コロナ禍でも中国を代表するVC2社が大規模資金調達、背景に世界中の投資家が中国経済を楽観視

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Image credit: Andy Jarrige via Pixabay

ByteDance(字節跳動)や Didi Chuxing(滴滴出行)など、中国で最も成功しているテック系スタートアップの投資家である GGV Capital(紀源資本)は1月28日、同社の20年の歴史上最大規模となる25億米ドルの資金調達ラウンドをクローズしたと発表した。

中国のハイテク成長から利益を得ようとする中国内外の LP から VC への資金流入が増加している中、アメリカと中国を拠点とする GGV Capital の最新の資金調達が実施された。北京を拠点とし、フードデリバリアプリ「Meituan(美団)」やスマホメーカー Xiaomi(小米)への投資で知られる Qiming Venture Partners(啓明創投)は26日、9月の12億米ドルの増資に続き、新たに29億人民元(約472億円)の調達ラウンドをクローズしたと発表した

これら2つの取引は、世界経済の減速に伴い、成長する中国のテック業界に外国人投資家が資金を注入する傾向が強まっていることを示している。投資家やアナリストは、昨年の IPO ブームを受けて、外国 LP が中国のテック系スタートアップに楽観的になっていると述べている。一方、中国は金融市場を徐々に開放しており、海外投資家へのアピール度が高まっているという。

2つの大きな資金調達案件

GGV Capital は今回の資金調達ラウンドで、GGV Capital Ⅷ ファンドに14億6,000万米ドル、GGV Capital Ⅷ Plusファンドに3億6,600万米ドル、Discovery Ⅲ ファンドに6億1,000万米ドル、Entrepreneur Ⅷファンドに8,000万米ドルを調達したと発表した。同社は、ニューリテール、クラウドベースのエンタープライズサービス、ソーシャルメディアなどの分野への投資に注力すると述べている。

また、近日中に34億人民元(約554億円)の資金調達ラウンドを完了する予定で、運用資産総額は約92億米ドルに増加するとしている。同社は今回の資金調達ラウンドでの投資家の名前を明らかにしていない。同社はこれまでにも、北米を拠点とする年金基金や家族経営の資産運用会社、大学などから米ドル建ての資金を調達してきた。GGV Capital の担当者はコメントを避けた。

Qiming Venture Partners の最新の資金調達ラウンドは、上海と北京にある2つの政府主導のガイダンスファンドと、国内の保険会社数社から支援を受けたと TechNode(動点科技)が報じている。9月にクローズした同社の12億米ドルの資金調達ラウンドは、主にアメリカの大学の寄付金や年金基金によって支援されていた。

Qiming Venture Partners の創業マネージングパートナー  Duane Kuang(鄺子平)氏は、26日の同社声明で次のように述べている。

国内外のトップ LP は、新型コロナウイルス感染拡大や世界環境の変化の中でも、中国の革新的で発展途上の科学技術に投資する我々の投資戦略を楽観視している。

米ドルファンドは、より積極的になる

中国の VC 活動を追跡する PE Data のデータによると、2020年、全市場に流入する資金が39%近く減少したにもかかわらず、中国の米ドルファンドは前年よりも12%多くの資金を調達した。

中国の VC 活動データベース Itjuzi(IT 桔子)のリサーチディレクター Liu Xiaoqing 氏は、TechNode に次のように語った。

中国の VC 企業への米ドル資金が2020年に増加したのは、中国政府が外資規制を緩和したことと、海外の LP が中国市場に自信を持っていることが理由だ。

アメリカの LP は中国のテック企業にますます魅力を感じており、いくつかの中国テック企業が2020年に株式公開し、投資家に高いリターンを提供した後、市場は急速に発展している、と彼女は付け加えた。昨年の最大の中国テック企業の IPO には、EV メーカーの Xpeng Motors(小鵬)Leading Ideal(理想汽車)、ゲーム大手 Netease(網易)の香港での二重上場などがある。

VC の支援を受けた中国の動画共有アプリ「Kuaishou(快手)」は、新型コロナウイルス感染拡大以来、世界最大の株式公開に向けて準備を進めている。同社は香港証券取引所で約50億米ドルの資金調達を目指しており、時価総額は609億米ドルに達すると見られる。Kuaishou の2018年1月の資金調達ラウンドでの時価総額は180億米ドルで、初期投資家は233%近い純利益を期待していることになる。

より明確なイメージ

アメリカの投資家の中国テック企業への関心は昨年、トランプ政権時代の2つの政策によって阻まれたが、これまで中国テック企業に対する過度で恣意的な制限に嫌悪感を示してきたバイデン政権の兆候が楽観論を煽っている。

アメリカ労働省は昨年5月、中国の米ドル VC 企業の重要な出資者であるアメリカ連邦年金基金に対し、中国企業への投資を禁止するよう助言した。11月にはトランプ前大統領が、中国軍に関連すると判断された企業へのアメリカからの投資を1月28日から禁止する行政命令に署名した。スマホメーカーの Xiaomi、中国三大通信事業者、中国チップメーカー SMIC(中芯国際)などがブラックリストに入っている。

しかし、トランプ氏の中国に厳しいハイテク政策を緩和していることの表れとして、新たに就任したバイデン政府は1月27日、特定の中国企業への投資禁止措置の実施を5月27日まで延期すると発表した。

世界がコロナウイルスの感染拡大によってもたらされたビジネスの絞め殺しに対処する中、中国経済は先週発表された政府のデータによると、2020年に2.3%の成長を遂げた。1月23日にに発表された国連貿易開発会議(UNCTAD)の報告書によると、中国は2020年に国外からの投資を1,630億米ドルもたらし、世界で最もホットな国外直接投資先としてアメリカを抜いた。2019年の国外からの資金流入額は、アメリカが2,510億米ドル、中国が1,400億米ドルだった。

LP は長期的な計画を立てている。彼らは2021年の中国経済に自信を持っているだけではない。彼らは少なくとも次の10年の中国については自信を持っている。(Liu 氏)

【via TechNode】 @technodechina

【原文】

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