コロナ禍で風が吹いた「高級アパレル2次流通」の現場/GB Tech Trend

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ユニコーンへと成長したVestiaire Collective。Image Credit: Vestiaire Collective

本稿は独立系ベンチャーキャピタル、グローバル・ブレインが運営するサイト「GB Universe」掲載された記事からの転載

グローバルテックニュースでは、毎週、世界で話題になったテック・スタートアップへの投資事例を紹介します。

今週の注目テックトレンド

新しいユニコーン誕生のニュースが飛び込んできました。中古ブランドアパレル商品を扱うマーケットプレイス「 Vestiaire Collective 」が評価額10億ドルを超え、 2億1,600万ドルの調達 に成功しています。同社は高級アパレル用品を売買できるプラットフォームを運営。掲載商品のブランド認証確認から決済・配送までを一貫して提供しています。

パンデミックの影響で、店舗に洋服を買いに行く需要が減りました。一方、オンラインショッピングの機会が急増しており、このあおりを受けて今回の大型調達に漕ぎ着けた形です。取引量は2019年に比べて2020年には2倍になっており、毎週14万件の新規商品が掲載されていたといいます。

こちらの記事によると 、2020年春夏コレクションの余剰在庫は世界で1,400億~1,600億ユーロ(ヨーロッパだけで450億~600億ユーロ)と推定されており、これはこの業界の標準レベルの2倍以上に相当するそうです。昨年から今年にかけて、高級アパレル企業はかなり厳しい在庫過剰の逆風を受けていると推測されており、Vestiaire Collectiveのようなマーケットプレイスに商品が流れ着いていると考えられます。

さて、Vestiaire CollectiveはP2Pマーケットプレイスとして機能していますが、ここでブランドが直接販売することはありません。顧客が安売りの在庫商品を手に入れてしまうと来店数の増加に繋がるかもしれませんが、実態としてはお金を落とさない層を獲得してしまうからです。そのため、オフプライス商品を売るとしても、正規の販売店とは別ルートで、しっかりとブランド性が担保された販売チャネルを模索しているのが一般的な構造です。

一方、こういった別販売チャネルを確保しようとすると、在庫商品の再収集から整理、運用までコストがかかります。そこでVestiaire Collectiveとは別軸で成長を続けているのが「 Otrium 」です。

Otrium は、ファッションブランドがシーズンの終わった在庫商品を販売できるECマーケットプレイスを展開しています。マーケットプレイスに参加するブランドは、より正確な価格設定を可能にするダイナミックプライシングなどのツールを利用することができ、過去のシーズンの在庫をより早く販売するSaaS機能が揃っています。

同社の価格決定は、スタイル、入手可能なユニット数やサイズ、Otrium の幅広いコミュニティからの関心などの変数に基づいて設定されるとのこと。アウトレット商品を管理し、詳細なアナリティクスを取得、ダイナミックな価格設定エンジンを駆使して収益を最大化できるのがブランド側にとって最大のメリットになります。パンデミックが始まって以来、Otriumに対するブランドからの関心が倍増しており、同社のプレスリリースによると、 この1カ月間に収益が40%急増したとのことです

エンドユーザーのニーズに応えるのか、ブランド側の課題解決に取り組むのか、どちらの分野にも追い風が吹いています。中古アパレル商品に関するオンラインショッピング市場の加速感を1つ取っても、違った見方ができるため、今回紹介したVestiaire CollectiveとOtriumの両社を理解しておくと、日本市場でもビジネス展開が望めるかもしれません。

→今週(3月1日〜3月7日)の主要ニュースへつづく

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