荷物預かり「ecbo cloak」がサービスを再開、コロナ禍を経てインバウンド減でも原点回帰に転じた理由とは

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Image credit: Ecbo

新型コロナウイルスが感染拡大し、最初の緊急事態宣言が発出されたのが昨年4月7日のこと。この宣言をきっかけに、サービスの停止やピボットを余儀なくされたスタートアップは少なくない。ecbo が2017年に開始したオンデマンド荷物預かりサービス「ecbo cloak」はインバウンド需要を追い風に順風満帆に見えたが、宣言発出から6日後の4月13日にサービス停止を余儀なくされた。

サービス停止から1ヶ月後の5月12日には新サービスとしてレストランキット「ecbo kitchen」をローンチ。ecbo が荷物預り拠点として開拓した飲食店の売上を下支えするとともに、ecbo 自身の事業の再起を図ったものだったが、結局2ヶ月後には ecbo kitchen のサービスを終了した。フードデリバリでもミールキットでもない新業態の開拓は興味深い挑戦だったが、いささかハードルは高かったのかもしれない。

結局、ecbo は原点回帰することになった。創業者で代表取締役の工藤慎一氏は、「モノの循環を滑らかに」したいとの思いから ecbo cloak を立ち上げたと語っていたが、この目標に荷物預かりサービスを入り口に向かっていくことを再確認したようだ。ecbo cloak がサービス停止をしたのは新型コロナが原因ではあるが、このタイミングは「渡りに船」でもあったように見える。

ecbo cloak の開始から3年が経過し(サービス停止した2020年4月時点で)、当初は突貫でサービスを作ったため、いろいろ改善したい点が出てきていた。予想を遥かに上回る利用があったため、サービスを一度止めないことには手を入れるのも難しい。コロナ禍で接触を避けるのが直接的な理由だったとはいえ、そんな中でサービスを止める機会が得られたのは、いいタイミングだった。

コロナ禍でサービス利用が大きく減ってしまい、あの時は非常に焦っていたのは事実。しかし、今にして思えば、ecbo cloak のサービスを磨くために、もっとリーダーシップを発揮しなければなかったと思っている。(工藤氏)

Image credit: Ecbo

そんな ecbo cloak が今週、サービスを再開した。CCO(Chief Creative Officer) ワラガイケン氏肝煎りのデザインでフルリニューアルし、UI/UX を大幅に改善させたという。経営は孤独なものだから、CEO は日頃から孤独には慣れているかもしれないが、クリエイティブの担当者にとっては、ユーザからの反応が得られにくいコロナ禍は、なかなかタフな時間だったに違いない。

ところで、緊急事態宣言の期間が終わったからといえ、世界ではロックダウンが続き海外渡航にも制限がある中では、インバウンド需要が回復するのはまだ先のことになりそうだ。ecbo cloak をサービス再開したからと言って、ユーザは戻ってくるのだろうか? 工藤氏は ecbo cloak 利用の約8割は国内ユーザで、旅行の荷物以外に用途が広がっていることを理由に自信を覗かせた。

サービスを昨年停止する以前から、例えば、趣味で音楽をやっている人が職場には持っていけない大型の楽器を ecbo cloak で預けておき、仕事帰りに楽器をピックアップして演奏の練習に向かうケース、フードデリバリのギグワーカーが大きな搬送バッグを配達エリア内で ecbo cloak に預けておき、郊外にある住まいから身体一つで「出勤する」といった利用が見られたという(配達に使う自転車はバイクシェアリングに頼るのだろう。郊外よりも都心の方がフードデリバリの需要が高く、ギグワーカーがより多くの収入が得られるメリットもある)。

その他にも、いろいろサービスを考えられる。ecbo cloak では荷物預かり時、預かり拠点の店舗で確認のために荷物の写真をスマホで撮ってアップロードしてもらっている。荷物からは、人の属性や傾向などもわかるので、時間・地域毎の人流を見るマーケティングデータとして活用できる可能性もある。

まだいろいろ可能性を考え始めた段階なので新サービスを発表できる段階にはないが、ecbo cloak で構築した荷物預かりのネットワークやプラットフォームをもとに、いろんなサービスを開発していきたいと思う。(工藤氏)

今年以降、おそらく急速に発展を遂げるであろうバーティカルの一つが OMO(Offline merges with Online)だ。オンラインの部分はデジタルで完結するものの、オフラインは全国にユーザとのタッチポイントを開設する必要があり、初期リソースを持たないスタートアップにとっては骨の折れる作業だ。荷物預かりから始まった ecbo だが、コロナ禍における日常の不便さを逆手に取り、さらなる成長を見せてくれることに期待したい。

※ 本稿は Clubhouse での取材内容をご本人に同意いただいて記事化しています。