1時間100円で居酒屋をリモートワーク利用可、神戸市とスペースマーケットが協力

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「KOBE  Work  Space  Share」で利用できる店舗の例

ニュースサマリ:スペースシェアプラットフォームを提供する「スペースマーケット」と神戸市は2月4日、事業連携協定を締結し、市内飲食店を対象とした空きスペースをワークスペースに利活用できる支援策「KOBE  Work  Space  Share」を開始した。

感染症拡大によって飲食店への来客が激減する中、空いたテーブルを一席単位でリモートワーク目的の就労者に対して貸し出すためのマッチングを実施してくれる。リモートワークを指示されているにも関わらず、家庭の事情で自宅での勤務が難しいようなケースに対し、一律1時間100円でスペースを貸し出す。

一方の店舗は神戸市における中小規模(※)の飲食店が対象となる。インターネット環境を提供できることが条件で、サービスの利用時間は20時まで。2月4日から3月31日までを期間としている。期間中にスペースを提供してくれる店舗に対しては、利用料にかかる手数料(30%)の半分を市とスペースマーケットが補助という形で負担してくれるほか、スペースマーケット内に設置された登録飲食店の一覧ページに自店舗の紹介情報を無料で掲載する。なお、ページへの情報登録は各店舗で実施する必要がある。(※中小企業基本法第2条に規定する中小飲食店)

リモートワークに店舗を使いたいユーザーは専用ページから神戸市の店舗と日時を選んで事前に予約・決済を済ませ、当日に来店すれば利用できる。お茶とお水のみ持ち込みが可能で、複数人での会議のような利用方法については感染症拡大防止の観点から不可となっている。スペースマーケットはリモートワーカーと空きスペースをマッチングする「スペースマーケットWORK」を昨年8月から提供しており、今回の神戸市との取り組みはその一環となる。

話題のポイント:感染症拡大・緊急事態宣言下という前提はありつつも、いろいろな可能性が感じられる取り組みではないでしょうか。特に気になったのは「1時間100円」という価格設定です。リモートワークや普段からカフェなどでお仕事をしている人にとっては気兼ねなく使えるありがたい設定ですが、当然ながら店舗側には売上的なメリットはほぼありません。また、既存でコワーキングスペースなどを運営している事業者にとっては厄介な企画になるかもしれません。ということでどのような狙いがあるのか、スペースマーケットの重松大輔さんと神戸市でこの企画を担当された企画調整局つなぐラボ・長井伸晃さんにお話を伺ってきました。

飲み会を忘れて欲しくない

取材に先立って実施された神戸市の広報会見

居酒屋の空き時間をこういったリモートワーカーに提供するというアイデアはこれまでにもあったそうです。ただ、小さな飲食店が単体でやるには集客や周知に課題が残ります。元々がカフェやお昼の営業をやっていればまだ想像はつきますが、さすがに夜を中心に営業していた居酒屋にお客側もリモートワークしに来店するというのはなんらかの交通整理してあげないと難しいでしょう。

そういう意味でも神戸市という行政が仕組みとしてこういう活動を先導することに価値はあります。また、今回の会見で飲食店の方が「今、売上が落ちていることよりも、忘れられてしまうことの方が怖い」とお話されていたのが印象に残ります。確かに筆者も飲み会・外食がめっきりと減って、対面で会うことの意味というのをさらに考えるようになりました。

ということで今回の施策は直接的な売上支援というよりは、今後に向けての集・送客支援が期待値の中心になりそうです。

しかも単に集めるだけでなく、事前の予約決済など、仕組みの部分で交通整理してくれるのはメリットです。例えば現時点でもお昼時に来店のあるお店であれば、そこをリモートワーカーに占領されてしまうと逆に痛手になってしまいます。今回の取り組みでは時間を分けて予約を受け付けることができるので店舗側である程度のコントロールが可能です。

実行にあたっての課題はやはり店舗側がどれぐらい集まるかという点になると思います。現時点ではまだ数店舗しか利用できず、これから行政における各飲食店との連絡網を使って説明会などを開催し、順次拡大するというお話でした。下手に店を開けるぐらいなら休業してしまったほうが人件費などの面で被害が少ないとなるのか、それともこうやって仕組みに乗ってお店を開けて、少しでも利用の機会を増やそうとするのか、各店舗の反応は気になるところです。

また、リモートワークをする側への周知も重要です。実際に店舗側で用意をしてみたが誰も利用しなかった、ではやはり期待外れになってしまいます。今回、行政側の補助として店舗側が支払う利用手数料の一部負担が挙げられていましたが、それ以上に利用側への告知と力強い送客は誰もが期待するところではないでしょうか。

さておき、施策が上手くいくかどうかも重要ですが、こういう時期に官民が互助の精神でなんとかよい仕組みを探し出そうという動きはさらに広がって欲しいと思います。

※この記事はClubhouseで公開取材した内容を元に、お二人の合意を得て記事化しております。

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