバターでファンイベントにバーチャル参加ーーミクシィとVRCの共創 vol.1

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VRC代表取締役社長 謝氏

本稿はKDDIが運営するサイト「MUGENLABO Magazine」掲載された記事からの転載

課題とチャンスのコーナーでは毎回、コラボレーションした企業とスタートアップのケーススタディをお届けします。

ミクシィのエンターテインメント事業ブランド「XFLAG」は昨年12月、独自の3Dインフラサービスでリアルな3Dアバターを生成する「VRC」と連携し、スマートフォンから参加可能なバーチャルイベント「XFLAG VIRTUAL STAGE at SHIBUYA SKY」を開催しました。

イベントは「東京ヤクルトスワローズファン感謝DAY2020」のライブ配信をバーチャル空間に集まった参加者たちと一緒にリアルタイムで視聴するというものです。感染症拡大によって来場制限を余儀なくされたファンイベントをバーチャル開催することで、単にライブ配信を視聴するだけでなく、自分の3Dアバターを通じて、喜びや驚きなどの感情表現を共有できるのがこの企画の特徴でした。

バーチャル開催された「東京ヤクルトスワローズファン感謝DAY2020」の様子

参加者はXFLAGが提供するアプリをダウンロードし、自身のスマートフォンで写真を撮影することで、3Dアバターを生成できます。また、このアバターはバーチャル空間内を動き回ったり、喜びなどの感情表現を示すことも可能です。

ライブ配信の視聴だけでは、参加者としての感動を会場に伝えることができませんが、この方法であれば、多くのファンと一緒に会話やモーションを楽しみ、応援する機会を創出することができるようになる、という具合です。

両社の取り組みは感染症拡大によって生じている現実世界の社会問題を、「バーチャル空間」という方法で解決する目的で実施されました。そもそもミクシィ側でバーチャル空間でのコミュニケーションサービスを検討していたことと、VRCとしてもエンターテインメント・スポーツ・アパレル業界においてのリアルアバターの展開を見込んでおり、両社のビジョンが合致したことから実際の共創に至ったそうです。

3Dアバターが解決する課題

VRCは、実在する人物の全身 3D モデリングスキャンを0.2秒で行い、わずか20秒で3Dアバターを生成する技術を有する3Dインフラサービスを提供するスタートアップです。今回のようなエンターテインメント事業に加えて、アパレルやフィットネス業界からも多くの注目を集めています。

VRCの説明によるとやはりミクシィ同様、エンターテインメント業界では感染症拡大によってリアルイベントに制限が出ていることから、代替のコミュニケーションを求める声があったそうです。同社の代表取締役社長、謝 英弟(シェ―・インディー)さんは利用企業の声として3Dアバターの需要をこうお話されます。

「例えばアパレル業界では、ZOZOスーツやBodygramなどのソリューションにある通り、サイズ情報を収集することは定着してきました。しかしこれだけでは限定的で、試着や来店促進を想定した場合には『試着した見た目』情報も必要になってきます。VRCのアバターであれば、サイズと同時に見た目の情報も生成可能です。また、フィットネス業界でも、自宅でのトレーニングや健康管理を進める流れの中で、これまで体型を計測する手段が少なく、運動して体型がどう変化したのか、という時系列で比較可能な技術を探しているというケースもあります」。

ところでVRCがこれまで展開していたのは、設置型のスキャナーで3Dアバターを生成する方法でした。しかし感染症拡大によるタッチレス対策などが必要になり、スマホなど既存のデバイスを使った技術を開発したそうです。今回のファンイベントでもその技術が活用されました。

しかしこの場合はまだ課題もあるそうで、3Dアバターを撮影する際、精度を出すためにどのようにユーザーが撮影環境を整えるかという点です。撮影環境が異なる中で安定したアバター生成するためにはどのようなUI/UXが必要か今後検討が必要というお話です。謝さんは今後の3Dアバター技術の活用で多くの社会課題を仮想的にシミュレーションできると語られていました。

「高齢化・人口減少・労働力不足・感染症拡大・医療の高額化&リソース不足・都市型集中など多くの社会問題がある中で、各産業へ貢献できる革新技術・持続性のある社会システム構築や予防を目的とした健康管理システムなどが求められています。そんな背景の中で、VRCは安全かつ自由に使えるクロスボーダーな3Dインフラを提供することで、実生活ではどうしても解決できない課題をバーチャル空間でシミュレーションし、より良い生活を実現していきたいと考えています」(謝氏)。

次回はミクシィサイドでこの共創事例に取り組んだチームの話題をお届けします。(次につづく)

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